表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/92

54

 翌朝教室に向かったが、誰もいなかった。校庭で数人の笑い声がする。

 黒板には、今日の試験が正午から行われる旨が書かれており、どうやら僕も彼女たちも、早起きしてしまったものらしい。

 机の一つに落ち着き、頬杖をついて外を見た。駆け回り、タッチしている様子は、鬼ごっこだろうか。

 十八歳。

 この制度がなければ、僕たちはどのように過ごし、どのような関係を築いていたのだろう。同じ教室で学び、放課後をともにしていただろうか。彼女たちとこの試験の上で相対すると、ありもしない「たら」「れば」話が増えてしまう。彼女たちは、落としてしまった子も含め、それぞれに魅力的だった。その感想だけは風化させまいと、胸に刻んでおく。

 しきさんが教室に入ってきた。そちらを向くと、彼女は無表情のまま、扉の前で止まった。

「しきさんは遊んでこないの?」

 何気なしに問うと、

「今は友達ではないですから」

 とポツリと言った。寂しげだった。願望かもしれない。

「昨日のトランプ」僕はなにかに抵抗するように言葉を継ぐ。「楽しかったね」

「そうですね」しかし彼女の顔は和らぐことはない。「あれも勝負の一環です」

「勝負ね」繰り返してから、視線を外し、「何と戦っているんだろうね」

 そんなことを呟くと、彼女から返事はなかった。

 ややあって、

「結局何をしても勝敗は存在します」自分の席へ歩みを進める気配を感じる。「私は負けず嫌いなんですよ」

「だろうね」

「ずっと勝ってきたと思っていたけど、彼女たちを見ると時々わからなくなります。本当の自分がどうしたいのか、その私はどこにいるのか。下調べをして手を打って、淀みなく解答を導くことが、本来的に正解なのかどうか」

「しきさんも」その顔を見る。「未完成なんですね」

「未完成?」

「思ったよりもがいてる」

 言うと、彼女はようやく笑った。

 そんなつもりはなかったのに。

「長嶺さんほどではないですよ」

「かもね」つられて笑う。「でもまあ、完璧なんてありえないよなあ。常に変動するものだからね、自分も、自分にとっての完璧も」

「そうですね」そして彼女も僕の目を見た。「それでも私は完璧を目指しますし、どんな手を使ってでも勝つつもりです」

 あるいはこの時間の確保も、彼女の策略の内なのかもしれない。

 そんなことは、邪推だな、と思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ