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 電気をつけたのは、御子野瀬さんだった。

「四宮さん。わかっているはずだよね、君なら」

「規約違反、ですよね」

「そう。しっかり読んだはずだね。最初に伝えもした」

「わかっています」

「残念だが君はここで」

「待ってください」半ば叫ぶように、声を上げていた。「どういうことなんですか」

「どうもなにもないよ」御子野瀬さんは頭を掻く。「試験期間中における試験官との性的接触は、即時失格。それが規約だ。君はちゃんと聞いていなかったかな?」

「それは」そうだった。「でも」

「長嶺くん。これは遊びじゃないんだ。俺だって、何も思わず、何も考えずこんなことはしない」

「いいんです。わかっていたんです。必ず、御子野瀬さんがやってくると」しきさんは立ち上がり、こちらに笑みを見せる。「最初からわかっていた。それでも、したかった。私は彼女には勝てない。そう思ったから。今、するしかないと、そう思ったのです」

 彼女とは、誰だ?

 完璧な彼女にそう言わせる人物とは、誰だ?

 そして、その理由はなんだ?

「長嶺さん。私のような女は好きではなかったかもしれない。それでもここまで残してくれて、ありがとうございます。本当のところを言うと、私はほかのクラスメイトに負ける想像など一切していませんでした。私こそがあなたの妻として相応しいのだと、そう思っていました。でもそうではなかった。それが、わかってしまったんです。なまじ計算が出来る分、結末が見えてしまった。もう勝てないのだと。私にはそこに立つほどの度量がないのだと。後に残った二人は、とても良い方たちです。どうか二人を、泣かさないように、してください。それが私からの、最初で最後のお願いです。純粋に、あなたらしく、最後まで。残るのは一人です。それでも、あなたの誠意を、ちゃんと見せてください」

 貼り付けたような笑みは、それでも感情が見えない。

 御子野瀬さんは頭を掻き続けながら、多分、待ってくれていた。

「そんな」

 でも僕は、言葉を考えることも出来ず、もちろん、発することもなかった。

「長嶺さん」しきさんが言う。「ファーストキスがあなたでよかった。私は一生、今の感触を忘れません。死んでも、それだけは思い出すことでしょう。あなたに出会えてよかったです」

 そして振り返り、御子野瀬さんを見た。

 御子野瀬さんは困ったように、視線を外した。

 ああ、泣いている。そう思った。

 しきさんは、今、泣いている。

「行きましょう」

 震える声に、

「うん。行こうか」

 困った声が答える。

「待って」

「長嶺さん」

「待ってよ」

「さようなら」

「ちょっと」

「楽しかったです」

「しきさん!」

「ありがとう」

 扉が閉まる。

 外から、施錠された。

 押しても、開かない。

 そんな。

 まただ。

 また僕は、何もわからないまま。

 このまま、さようならだ。

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