第1章 侵入者(4)
「最初に言っておきたいんだけど」
自らを竜族だと認めたガーデンは、リリンに引き裂かれたローブを器用に身体に巻き付け直し、胸元を隠した。ラランがルルンに目配せをして、着替えを取りに行かせる。
ガーデンは金色の髪をかき上げるしぐさをして、ああそうだ、この男に切られてしまったんだという視線を俺に向けてから、話を続ける。
「私はあなたたちと争う気はないわ。確かに同族の中には、あなたたちの長……魔王シルシュゴールのことを恨んでいる者もまだいる。むしろ大多数がそうなんだけど、私はそんな気はないの。人間並みの力しか出せないのに、強者に歯向かうなんて愚かなことよ。そんなことより、私はビジネスがしたくてここに来たの」
リリンが口を挟まずに大人しくしているから、どうやら言っていることは本当のようだ。しかし、本来なら敵対勢力である俺たちに囲まれているというのに、ガーデンの目は笑っていた。この余裕はなんだ? 奇妙さを感じながらも、竜族特有の鈍感さなのかもしれないと思い直し、ガーデンに「続けろ」と促す。
ガーデンは自分の胸元にある、灼熱色の紋章を指さした。
「心臓を石に変えられてほとんどの力は出せなくなったけど、この封印は完全じゃなかったの。例えば私は、占いで何かを探す力が残った。この城を見つけるのも、簡単だったのよ?」
ルルンが着替えを持ってきた。ほとんど肌を隠せないような真っ赤な水着を得意げにラランに見せるが、ラランは首を振って、もう一度探すようにルルンに言って聞かせる。
しぶしぶ服を探しに行くルルンの背中を見送りながら、「別にあれでもいいのに」とリリンが口をゆがめる。リリンの気が変わって何やら口を挟んでくる前に、聞くことは全部聞いてしまうとしよう。
「この城を見つけたのはいつなんだ」
俺の問いに「3年前」と答えると、ガーデンはため息をついた。
「場所がわかっても、移動だけでこんなに時間がかかるなんて思わなかったわ。人間たちはこんな不便な身体でよく平気でいられるわよね。翼があれば一瞬でここまで来れたのに」
「お前自身の事情などどうでもいい。話を総合すると、やはりお前には物を探す力があるということだな。『太陽の花』はどこにある?」
「占いをすればすぐにわかるわ。でも……」
ガーデンは人差し指をたて、桃色の唇にあてた。
「ここからは情報料をいただくわ。この城にある宝物庫からひとつ、魔法の道具を譲ってちょうだい。そうすれば、あなたたちが探しているものを見つけてあげる」
「おい」
静かにしていたリリンが動いた。左手でガーデンの髪をすばやくわしづかみ、露わになった喉元にナイフを突きつける。
「リリン、やめろ」
しかし興奮したリリンはナイフを納めようとはしなかった。
リリンから突きつけられた鋭利なナイフに、ガーデンが青ざめる。
「ここで死ぬか、占うか。どっちを選ぶ? 取り引きなんて、するわけないでしょ」
リリンのささやきが、ガーデンに決断を迫る。




