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 結果を決めた時には夜の七時になろうかという頃だった。とはいえ、早いほうだろう。

 教室内には僕をはじめ生徒六人、大人は三人揃った。御子野瀬さんは一服済ませたものらしく、すこし煙草の臭いがした。又野さんは腕を組んでむっつりとし、小路さんは前で手を握り微笑を湛えている。生徒たちはみな緊張の面持ちだった。

 教壇に立たされ、大人たちは脇に控える。女の子たちはそれぞれの机に座った状態だ。彼女たちの一心にこちらを見つめる瞳は、どれも合わせるには力強く、僕は宙を睨むような格好で立ち尽くしていた。

「それじゃあ」と御子野瀬さんが声掛ける。「発表と行こうか」

「改めて確認します」続けて又野さんが言う。「今から長嶺くんには三名、次の試験へ進む方を選んでもらいます。不合格者はまた、自室待機になります」

 言いにくそうに顔を歪める。確かに、最初に不合格とした三人は、かれこれしばらく外に出ていない。起き、飯を食べ、何をするでもなく夜を迎え寝ているのだろうと思うと、不憫な話だった。はやく帰してあげればいいのにと思わないでもない。一体何を持ってして、彼女らは拘束されているのだろうか。

 考えていると、

「じゃあお願い」

 御子野瀬さんに振られるので、狼狽してしまう。そんなことを考えている暇などなかった。

 一つ目の試験は、手紙にてその旨を伝えた。次は、同じ場には居たが、彼女たち自身が結果を開いた。今回は、直接言葉で伝える。せめてもの救いとしてひとつ挙げるならば、不合格者への通知でないことだろうか。それも僅かな差異だが。

「最初の合格者は」言ってから、「順不同です、決して一番目に告げるからと言ってその人が一番良かったと言っているわけではないです」

 誰にともなく声を投げる。

 御子野瀬さんは苦笑を漏らし、

「試験官らしくなってきたね」

 そんなことを言った。

 僕はそれを無視し、

「一人目は」続ける。「野菜炒飯を作ってくれた、しきさんです」

 しきさんは緊張の面持ちから、急激に弛緩し、長いため息をついた。彼女にしてそうさせる理由は判然としない。

「じゃあ合格者は立って、前に来て」

 言われ、無言のまま彼女は席を立ち、大人たちの近くに並んだ。小路さんがなにか声をかけたが、内容は聞こえなかった。

 僕はそれを横目に、

「次は」女の子たちのさらに強ばる顔を見つめる。「フレンチトーストの、いちかちゃん」

「良かったァ……」両手で口元を覆う。「賭けだったから……」

 言いながら立ち上がり、しきさんの隣に移動する。

 残ったナナ、くるみちゃん、にぃなちゃんの表情は様々だった。ナナは祈るように固く目を閉じ、くるみちゃんは諦めたように儚げで、にぃなちゃんは俯いて無表情だった。

 慣れ。

 慣れなのかはわからない。ただ彼女たちの表情に、思うことはあれど決断は揺らがない。

 ごめんね。

 心のうちだけで、何度も謝る。

 選んであげられなくてごめんね。

 悲しい思いをさせてごめん。

 躊躇わなくて、ごめん。

「最後は」ひとりひとりの顔を改めて眺める。「ハンバーグの、にぃなちゃん」

「うそ……」

 ナナが引き攣ったような声を出し、にぃなちゃんを見た。くるみちゃんも、彼女を見ていた。控えめな彼女には勝てると、そう思っていたのだろうか。

「では、一ノ瀬いちか、二村にぃな、四宮しきの三名を合格として、三次試験を終了する」御子野瀬さんは声高に宣言した。「又野さん小路さん、二人をよろしく。長嶺くんと合格者三名は次の試験の説明を行うので、このままここに残ってくれ」

 ナナを又野さんが、くるみちゃんを小路さんが引き連れ、教室を後にする。

 くるみちゃんの視線は、僕に向いているのか、合格者に向いているのか。

 なにか口を動かしていたが、理解するにはいたらなかった。

 ごめんね。

 ごちそうさまでした。

 僕は小さく、呟いた。

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