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ニセモノの勇者がホンモノの勇者になる話  作者: 平 来栖
第3章 ステキなコート
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その5

『聞こえるか』

「はい、感度良好です。バッチリ聞こえますよ」


 仮面の男―――ギアック=レムナントは応答しながら顔の前で親指を立ててみせる。

 

 こうすることで仮面の前に設置されている感昌石レンズを通し、遠く離れた団長室にいるセシリアにも映像が伝わっている、はずであった。


(これで見えてんのかな? 確認しようがないからいまいちよく分からない……)


『よし、ならお前が今立っている建物から三軒隣の倉庫が今日のターゲットのアジトだ。遠慮なく突っ込んで壊滅させてこい』


 仮面の中にひびき渡るえげつない指令。

 その指令を下した当の司令官は、今自室の椅子にふんぞり返りながらリラックスした様子でこの様子を鑑賞しているというのに……


(もしかしたらお茶菓子でも頬張りながら見ているのかもしれない―――

 たぶん、おそらく、いや…………間違いない!)



 そう考えるとギアックはなんだかやるせない気持ちになってきた。



「あの~~~なんかそれもう趣旨違ってませんか? 

 このコートの性能を確かめるのが本来の目的なんですよね?」


 今の状況でできる唯一の抵抗、口答えを試みるギアック


『もちろんそれが第一目的だ。私の悲願成就のためにはまずお前にその≪暗器コート≫の真価を発揮できるようになってもらわなければならない。ただその過程で街にはびこるゴミも掃除してくれと言っているだけだ』



 残念ながらとりつく島もなかった。



「ゴミ掃除って……簡単に言いますけど、昨日からけっこう抵抗も激しくなってきて、いよいよ命がけの気配が漂ってきているのですが? 少しは掃除する人の身にもなってくださったりはしていただけないのでしょうかっ!?」


 ならばとばかりに今度は情に訴えかけてみる。


『フフッ残念だが生まれてこの方自分で掃除などしたことないからな。清掃人の気持ちなど分かりようがない。まぁせいぜいそのコートを傷つけないよう気を付けるがいい。お前の安月給では一生かかっても償えん価値のものだ』



(か、金持ちって……こ、これだから……)



 逆に脅しつけられる結果となってしまった。



『それに、そう言いながらもお前今すぐゴミ掃除したいって顔してるぞ』


「どんな顔だよっ!? あ、い、いや、そ、それにそもそも僕の顔はセシリア様のモニタからでは見えないのでは……?」


『フッ、気付いたか』



 完全にセシリアにもて遊ばれている。

 これ以上の抵抗は無駄だと悟り、ギアックはグッと言葉を飲み込む。



 仮面の内部はディスプレイ状となっており、前面と後頭部に設置されている感晶石カメラからの映像が投影され、夜だというのに昼間のように明るくクリアな世界が広がっていた。


 原理は全くの不明だが、世界のいたるところに点在している遺跡からたまにこのようなロストテクノロジーの塊が発掘されることがある。



 この特殊兜もその類だが、聞いてビックリ、なんとそのお値段1億ギルダ!!

 (ギアックの年収×50年)



 その値段を聞いていたせいか、羽のように軽い材質で出来ているはずのこの仮面を、

 ギアックには常に鉛のように重く感じていた。




 だが、そんなものは序の口にしか過ぎない。





 さらにもっとヤバいのが、今、ギアックの身を包んでいるこの黒いコートである。



 光加減でところどころ紫色に変色するこの≪暗器コート≫なるシロモノ、

 なんとあの伝説の金属≪ロスティス≫で作られているというのだ。


 人の意思を伝えたり、成長したり、と、かなり眉唾な伝承が残っている幻の金属なのだが、とにかくヤバいのがその取引価格である。








 現在のレートでは純金の1,000倍の価格となっている。










 



 大事なことだからもう一度言おう。

 1,000倍である。




(ロスティス100g=ギアック5人分の生涯賃金挿絵(By みてみん)





 ギアックの体を伝う大量の汗は決して暑さだけのせいでは無かった。


 なぜこんなトンデモナイコートが存在しているのか? 


 その出会いを思い返す度に、ギアックは謎の(ストレス性)偏頭痛に襲われるのであった……

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