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シリーズ日常会話。

なんてことない日常会話。7  文目も分かず編

作者: かすみづき

「やはり猫だろう。すらりとしたボディと同じく柔軟な思考でもって気ままに振る舞うその在り方こそ至高。そこに居るだけでこちらは癒される」

「いやいや、やっぱイヌだろ。飼い主が帰宅したらシッポぶんぶか振って出迎えてくれんだぜ?飼い主がそこにいるだけで嬉しい嬉しいって存在全肯定してくれるなんてカワイイじゃん」

「しかし犬は毎日散歩に連れていかねばならんというだろう。その点猫は良いぞ、毎日飼い主が連れ出す必要などない。四六時中遊んでやる必要もなければ、犬のように無駄吠えもせんから近所迷惑にもならん」

「いやいや、毎日散歩に行くってコトは、飼い主の健康にも良いから。同じくイヌの散歩してるご近所さんともフレンドリーに知り合いになれて円滑なご近所付き合いに必須だから。あとムダ吠えは飼い主の責任であって、イヌはなんにも悪くない!悪いのは全部飼い主!すべてのイヌは無罪!」

「犬が悪いとは一言も言ってないだろう」

「おっ、イヌが良いって認めちゃう?認めちゃうカンジ?」

「犬に非は無いと言っただけで何故そうなる。犬が悪いとは言わん、猫が素晴らしすぎるだけだ」

 白熱する終わることなき論争の場に、唐突に第三者の声が上がる。

「あのさあ」

 声と共に発言の許可を求めるかのごとく緩く挙手をした三人目を、論争していた二人が同時に見る。

「いぬ派でもねこ派でもどっちでもいいから、さっさと帰ろうよ」

 もう夜だから、と呆れた様子で告げた三人目の言葉に窓の外を見ると、確かにオレンジ色だった空はどこにもなく、目を凝らせば建物の輪郭がほんのり見える程度の暗闇がそこにはあった。

「じゃあ最後に多数決、多数決して終わりにしよう!イヌ派の人は手ー上げて、はーい!」

 そう言って勢いよく手を上げたのは、犬の良さを熱弁していた者だけだった。

「やはり猫の素晴らしさは世界を救う。では分かりきっているが、せっかくだからはっきりさせよう。猫派の者、挙手を」

 そう語られた言葉の後に手を上げたのは、さきほどと同じく猫を愛してやまない発言を繰り返している者のみだった。

「ちょっ、どっちにも上げないとかナシでしょ」

「無回答は無効だ。はっきり意見を述べてくれ」

 犬派と猫派の両者から詰め寄られた三人目は「えー」とひどく面倒くさそうに口を開いた。

「じゃあ言うけど」

 うんうん、と三人目が己に賛同してくれるものと信じて疑わない二人に促され、三人目は己の意見を口にした。

「とり」

「「は?」」

「いやだから。あたし、とり派」

「ちょいちょいちょい。質問聞いてた?イヌ対ネコ、ドッグオアキャット。二択なの、オーケー?」

「そもそも鳥なんて鳥籠に入れておくしかなくて詰まらんだろう。しかも鳴かれたら近所迷惑になりやすい」

「はあ?」

 三人目の、これまで聞いたことのないドスの聞いた声に、犬派と猫派の二人はぴたりと口を閉じた。

「とりが何だって?うちのかわいいかわいいモモちゃんとサクラくんがつまらんだって?近所迷惑?そりゃクルマサカオウムはもともとの声量が大きいこだけどね、環境としつけをきちんとしとけば問題ないんだよ。二十四時間突撃してくるいぬや飼い主が忙しいときに限ってかまって病を発症するねこよりよっぽど賢いしかわいいんだよ!」

「猫を馬鹿にするのは許さん」

「オレだってイヌバカにされたらキレちゃうよ」

「先にとりをばかにしたのはそっちでしょうが。いいだろう、このけんか買った」

 第三者の介入により終止符が打たれるかに見えた犬派対猫派の対決は、鳥派という第三勢力の存在が明らかにされたことにより更なる戦争へと発展した。その後、見回りの教師にさっさと帰れと学校から放り出されることで強制的に打ち切られた三つ巴論争は、勝敗不明の灰色決着となった。




 ***




「これは?」


 いつも通り学校帰りに訪ねてきた年の離れた友人を客間へと通し、ティータイムの準備をして客間へ戻ると、数枚の原稿用紙を差し出された。とりあえず読んでくれと言われ、目を通したエルネストの第一声がそれだった。


「はやっ!?」


 そして原稿用紙を差し出して来た、向かいに座る少年のそれに対する返答がこれだ。近所の高校に通っているという少年の名前は新島にいじまゆかりというが、歴とした男子高校生である。一年生だという事を差し引いても小柄な体格と成長期前の幼い顔立ちのせいか、性別を間違えられる事が日常茶飯事らしい。エルネストからすれば、幼かろうと男女の違いは明らかだと思うのだが、以前縁自身にそう告げたらしみじみと感謝されてしまったので、よほど苦労しているのだろうと思わず同情してしまったほどだった。


「え、読んだの? 今の読んでたの? 原稿用紙の枚数数えてたんじゃなくて?」


「数えるだけなら全部めくらなくてもできますよ」


 こうやって、と言いつつ手元の五枚の原稿用紙を少しずつずらしてみせる。


「そうだけども。伯爵って、本もそんなに読むの早いの?」


 伯爵、とは縁がエルネストにつけた愛称だ。なぜ伯爵なのか、縁自身に訊いても「伯爵っぽいから」というよく分からない答えしか返ってこないので理由は不明だ。名前負けしているから止めてくれと何度か訴えはしたのだが、なぜか縁は伯爵という呼び名をすっかり気に入ってしまったらしく、聞き入れてもらえず今に至る。最近では、エルネストもすっかり伯爵と呼ばれる事に慣れてしまったので、縁の粘り勝ちと言えるだろう。


「仕事柄、本の内容を把握しない事には始まりませんから」


 そう答えながら、ずらして持っていた用紙をトン、と机に落として端を揃えて縁へと差し出す。


「あ、そっか。伯爵は翻訳が仕事だもんね。そりゃあ何日もかけてゆっくり読んでるわけにはいかないか」


 その用紙を受け取って二つに折り、無造作に鞄へと突っ込む縁に「そういう事です」と返しながら、少し長めに抽出時間を取っていた紅茶を、二つのカップにゆっくり丁寧に注いでいく。

 エルネストはその日その日で気ままに様々なお茶を淹れているが、縁から苦情を言われた事はない。日本人特有の遠慮かと思った事もあるが、なかなかに癖の強い香りと味わいを持った工芸茶も楽しんでいる様子だったので、本当に文句は無いらしいと判断している。

 カップに少なめに注いだ紅茶へと、今度はミルクを静かに投入していく。紅茶とミルクが渦を巻いて混ざり合ったのを確認して、カップのひとつを縁へと差し出した。


「今日は少し変わったお茶にしようと思っていたんですけれど」


「けれどって事は、止めたんだ。何で?」


 エルネストが差し出したカップを小さく会釈をしつつ受け取って、かすかに首を傾けて訊ねてくる。以前、友人にこれをやって可愛いとけなされた、と立腹していたが、確かに可愛らしいとエルネストも思う。幼い子供が大きな頭に振り回されているようで、可愛らしい。言えば間違いなく不機嫌になるだろうから、告げるわけにはいかないが。


「予想以上に良い焼き上がりになったので、こちらに合うものを優先しました」


 代わりに縁の問いに素直に答えながら、二人の間にあるローテーブルに置かれた山盛りのキツネ色を指し示す。


「クッキーだね」


「はい、バタークッキーです。こちらにはミルクティーが一番合うと思いまして」


「あー、分かる。クッキーとかマドレーヌとかは、紅茶の方が合う」


「基本的に焼き菓子には紅茶、チョコレートやクリームを使った菓子にはコーヒーが合うかと。もちろん例外もありますが」


「分かる」


 うんうん、と頷きつつ丸いクッキーを一枚手に取りかじった縁が「あ、おいしい」とぽろりとこぼすのを聞いて、エルネストはまろやかに笑った。


「ありがとうございます。明日出しても良かったんですが、やはり焼きたての良さは捨てがたいですから」


「二日目のカレーはおいしいけど初日だっておいしい、みたいなもん?」


「そうかも知れませんね」


 カレーと違いクッキーは温めたりはしないが、まあ似たようなものだろうと、エルネストは縁の意見に同意した。ここに常識的な第三者が居れば突っ込みを入れられそうな会話だが、生憎ここには二人しか居ない。


「で、さきほどの文章は何だったんです? 作文ですか?」


 ずれた見解はそのまま流され、エルネストが先ほどの原稿用紙に書かれた内容について改めて訊ねると、カップを持ち上げた縁が「そんな感じ」と答えた。


「現代文の授業で書いたから、作文ではあるかな」


 そしてミルクティーを一口飲み、二枚目のクッキーを手に取りながら訊いてきた。


「伯爵は、三題噺さんだいばなしって知ってる?」


「観客からその場でお題を三つ募って、即興で全部盛り込んだ話を語るっていうものですよね。落語の形式のひとつだったと思いますが」


「らしいね。それを先週の現代文でやったんだよ」


 高校の授業で落語を演るとは、一体どうやったのか。観客と噺家にでも別れたのだろうか。


「ユカリ君が落語家役だったって事ですか?」


「いや、クラスの全員がそれぞれ三つのお題を考えて、それを集めてくじ引きしたから、全員が書いてる」


「お披露目ではなく、その前段階の話を考える部分に焦点を絞ったわけですか」


 エルネストも自身の焼いたバタークッキーを手に取り、口へと運ぶ。焼き上がってから少し時間が経っているのでほんのり熱が残る程度だが、当日の味はやはり違う。

 クッキーの焼き上がりに満足しつつ、縁の語ったルールで気になった部分を訊ねる。


「そのお題の集め方だと、同じお題が複数入っても分からない気がするんですけど」


「ああ、うん」


 そう言われた縁は何か思い出したらしく、ふふっと愉快そうに笑って話を続けた。


「席順で三枚ずつお題の紙を箱から引いてったんだけどね。できましたっていきなり挙手したやつがいて。まだ全員引き終わってなかったから皆ちょっと驚いたんだけど、そいつお構いなしに『猫の集会場では猫が寝ころんでいました、はい終わりっ』って叫んでさ」


 なかなかにフリーダムな級友だ。作文を口頭で提出してどうする、さすがに短すぎるだろう、そもそもまだ全員が引き終わっていないのに発表とは気が早すぎやしないか、などとエルネストの頭にはいくつか疑問が沸いたものの、このエピソードがエルネストの問いの答えだろうという事を踏まえれば、注目すべき点は明白だ。


「まさか『ネコ』が三枚?」


「当たり」


 縁は面白そうにそう頷いた。


「揃っちゃったらしいんだよね。もちろんオッケーもらえなかったんだけど。せめて原稿用紙一枚以上の長さにしなさいって却下されてた」


 お題を再度引き直す機会は与えられなかったらしい。引き直しとなれば全員が再くじ引きになりかねないので、時間のロスが大きすぎたのだろうか。


「『ネコ』を三回登場させるわけですか。通常の三題噺より難しいかも知れませんね」


「結局さっさと書き終わってたけどね。さすがに全文は覚えてないけど、猫の集まるゴミ捨て場を取材記事っぽくまとめてたよ」


「器用な方ですね」


「さて、ここで問題です」


「どうぞ」


 ぴっと人差し指を立てた縁が、いたずらを思いついた子供のような笑みで口を開いた。


「僕が引いたお題は、何だったでしょーか?」


「なるほど」


 さきほど縁に差し出されて、目を通した文章を思い返す。明らかに目立っている単語が三つあった。素直に考えればそれがお題なのだろうが。


「わざわざ問題にするという事は『イヌ』『ネコ』『トリ』というわけではないんですね?」


 確認の為にエルネストがそう訊ねると、縁はいたずらっ子の笑みをより深めてこっくりと頷いた。

 それを確認して、エルネストは脳内でさきほどの文章を本格的に読み返す。視界の端に、楽しげにこちらの様子を窺いつつクッキーに手を伸ばす縁が映っている。

 縁の話しぶりからすると、三題噺の説明からお題の配布や執筆まで、すべて一コマの授業で行われたものだろう。あまり細かくルール設定をしては、時間切れとなり完成しない者が多くなりそうだ。ならばお題も同様にルール無用だったと考えるべきだが、そうなると思春期の少年少女が思い付く文字列なら何でもあり得る事になる。

 そこまで考えたエルネストが縁へと視線をやると、気付いた縁が「何?」とでも言うように、小さく首を傾けた。


「ヒントをください。範囲が広すぎます」


 素直にそう言うと、にんまりと笑った縁が「それじゃあねえ」と口を開く。やたら楽しげなのは、絶対に分からないと思っているからか、その逆か。


「僕、これ書くのにめっちゃ苦労したんだ」


「はあ」


「たぶん伯爵も、おんなじお題を出されたら困ると思うよ」


「私も、ですか?」


「うん。伯爵も知ってる筈だから」


「つまり、ユカリ君の引いたお題には何らかのルールが発生していたという事ですか?」


「ルールっていうか、そのお題を見たら絶対連想するだろって文章があって。偶然ってこわいね」


 こわい、と言いつつ大変楽しげな笑みを浮かべた縁は、バタークッキーの山を着々と崩していっている。


「さっき言った『猫の集会場では猫が寝ころんでいました』って文章考えたやつは、自分で言った文章が頭に刷り込まれちゃって、もう他に新しい話が思いつかなかったから、その文をむりやり引き伸ばして書いたんだって。頭に刷り込まれたって点では僕も同じ状況だったんだけど、その連想した文章を広げるのもムリそうだったから、どんぴしゃな文章が頭にある状態で他の文考えなきゃならなくて、めっちゃ困った」


「なるほど」


 縁の級友は自分で思い付いた文章だが、エルネストも同様に連想するという事は、縁が連想した文章は一般的に知られているもの。そして広げるのが難しいという事から、その一文だけでほぼ完璧に閉じている可能性が高い。


「ユカリ君は、何らかの諺か慣用句を連想したわけですね。つまり、ユカリ君の書いた文章に出てくる単語が折り込まれた諺か慣用句を見つければ、それが引いたお題という事になる」


「さすが!」


 伯爵の言葉を大袈裟に手を叩いて肯定した縁は、とても楽しそうだ。


「それでも広すぎます。もう少し絞るヒントが欲しいですね」


「ヒントって、例えば?」


「そうですねぇ。そのお題ですけど、名詞ですか?」


「うん?」


「『やはり』や『しかし』などの接続詞や、感嘆符や疑問符だったりはしませんよねという事です」


 その辺りまで含めて考えなければならないとなったら、正直言ってお手上げだ。


「ああ、うん。それはない。お題三つとも、その単語だけでちゃんと意味のある言葉だよ」


「そうですか、それは良かった」


 これで、随分と解が導き出し易くなる。


「あ、また読めないと分かんないよね。鞄にしまっちゃった」


「いえ、問題ありません。まだ覚えてます」


 ふと気付いた様子で自身の鞄に手をかけた縁へそう告げる。


「え、ホントに?」


「はい。お疑いなら、さっきのユカリ君の作文を暗誦しましょうか?」


「いや、お疑ってはいないけど。速読かと思ったけど、瞬間記憶なの?」


 まじまじと見てくるので信じられていないのかと思えば、少しズレたところを気にしていたらしい。


「どうでしょう。瞬間記憶は映像を切り取って記憶していると聞いた事があります。私はさきほど映像ではなく文章として目を通していますから、違うんじゃないでしょうか」


「そっか。じゃあ現物を読み返さない代わりに、大ヒントをあげよう」


 問題を出した時のように、ぴっと人差し指を立てて縁が言う。


「最初に伯爵がこの三つじゃないんですねって確認してきた単語があったでしょ?」


「ありますね」


「その三つの中に、一つだけ正解が混じってます」


「おや、本当に大ヒントですね」


「うん、だからこれがラストヒントです」


「分かりました」


 少し時間をくださいと言うと快諾されたので、じっくりと考えてみる。

 エルネストが最初に確認した単語は『イヌ』『ネコ』『トリ』の三つだ。諺や慣用句などの成句で動物が出てくる場合、その動物が主軸となっている事が多い。つまり、三匹の動物のいずれかが主体となった成句の中から、作文内の単語を二つ織り込んでいる成句を検索すれば良いという、ある種の逆走ルートが示されている状態だ。しかしそれでも、手当たり次第に探せる程度の量ではない。

 縁はその成句をエルネストも知っている筈だ、と言った。単に一般常識レベルで知られているだけでは、エルネストが知っている根拠にはならない。国が違えば常識も違ってくる。縁とエルネストでは、文字通り育った環境が違いすぎる。ならばもっと直接的に、過去に縁との会話でそれが出てきたか、或いはこの家のどこかで見かけたか。


「ユカリ君」


「ん?」


「最後に一つ確認させてください」


「どうぞー」


「獄門島ですね?」


「そこ!? いや確かにそうだけれども」


 確認の内容が予想外だったらしい縁が、驚きつつも肯定を返してきた事で、エルネストの中で予想が確信に変わった。


「分かりました」


「まあ、そこに辿り着いてるならそうだよね」


 一息入れようとカップを手に取り口に運ぶと、ミルクティーは少し温くなっていた。


「ていうか、伯爵は一体どういう考え方したの?」


「ユカリ君が言ったんでしょう。私も知っている筈だ、と」


「確かに言ったけど」


「ふと思い出したんです。先週、横溝正史の話をしましたよね」


「あー、それかあ」


 ふと見ると、山盛りだったバタークッキーの半分ほどが消えている。


「ユカリ君、夕飯食べられるんですか?」


「大丈夫、ちゃんとセーブしてるから」


「そうですか」


 そういえば、以前に大判焼きも二つぺろりと平らげていたなとエルネストは思い出した。小柄な体躯に反して大食漢なのかも知れない。それとも成長期の前兆だろうか。


「で、伯爵。答えは?」


 ミルクティーを飲み干した縁にそう問われ、まだ答えを口に出していなかったとエルネストも気付いた。周辺情報の齟齬がなかった為、うっかり忘れていたようだ。


「失礼しました、まだ答えていませんでしたね」


「当たってるとは思うけどね。ここまで来て違ってたらそれはそれで凄いけど」


 中身を飲み干したカップをソーサーへと戻して、エルネストはその成句を口にする。


「『夜』はすべての『猫』が『灰色』に見える、ですね」


「正解」


 エルネストの答えを聞いて、ぱっと笑って縁が応えた。

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