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「正直に言えば、勝てるかもしれないって思ってた。変な言い方をすると、ほかの子たちより、私のほうが女の子として鍛えられていたからさ、どうされたら男の子が嬉しいのかとか、そういうのも熟知しているつもりだったし、実際、長嶺くんも扱いやすかった」そこで少し笑ったように思える。「五分の会話で一番手になったのは、印象付けるのに最適だったと思う。コーディネートは、ちょっと私の好みと長嶺くんの好みは合わないかもなって思ったけど、通れたし。料理対決で甘いものを準備したのも最良だったと自分では思う。男の子の好きな女の子なら、こうしてくれるんだろうなって、きっと誰もが思うような理想の女の子を演じられていたんじゃないかなって。わかんないけどね、私、男の子じゃないし」

 小さく小さく、変わっていく。

 色を失っていく。

「でも、それももう疲れたよ」

 そして、


「私はにぃなちゃんには勝てないと思う」


 小さく、小さく、漏らした。

 僕は半身を起こした。

「どうして?」

 しきさんの言っていたのは、にぃなちゃんの方だったのか?

 でも、どうして。

 変な話、彼女は十人の中でも最も「普通」の女の子だった。

 いちかちゃんやしきさんが「負け」を確信する要素がどこにあったのか、僕にはわからない。

 これは、考えることの放棄か?

「どうしても。どうしても勝てない人って言うのは、やっぱり居るんだよ。それは、私が自分のことをどう思っているかとか、そういうことではなくて。彼女は圧倒的だった。私には及ばないところに居る人だった。そういう話なんだと思う。だって、この試験の順番を決めるとき、彼女、ケロッとしてるんだもん。なんにもなかったみたいに。ああもうダメだって思った。諦めることは悲しいよ。本当は。とっても悲しい。負けたくない。長嶺くんとこれからも生きて行きたい。そう思うのに、心のどこかでは、どうせここでがんばったって絶対に彼女には敵わないんだって思っている自分が居る。どうしたって彼女を越えることはないんだって。だって私、いくら長嶺くんのためだからって――」彼女は首を振った。「結局、いつかはそうなるんだけどね、みんな。待ってる間、みんなそうなるんだって知ってるわけだよ。でも、それでも、私には彼女のしたことを理解できないし、真似も出来ないと思う。大好きで大好きで仕方がないのだとしても。それは出来ない。だから、勝てない。もし長嶺くんが私を選んでくれたとしても、にぃなちゃんの存在はずっと私の中に居座り続けるんだと思う。私には耐えられない。なら、私が居座るほうになってやろうって、今は思ってる。もう、勝負なんて良い。にぃなちゃんを苦しめることが出来るなら、それで良い。意地悪かな。私のこと、そう思う?」

 沈黙が下りる。

 なんと返したら良いのか。

 それがわからない。

 だめなやつだな。そう思う。

 振り返った彼女は、満面の笑みをたたえている。

「なーんてね」

 全く面白くもなさそうに、そう言った。

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