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ニセモノの勇者がホンモノの勇者になる話  作者: 平 来栖
第3章 ステキなコート
26/118

その10

~~~~~~


 ギアックの清掃活動が始まってからすでに一時間、



 ――――戦いはまだ続いている。




「ホワチャァーーー!!!」



 黄色い民族衣装を身にまとった男が奇声を発しながら、三節棍を振り回し襲い掛かってくる。男はかなりの手練れのようで、三節棍が生み出すデルタ地帯には付け入る隙もなく、腕の振りも早すぎてほぼ残像と化していた。


 あの三節昆が生み出す旋風にひとたび飲み込まれたら、常人ならばボロ雑巾のようにズタボロにされてしまうだろう。


「足元がお留守ですよっ!!」


 しかしギアックは慌てることなく男の目の前でストンと体を落とすと、無防備となっていた脛目がけて足払いを見舞う。


「グッ!!」


 そしてバランスを崩しかけた男の股間目がけて金的を加える。




 Ω\ζ°)チーン




「ホグワァァァァァァァァァァツッッッ!!!!!!!!!」




 謎の奇声を発しながら悶絶する男を床に横たえると、ギアックは何度もグーパーして感触を確かめる。




「うん、何とか力加減が分かってきた。このコート、どうやらリミッターを外す効果もあるみたいだ」


 セシリアのダテンシ撲滅という強い意志のおかげか、このコートは人間の限界を超えた力が発揮できる副作用が備わっているようだった。


 たしかに本気を出したダテンシは、ふつうの人間では太刀打ちは不可能といえる。




 巨大な体躯、

 岩をも砕く膂力、

 物理法則を無視した奇跡とも思える現象を起こす能力。



 それらをすべて兼ね備えた人外の化け物、それがダテンシの本来の姿であるのだから。



 だからダテンシと本気でやり合おうとするなら、こちらも人間をやめなければ到底かなう訳がない。このコートの作用は人の体には全く優しくないが、目的達成のためには実に理にかなっているといえる。



 だけれどもギアックは、このコートの隠された能力がまったくの宝の持ち腐れである事を知っていた。




 ―――なぜなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「…………ん? あれ???」



 そこでギアックは気づく。



 今しがた完全に気を抜いていたというのに、まったく襲われなかったということに。



 男たちの方へ顔を向けると、誰もが後ずさりしながら通路の入口付近まで後退していくのが見えた。その様子から誰もが仮面の男の噂以上の強さを前にして圧倒されているのが見て取れた。




「ふぅ、ようやく終わったか。これで帰れるぞ」



 モニタ越しでも暴漢たちの恐怖心ははっきりと伝わっていることだろう。このような状態では性能テストどころの話ではないということは、さすがのお嬢さま(世間知らず)にも理解できるはずだった。



「いやぁーーセシリア様残念っすケド、今日はここらへんでお開きってことで」



 そう判断して通信石の音量を上げてセシリアに報告しようとした矢先、男たちから突如歓声が上がった。




「キターーーーーッ!!!!」


「アニキのお出ましだぜぇぇぇぇ!!!」


「これでテメェもオシマイだぁぁぁあああああ!!!!」



 いつの間にか倒れていた男たちも立ち上がり、嬌声の輪に加わっていた。



「オレたちの仇を討ってくれぇぇぇアニキィィィィィィ!!!!」


「ホワァァァァホワァァァァホッシャァァァァァァンンン!!!!!!」





「なんだ……? アニキ……?」



 いぶかしむギアックをよそに男たちは通路の両側に一列に整列し、出迎えの態勢を整える。


 そして、その花道を、素肌にレザージャケットを羽織った男がゆったりとした足取りで進んでくる。





「おぅおぅ、テメェが仮面の男か」



 冷たいドスの聞いた声。


 はだけた胸元に彫られた龍の刺青がこちらをにらみつけている。




 その手には一振りの刀が―――




「…………どうやら、まだお開きにはならないみたいですね」


 アニキと呼ばれた男の鋭い殺気を感じ取ったギアックは、自然とその場で身構えていた。

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