表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/30

第4章 魔王の城の衛兵(4)

太陽が頭上を横切り大地に沈もうという頃、魔王はベンチに横たわり、退屈そうにあくびをした。


「もう寝る時間じゃ」


すっかり忠実なメイドといった様子のリリンが、魔王が手の中でもてあそぶグラスを受け取り、葡萄酒を注いで魔王に渡す。

魔王はひと口葡萄酒をあおると、テーブルにグラスを置いた。


「私は夜になったら眠ると決めておるんじゃ。生活のサイクルを変えると体調を崩す。毎日日の出に起き、日が沈んだら眠りにつく。楽しいときも、悲しいときも、この繰り返しが私の心を正常に保ってくれる」


ゆらめく蝋燭(ろうそく)の火がグラスに映る。そして、ようやく話し終えたギルバートの疲れた表情も。


「これで話すことは全部話した。約束だ。仲間たちを助けてくれ」

「急ぐな人間。あまりに長い話じゃったからな、少し整理させよ」


魔王は立ち上がり、ぐっと伸びをする。

そしてベンチに座りなおすと、両方の手を広げて、顔の前で合わせた。


「これは反乱(クーデター)ということじゃな」


魔王がリリンの方に目線を送ると、リリンは無反応を決め込んで押し黙る。魔王はその様子を見て、「なるほど、やはりそうか」と肩をすくめる。


「あのとき、将軍どもは共謀して私に何らかの呪いをかけ、眠りにつかせたんじゃな。どうやら効果は一時的なものだったようじゃが、その間に将軍たちは部下とともに城を抜け出し、世界各地へとバラバラに旅立っていったというわけじゃ」


ギルバートが眉を寄せ、首を横に振る。


「何の話をしているんだ?」

「お前の話から、裏側で起きていたことが透けて見えるということじゃ」


魔王は懐から小さなぬいぐるみを取り出して、テーブルの上に置いた。それは兜をかぶり、青白く輝く剣を持った傭兵の姿をしていた。可愛いギルバートと言ったところか。


「ギルバート、お前はこの近くにある国から依頼を受けたと言ったな」


可愛いギルバートの隣に、赤い豪華なローブを着た男のぬいぐるみを置く。太っちょの口ひげ。胸には『ゴードン』と書かれたバッジをつけている。魔王が話を続ける。


「ゴードンはこの国で各地を取り締まる管理官をしている。国王とも近しく、話ができる関係じゃ。じゃが、話を聞く限り、お前と仕事をするのは初めてだった。そうじゃな?」

「ああ、話くらいはしていたが、仕事は初めてだ。『魔王を倒す計画』を持ちかけられた」

「『太陽の花』計画じゃな。お前は私をつけ狙う一族のひとりじゃから、『渡りに船』じゃし、まず間違いなく仕事を受けると見込まれたんじゃろう。自分の立てた計画で魔物たちの長である私を倒せたならば、ゴードンの評価もグンと上がる。では、ゴードンが本当にこの計画を立てたんじゃろうか?」


ギルバートはすぐに否定した。


「あの人にそんなことはできない。まあ、そういうこと(・・・・・・)にしたいようだったから、話は合わせたがね」

「裏で動いていたのは、将軍の中の誰かじゃ」


魔王がそれを口にした瞬間、大人しくしていたリリンの目線が一瞬だけ魔王に向けられる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ