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僕と日常と精霊と  作者: パトリオット
2/4

僕と精霊と出会いと1

 とりあえずこのままでは危ないということははっきりとわかった。しかし、目の前の相手を止める方法が思いつかない。そこで、僕はある提案をしてみた。

「ちょっと待ってください! まずはお互いに自己紹介でもしませんか?」

「この後に及んで何をのんきに! 問答無用だ!」

 やっぱりだめかと思った時、もう片方の魔物?が自己紹介を始めた。

「待て待て、そう急がなくてもいいだろう。私は魔王に仕える家臣が一人カオトンだ。お主も名を名乗れ。私は名前を聞いた者しか殺さない。」

「そしたらここで名乗らなければ僕は生き残れますか?」

「無礼者! そんなことしたら俺がお前を殺す!」

 どちらにしろ僕は死ぬしかないらしい。

「僕の名前は野川遼介。しがない高校生です。」

「そうか、そしたら死ぬ前にさっきの話に関していい話を聞かせてやろう。」

「しかし、いいのですか?」

「どうせ殺すのだ。少しくらい構わないだろう。」

 カオトンとかいうのが何か勝手に話出した。このパターンって悪者が長話をしている間に正義の味方が来てくれて助かるパターンか。とか思ったが、現実はそんなに甘くないだろう。

 とりあえず、僕は話を黙って聞くことにした。


「最近、魔王様が復活したのだ。それにより私達も長い眠りから覚めることが出来たのだ。」

 でたでた、よくありそうなやつ――。

 こういうのって悪事の限りを尽くしている間に勇者が出てきて退治されるのだろうが、残念ながら僕の役回りは最初にやられるモブキャラのようだ。

「ちなみに今、魔王様はこの国で世界侵略に向けて準備をしているところだ。」

 僕は少しだけ気になったことがあったのでどうせ死ぬ前だからいいやと聞いて見た。

「ひょっとして最近起きている変な自然現象ってあなた方の仕業ですか?」

「お前、なかなか鋭いな。大方その通りだ。この辺でいいだろう? 今からすぐに楽にしてやる。」

「よっしゃ! ここはカオトン様のお手を煩わせるまでもありません! 俺がやりましょう!」

 どうやら今度こそ命運が尽きたようだ。

「三十六計逃げるに如かず!」

 僕はいい終わらないうちに逃げ出した。自分で言うのもなんだけどそれはもう凄い勢いで。だって自分でも僕がこんなに早く走れるなんて知らなかった。逃げ切ることが出来たら陸上部に入部しよう。

「ずいぶん潔いやつ、その心意気やよしと思っていたのだが、がっかりしたぞ。」

 一瞬で捕まった。やっぱり僕に陸上部は無理だったか。いるかどうかわからないが、神さまに来世ではその辺しっかり取り計らってもらうか。

「てめえ逃げやがって! 今、ここで、すぐ、ぶっ殺してやる!」

 ガオトンの配下の魔物が絶叫と共に明らかにヤバそうな大剣を振り下ろしてきた。僕はここで観念して目をつぶったが、目を開けると外は明るい。ここは天国なのかと思ったが、何かがおかしい。なんと目の前にはまだガオトン達がいるのだ。

 こいつら天国まで追いかけてくるのかよ……。と思っていたら

「木の精霊よ、邪魔をしに来たか。ここは撤退するが、お前がいくら抵抗したところで未来は変わらないということを覚えておくといい。」

 とガオトンが言い残し部下を連れて僕の目の前から突然消えた。

 もう何が何だか普通の人である僕にはよくわからないが今回は正義の味方が助けに来てくれたらしい。

 気づけば僕のうしろに、女神様がこの世に降臨したらこんな感じだろうかと、人間離れした美人のお姉さんが立っていた。

「助けてくれてありがとうございます。僕、疲れたので帰りますね。」

「ちょっと待ってください! 何でそんなにあっさりしているんですか!?」

「大きな声を出さないでください。もう早く寝たいんです。」

 ここでこの綺麗なお姉さんと話すのもいいなと思ったが、なんせさっきまで命の危機にさらされていたもんでもう、すっかり参ってしまった。

「ちょっと待ってください! 私の話を聞いてください!」

「お姉さん、あなたとても美人ですがしつこいとモテませんよ。」

「ガオトンに代わって私があんたを殺してやる!」

 僕の近くにあったはずの木がすぐ横に倒れてきた。再び命の危機が訪れたようだ。

「ごめんなさい! 話を聞くから許してください!」

 僕はかつてない程の勢いで土下座した――。


「そんなに凄い勢いで土下座されたら許すしかないですね。」

「いやいや、わたくしとしたことがグリーナ様程の高貴なお方にとんだ無礼を働いてしまいました。この責めをどう負えばいいか――。」

「もうその話し方をやめてください! 許しますから!」

 グリーナと名乗る木の精霊はやれやれといった具合で僕を見つめた。

「ところで話って何ですか?」

「切り替えの早さはすばらしいですねというのは置いておいて、今、日本各地でおかしな自然現象が起こっているのは知ってますよね?」

「はい。」

「普通の人間であるあなたには理解し難いでしょうが……。」

 ここからはさっきガオトンがいったことと同じようなことだった。

 それに加えてこの世のすべての物質には精霊が宿っていること、それが魔王の出現によって精霊の力が弱まっていること、その流れを受けてグリーナも配下の精霊達と交信できなくなったことをグリーナが話してくれた。

 さらにグリーナはこの世に千といる木の精霊の中で一番偉いらしい。何でも魔王が甦ったと聞き精霊の世界から日本に来たそうで他にもたくさんの精霊が日本に降りて魔王を止めようとしているらしい。

「しかし、グリーナさん魔王が甦るのと精霊の力が弱まることとどう関係があるのですか?」

「私の呼び方はグリーナでいいですよ。これまでも何回か魔王が甦ったことはありました。魔王はあらゆる生命の力を奪いながら活動します。しかし、その度に私達精霊が精霊界からこの世に降り立ち、魔王を倒すことで人知れずこの世の秩序を保っていました。」

「そしたら今回もそうすればいいじゃあないですか。」

「それが、今回の場合、何故かこの世界では私達精霊の力が制限され、魔王を倒すことができないのです。そしてそうこうしているうちにどんどん自然の持つ生命の力が奪われていきました。それにしたがい、

どんどん魔王の部下達が強くなり私達精霊は追い込まれていきました。」

 グリーナはとても哀しげな目をしながら話した。

 こんな時に思うことではないが、そんなグリーナはとても可愛かった。ヤバい今すぐにでも彼女にしたい、そして守ってあげたい。

 そんなことを考えている僕をおいてさらに続けた。

「自然の持つ生命の力がなくなればなくなるほど精霊界は壊れていきます。そしてもし精霊界や精霊が滅べば、自然の秩序の守り手がいなくなり地球の環境は破壊され、

やがて人間も滅び、この世界は魔王の支配するところとなってしまいます。」

 さらに続けた。

「今はまだ魔王の力は限定的でこの国の中にしか及んでいません。しかし、手をこまねいているといずれ世界中に影響が広がり、やがて精霊界も人間界も滅ぶでしょう。」

 ここで突然グリーナの表情が変わり何かを決心したようなものに変わった。

「そこで私から頼みがあります。ここで出会ったのも何かの縁です。私と共に魔王と戦いませんか?」

 さっきのこともあるし、このお姉さんが妄言を吐いているとはとても思えない。そこで、僕は胸を張ってそれに答えた。

「とりあえず、疲れて眠いので帰って寝ます。」

「なんでよー! 一緒に世界を救おうよー!」

 グリーナの叫び声を背に受けながら僕は家路についた。


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