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第3章 人間たち(3)

「お前たち……今日はずいぶん集まりがいいな」


大草原の真ん中、一本杉の真上に落ちてきた大宮殿――もはや瓦礫(がれき)と化したそれを獲物を狙うような目で見つめる兵士たち。彼らは一般の兵士という雰囲気ではなく、それぞれが名のある流派の長といった威厳ある風貌で、それぞれが特殊な形状の武器を持っていた。


人は彼らを『静かな夜の狼』と呼んだ。彼らが通った後は、すべての敵が静かに眠りにつくという意味で、その強力さが恐れられていた。その中心人物、人懐っこい笑みを浮かべている壮年の傭兵こそが、彼らの隊長であり、策略家で知られる一族の長兄、ギルバートである。


「ギルバートの兄貴の知らないところで、俺たちもいろいろ動いてるってことさ。特にそれが、『魔王狩り』なんてでかい話になるならね。そうだろ、みんな」


大きな鎌を持った背の高い男が尋ねると、狼たちは当然だといった様子でうなずいた。そして誰かに促されるでもなく、彼らの視線は1点に集まった。一本杉の上に落ちてきた大宮殿は、人間たちの敵、あの魔王の城なのだ。


間もなく、あの瓦礫の中から魔物たちの生き残りが現れるはずだ。『太陽の花』計画が順調に進んでいるとすれば、あの中にいる敵は魔王を含めて6体(・・)。目に映る者はすべて敵だ。


「さあお前たち、今日は気兼ねなく戦えるようこの場所を選んだ。持っている武器の力を押さえる必要もない。思う存分、戦いを楽しんでくれ」


ギルバートが右手を前に突き出すと、彼の手の中に一本の剣が出現した。

それは神々(こうごう)しいオーラを宿しており、見る者の心を浄化するような輝きを放っている。


『魔王は普通の方法では倒せない』


そのことは過去幾度か魔王と剣を交えたこともある、ギルバートの一族の記録が物語っていた。

さらには魔王の力によって心臓を石に変えられた種族がいることや、神出鬼没な城の存在自体が人間にとってみれば想像を絶する能力・特徴であり、恐怖の対象となっていた。


(そう、だがそれも今日で終わりだ。今日のために、一族から多くの犠牲をだし、多くの仲間を失いながらも準備を進めてきたのだ)


ギルバートは聖なる剣を高く天に掲げた。


「お前たちの力を貸してくれ! 今日、俺たちは魔王を討つ!」


狼たちは自らの牙をむき出しにして、高らかに吠える。


ギルバートから微笑みは消え去り、覚悟を決めた勇者の顔となっていた。

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