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目覚めてしまった、などと言ったらよくないとわかりつつも、当たり前のように翌日が来たことを少し煩わしく感じる。眠り、目が覚めたとき、そこが自分の部屋のベッドの上だったら、十人の女の子もこんな試験もなく、全てが僕の夢であったと思えたら、そんな幸せなことはないと思えるのに。
別の世界で、別の軸の上に、別の形でそれぞれと出会えていたら、どんなに良かったか。
優劣をつけ、はっきりと落選の烙印を押し、泣かせることがなければ、どれほど楽だったか。
せめて試験官に選ばれなければ。
それがここでなければ。
イフの話をしても仕方がない。
身体を起こし、歯を磨く。着替えを済ませ、朝食を済ませ、正午を待った。
今日が本当に最後。ここでいちかちゃんと一日を過ごして、どちらを妻に迎えるか決めれば、全て終わる。ようやく今日で終わる。長かった滞在も、これで終わる。
人間はこういった試験を経なくても、誰を身近に置くか選別を繰り返している。誰が自分にとって得をもたらす人間なのか、観察している。落としたあとは、見ない振り。知らない振り。そうやって生きている。
などと考えれば気楽になるかとも思ったが、そんなことはなかった。誰かが当たり前にしているから、自分がしても当たり前と思い込めるほど、頭は単純な構造をしていない。僕は僕で、誰かは誰かだ、と思ってしまえば終わりだ。
ノックの音がする。
「はい」
控えめにゆっくりと扉が開かれる。
いちかちゃんだ。
「おはよう、っていうには遅いかな」
「いや、おはよう」
返すと、微笑んだ。
「おはよう」顔だけを覗かせたまま、「デート、しよ?」
目を泳がせながら、小さく言った。
「うん」ベッドから立ち上がる。「デートしよう」




