表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/92

7

 扉を抜けて御子野瀬さんの後ろから入ってきたのは、セミロングのこげ茶色の髪を揺らした、身長百五十センチ程度の女の子だった。緊張しているのか、前で合わせた手は白くなるほどきつく結ばれている。

「じゃあそっちに、座って」

「は、はい」

 さっそく、御子野瀬さんの言ったような女の子が現れたわけである。

 がたがたと音を立てて着席する。座ってようやく、膝小僧が少し顔を出している。

 僕と同じように、いざとなると硬直するタイプと見え、全体的に強ばっているような印象があった。

 こうして、いかにも自分より緊張しているのではなかろうかという人と対面すると、不思議に心が穏やかになる。変な話だが、こちらの緊張を吸い取ってくれているような心地さえした。

 たぶん、酔っている時に自分より酔っている人間を見ると冷静になる、というやつと同じ原理だろう。

 いや、飲んだことないけれど。

「大丈夫?」御子野瀬さんが質問を飛ばす。「試験とは別に、落ち着くまで時間をとってもいいけど。そこまでこのおっさんも意地悪じゃあないからね」

 女の子はひとつ深呼吸の間をもたせ、

「だ、大丈夫です……」

 答える。

 それを聞いて御子野瀬さんは、

「あ、そう。本当に?」僕のほうを見る。「長嶺くんは?」

「まっかひゃてららさい」

 どうやら、心地だけだった。

 酔ってる時と同じで、身体は意識のように錯覚せず、正直なのである。

 いやいや、飲んだことないけれど。

 御子野瀬さんはいい加減呆れてきたのか、乾いた笑みをくれると、

「うん、まあ、いいか。若い子ってどうしてこう強がりなんだろうね。あれ、今の発言ってなんだか……、俺、年取っちゃったな……」ぶつくさと言いながら、ストップウォッチを構える。「落ち込む前に、それじゃあ二人目、始めよう」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ