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僕と日常と精霊と  作者: パトリオット
4/4

僕と精霊と出会いと3

「グリーナさん、これは一体どういうことですか!?」

「そんなことは後で説明します! 遼介君は連れの方と一緒に私の後ろに下がってください!」

 そう言い終わるや否や、ロケットが飛び出すような勢いでグリーナは正面にいる敵めがけて飛び込んだ――。

 正面にいる敵はそんなグリーナの突撃をかわし、その隙に隣にいた敵がグリーナめがけて、そのフォルムからは想像もつかないような大きな口を開けて襲いかかった――。。

「踏み込みが甘いです!」

 しかしグリーナはそれを受け流し、こちらもどこから出てきたかわからない短剣のようなものを投げてとりあえず1体、敵を倒した。

 さらにグリーナが何か呪文のようなものを唱えると敵が1体、緑色の光を放ちながら消えていった――。

「なんだあれは……」

 僕はあまりの光景に言葉を失ってしまった……。

 隣では由花もさっきからずっと目を白黒させている。

 そしてグリーナは残りの1体も手持ちの剣を携え、目にも止まらぬスピードで接近し、切り伏せた。

 戦闘が終わり、グリーナが最後の1体が消えるのを見届けると同時に周囲の風景は元のそれにまるで霧が晴れるかのようにゆっくりと戻っていった――。

 

 周囲の風景が完全に元に戻ると同時にグリーナは真っ直ぐな目で僕を見つめてこう言った。

「遼介君、決断の時です。あなたは事情を知りすぎました。そのため昨日の者達に命を狙われています」

 僕はこの時に昨日のことが気のせいでも妄想でもないということをハッキリと認識した。

 さらにグリーナは続けた。

「私と共に魔王を倒しましょう!」

 この時に由花が声をあげた。

「グリーナさんでしたっけ? 私にも事情を説明していただけませんか?」

「あなたは!」

 グリーナはなぜか一瞬ハッとしたような表情を浮かべたが

「そうですね。あなたにも事情を説明しましょう」

由花と自己紹介を交わした後、昨日僕に話してくれたのと同じような説明を由花にもした。

 その上でグリーナは魔王退治の助力を僕と同じように由花にもした。

「これも運命なのかな」

 由花は僕にしか聞こえないような声でこう呟いた後、何かを悟ったような顔をしてグリーナにこう答えた。

「私、魔王と戦います! こんな私でよければ仲間にしてください!」

 これには僕もぶったまげた。

 僕の知っている由花はこういう戦いみたいなことからは最も遠いタイプの人で、しかも自分から戦いたいなんていうとは思ってもいなかったのだ。

 さらにこんな話をすぐに信じてしまう由花が少し怖かった。どれだけ人がいいのだろうか。

 しかしながら、こうなれば僕の解答は1拓しかないだろう。

 昔から本やアニメで観るような勇者には憧れていたが、僕自身、成長するにつれてそんなことはありえないと諦めていた。

 それが今はどうだろう?

 目の前には魔王を倒すような勇者になるチャンスが転がっているのである。このチャンスを生かさない訳にはいかないだろう。

「グリーナさん、僕も共に戦わせてください!」

 するとグリーナはとびきりの笑顔でこう言った。

「由花さん、遼介君、私達はこれから魔王を倒すまで一心同体です。必ずや目的を共に果たしましょう!」

 続けてグリーナが唱えた。

「村木由花、野川遼介の両名は木の精霊グリーナの名の元に精霊の力を分け与えんとする」

 何かが起こるかと思い少し期待したがなにも起こりはしなかった。

「グリーナさん、今のは何ですか?」

「あなた方に私の力の一部を分け与えたのです。このことについしっかりと説明しておきたいのですが、どこかゆっくり話し合える場所はないですか?」

「そしたら、僕の家とかどうですか? 由花もこの後大丈夫?」

「今日は何の用事もないし、大丈夫だよ」

「そしたら、遼介君の家にいきましょう」

 この後、僕の家に向かうことになるのだが、それはもう大変だった。

 なんせ、グリーナがそのあまりの美しさのせいで目立ちすぎるのだ。

 中にはナンパしようと声を掛けてくるような奴もいた。ただし彼女ははそれを全て丁重にお断りしていたが。

「グリーナさんの近くを歩いていると疲れるので離れて歩いてもいいですか?」

「ねぇ! なんでそんなこと言うの!? か弱い女の子を守ってこその男の子でしょ?」

「か弱い女の子は突然出てきたモンスターを一人で帰り討ちにしたりはしません」

「むー!」

 こうして話しているとグリーナもかわいいところがあるなとか思った。

 因みに由花は隣でずっと微笑ましい表情を浮かべている。

 今日の帰り道はずっとこんな調子で、いつもの倍近い時間がかかったが、なんとか僕の家に着いた。

 家の近くで近所のおじさんに

「今日は、べっぴんさんを両手に抱えてお散歩かい?」

とかいわれて、両手に花という言葉をしみじみと感じていた次第である。

 ということはいいとして、グリーナと由花を僕の部屋に通して、今後のことについて話し合いを始めた。


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