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ニセモノの勇者がホンモノの勇者になる話  作者: 平 来栖
第9章 ステキな・・・
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その21

 空から襲いくる密集した刃の雨。


 今までの攻撃が隙間を狙う点の攻撃だとしたらこれは全身を狙う面の攻撃、逃げ場などどこにもない。



「届け!」



 そしてボッシュの一撃によって装甲の一部は欠損している。たとえ装甲がスライドしたとしてもそのカバーした箇所が今度は穴になる。



「届けやっ!」

 


 2人の執念が作り出したこの見えざる籠に翼竜は完全に囚われていた。




「「とどけぇぇぇぇ!!!」」




 さらに2人の叫びがロスティスと共鳴し未知なる力が加わる。そしてーーー










 カンカンカンカン




 空から飛来した刃は次々と弾かれていった。



「「なっ!?」」



 いっそ小気味いいほどのその反響音に2人は驚愕する。見るとボッシュの渾身の一撃によって生じた装甲の裂け目はすでに埋まっていた。


 この短時間で回復が間に合う道理はない。装甲のスライドが起きたのだ、そう考えるほかなかった。


 だがそんな痕跡は装甲表面のどこにも見当たらない。


 どんなに目を凝らしても代わりに穴となっている箇所は見つけられなかった。


 そこで見えない箇所、足裏かそれとも内部に予備の装甲が格納されてでもいたかーーーそれが動いたのだとN2は判断する。


 どちらにしろ戦況は覆らない。2人は完全に敗北したのだ。




 ここまでやるのか、ここまでなのかーーー



「!!?」



 その時、さらに追い討ちをかけるように背後から新たなプレッシャーが迫ってきた。


 あまりにも唐突な伏兵の出現にN2は微動だに出来ない。


 そして瞬時に距離をつめてきたそのプレッシャーになすすべもなく飲み込まれるーーーそう覚悟した瞬間、圧はN2たちを通り越し翼竜へと向かっていった。



「えっ」





「はぁぁぁあああああああ!!!」




 そのプレッシャーの主、エルシーは裂帛の気合と共に手にした鉄塊を振り下ろす。




「おっ!!!らああぁぁぁぁぁぁあ!!!」



 衝撃がショックウェーブを生みその衝撃波に乗って辺り一面に礫が飛び散る。


 それは弾け飛ぶ翼竜の装甲と砕け散った鉄塊の残骸だった。コートをまとったエルシーのスイングに彼女のシンボルマークともいえる鉄塊は耐えきれなかったようだ。


 あまりの超展開にボッシュはあっけにとられ、N2も棒立ちになったまま破片を仮面で受けることしか出来なかった。



『ーーーもし本当にこのコートで回復したとしたら……わたしはダテンシよりも先にお前を狙うーーー』




「ウソだったんだーー」




 その時N2の胸に去来した思いは戦意を根こそぎ奪い尽くすほど強力であった。だから彼は拳を握りしめる。感情が表に溢れてしまわぬように。



「わたしはもう限界! あとはアンタがなんとかしなさいっっ!!」



 中空に投げ出されたエルシーはそう叫ぶや受け身も取らずに落下する。


 駆け寄って抱き止めたい、その衝動を抑えてN2は己が責務に焦点を当てる。


 エルシーの渾身の一撃によって生じた回復もスライドも間に合わない超巨大クレバス。


 しがらみをいったん捨てて彼女が作り出してくれたこの最後のチャンス、ムダにすることなどぜったいにできない。



 N2は跳ぶ。



「礼は言わない! 結果で応える!!」


「当たり前だ! ヘマしたら許さないわよ!」


 最愛の人の叱咤を受けて。


 そしてN2は上昇しつつテンタクルエッジを構え、最高点に到達するや即座に射出する。


 もう外すことはない。よけいなフェイントもいらない。エルシーの一撃によって頭部全体の装甲はほとんど消失していた。


 大気に漂う粉塵もめくらましの役目を果たしてくれている。



「今度こそいけや!」



 ボッシュの想いが背を押し最高速を突破した刃がついに翼竜の表皮へと突き刺さる。


 確かな手応え。N2はそこから翼竜と、翼竜に囚われている少年ミスト=シルエットとの最後の対話に臨む。









後ほど挿絵を追加する予定です。

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