表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/92

6

 いちかちゃんが教室を出て三十秒ほどのち、御子野瀬さんはため息をついてストップウォッチをリセットさせる。

「先行き不安だな、長嶺くん。心臓持つか?」

 フランクな物言いに、沈黙。

 持たないかもしれない。

 それを表情から悟ってくれたのか、

「まあ女性に対して免疫がないのは頷けるよ。仕方のないことだと思う。でももう少し試験らしく、公正に判断できる冷静さがないと、後悔することになるかもしれない。君はここで三人を退場させる。この五分間の会話は、要するに第一印象による選別だ。いちかちゃんはうまくやったようだが、他の子もそうとは限らない。向こうだって緊張していて不思議はない。君はあくまでも試験官として彼女たちのそういった内情もさえ視野に入れて判断する必要がある。わかる?」

「えと、なんとなく」

「なんとなくでもいいけどね」御子野瀬さんは小さく笑う。「最終的には夫婦になるんだから、下心で結構だ。だがあと九人、いちかちゃんにその態度で臨んだのならば、変にその感覚を麻痺させないでくれよ」

「善処します、かたじけない……」

 じゃ、と言って御子野瀬さんは席を立った。

「俺は次の子を呼んでくるから、そのまま座って待ってて」

 教室を出ていく。

 御子野瀬さんの言うとおり、僕は女性に対して免疫がない。中学時代から男子校に通っていて、関わる機会がなかった。改めて、どのような顔をして、どのような声音で、どのような接し方をすればいいのか、手探り状態なのである。

 でも同じく彼の言うとおり、これは試験だ。僕は試験監督なのだ。慣れないからと言って最初の女の子に有利に働いてはならない。

 うむ、そうだ。そのとおりだ。

 公正に、かつ厳格に。

 いちかちゃんは過ぎてしまったから仕方ない。なんにせよあんな可愛い子をここで退場させたりはしなかっただろう、うん、そんな気がする。だからここは却ってその感覚を麻痺させ、いっそ上から目線なくらいで、そう、例えば……、

「長嶺くん、次の子だ」

 うへへへ、おんにゃのこだー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ