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第4章 魔王の城の衛兵(3)

「わかった、話す。俺の知っていること全部をな」

「それは楽しみじゃな」


ウェーブがかった紫色の髪をした少女、魔王シルシュゴールが傭兵ギルバートの言葉に目を細める。

ギルバートはひとつ息を吐いてから、「だが、先に仲間を半分だけ助けてくれ。悪いが、これは条件だ。俺たち傭兵は貧乏でね。前払いをもらわなきゃ、食っていけない」と口をむすんだ。


魔王は赤銅色の瞳であたりを見回してから、「交渉は好かん」と言って、天に向かって右手を突き上げた。瓦礫(がれき)の影からたくさんの青い炎が燃え上がり、魔王の右手に急速に集まった次の瞬間、稲妻を放って小さな燭台(しょくだい)に姿を変えた。青白い炎が一本の太い蝋燭(ろうそく)の上で揺れている。


「この炎はお前の仲間の『命』を集めたものじゃ。この火が消えぬ限り、死ぬことはないじゃろう。まあ、この火が消える前までに、私が満足する話をするんじゃな」


魔王はギルバートに「持っておれ」とその燭台を突き出した。ギルバートが受け取るのを見るなり、「強風には気をつけることじゃな。火が消えぬよう」と不吉なことを言って微笑むと、自分の腰くらいの高さの瓦礫にそっと手を触れた。


「立ち話というのも何じゃろう」


魔王がふれた場所から稲妻が空気を震わせ、瓦礫を小さなテーブルとベンチに変えた。


「いやー、疲れたのぉ」


どかっ、とベンチに座り込んで、魔王がピンヒールを履いた足をパタパタとさせる。


「あっ……」


魔王の視線に気がついたリリンが魔王のそばにひざまづき、白くて細い足先から、ピンヒールを脱がした。魔王は気持ちよさそうに幼い足の指をぐーぱーする。


「まあ、お前たちも座るといい」


どこからか現れた小さなイスが、コトンコトンとテーブルを囲む。


「どうせなら、食事もあったほうがいいじゃろう」


フワリと白いテーブルクロスが降りてきて、その上にトントントンとお皿が並んでいく。そしてテーブルの中央に、ドカンと角豚の丸焼きが鎮座する。


「あー、えーっと、メイド、名前は?」

「リリンです」

「よしリリン。私は丸焼きの皮が好きなのだ。うまく切り分けよ。それ以外は……」


魔王は燭台を大事そうに抱えるギルバートを目ざとく見つけ、「そこのお前、食ってよいぞ」とイスに座るようあごで促す。


「……俺はいらん」


ギルバートは不服そうに、イスのひとつに座った。

じりじりとろうそくが減っていく。


「悪いが話を始めさせてもらう。メシは好きに食えばいい」


ギルバートの言葉に「言われるまでもない」と、魔王が自分のお腹をさする。

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