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翌朝教室に向かったが、誰もいなかった。校庭で数人の笑い声がする。
黒板には、今日の試験が正午から行われる旨が書かれており、どうやら僕も彼女たちも、早起きしてしまったものらしい。
机の一つに落ち着き、頬杖をついて外を見た。駆け回り、タッチしている様子は、鬼ごっこだろうか。
十八歳。
この制度がなければ、僕たちはどのように過ごし、どのような関係を築いていたのだろう。同じ教室で学び、放課後をともにしていただろうか。彼女たちとこの試験の上で相対すると、ありもしない「たら」「れば」話が増えてしまう。彼女たちは、落としてしまった子も含め、それぞれに魅力的だった。その感想だけは風化させまいと、胸に刻んでおく。
しきさんが教室に入ってきた。そちらを向くと、彼女は無表情のまま、扉の前で止まった。
「しきさんは遊んでこないの?」
何気なしに問うと、
「今は友達ではないですから」
とポツリと言った。寂しげだった。願望かもしれない。
「昨日のトランプ」僕はなにかに抵抗するように言葉を継ぐ。「楽しかったね」
「そうですね」しかし彼女の顔は和らぐことはない。「あれも勝負の一環です」
「勝負ね」繰り返してから、視線を外し、「何と戦っているんだろうね」
そんなことを呟くと、彼女から返事はなかった。
ややあって、
「結局何をしても勝敗は存在します」自分の席へ歩みを進める気配を感じる。「私は負けず嫌いなんですよ」
「だろうね」
「ずっと勝ってきたと思っていたけど、彼女たちを見ると時々わからなくなります。本当の自分がどうしたいのか、その私はどこにいるのか。下調べをして手を打って、淀みなく解答を導くことが、本来的に正解なのかどうか」
「しきさんも」その顔を見る。「未完成なんですね」
「未完成?」
「思ったよりもがいてる」
言うと、彼女はようやく笑った。
そんなつもりはなかったのに。
「長嶺さんほどではないですよ」
「かもね」つられて笑う。「でもまあ、完璧なんてありえないよなあ。常に変動するものだからね、自分も、自分にとっての完璧も」
「そうですね」そして彼女も僕の目を見た。「それでも私は完璧を目指しますし、どんな手を使ってでも勝つつもりです」
あるいはこの時間の確保も、彼女の策略の内なのかもしれない。
そんなことは、邪推だな、と思った。




