その7
「くぅっ」
側面に一瞬かすっただけだというのにエウリークの突きは兜全体を大きく揺らしていた。
まともに喰らえばおそらく脳震盪は免れなかっただろう。
「捉えたぞっ!! 終わりだっ!!」
勢いづいたエウリークがトドメとばかりに今度は喉元に突きを放ってくる。
(しょうがない)
ギアックはだらりと下げていた右腕に力をこめ、今回の絢爛試合を通して始めてまともに剣を振るう。
カキィィィンン
「な、何っ!!?」
難なくエウリークの剣をはじき返し、衝撃で後ろに2歩、3歩後ずさったエウリークからさらに距離をとって体勢を立て直す。
そして周囲を見回す。
「なるほど。そういう事か」
先ほど視界を覆い尽くした白光、その正体はすぐに分かった。
反射光だ。
今も会場の様々な箇所から自分目がけて目のくらむような眩光が射しいれられている。
どうやらこの絢爛試合、ただのお遊戯会ではなかったようだ。
勝つためならば手段を選ばなくてもいい、そんな泥臭さを含んでいたのだ。
(なら、遠慮することはない)
ギアックは決意する。
クラインアントの要求を満たし、なおかつ今感じている堪えがたい不愉快さを解消させる、この2つを両立させるにはおそらくもうこれしか方法がない。
そして残念なことにそれを忌避する気持ちはほとんど湧いてこなかった。
むしろ清々しい気分。
ギアックはエウリークを殺すことに決めた。