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 しきさんの先導で最初の教室に戻る。いちかちゃん、にぃなちゃん、ナナの三人がガタガタと机を四つ集めているところだった。御子野瀬さんなどの大人の姿はない。

「ちょっと待っててね」

 いちかちゃんが笑みを向けてくれる。

 しかしそう言われて、待っているだけの人間ではなく、当然のように手伝おうと近寄ったが、拒絶された。不思議に思って見ていると、

「長嶺くんはお客様だから。ゲストだよゲスト」

 そうやって続ける。

 椅子を六つ用意するのを見守りながら、腕を組んで、考えていた。

 最終的にこのうちの誰かを妻として迎える。それが誰になるのか、今のところは全くわからない。自分の中で誰が一番優位に立っているのかも、不鮮明である。あるいは考えまいとしているのかもしれない。

 今こうしてトランプを行う間、二階に居るすでに落ちてしまった五人は何を考え、どう過ごしているのだろうか。独房然としたあの個室で、狭い換気口から入る僅かな空気を吸い、どのようにして決着を待っているのだろうか。そんなことを考えるのは野暮だろうか。いけないことだろうか。彼女たちにとって卒業できないと言うことはどれほどの傷になるのだろうか。つまるところ中卒と烙印を押されると、社会的に見れば余り芳しくはない。三年間、確かに学業を全うしたのに、一人を除いて、全てがそう言われてしまう。僕のような未熟な人間の手によって。それが、どういう重さの、どういう質感の事実なのか、判然としない。

 でも、僕がそれを深く考えて、どうなると言うのだろう。

 全員を選ぶから、お願いだからみんなを卒業させてくださいと、誰に頭を下げればいいのだろうか。

 その人が頷く確率は一体どれくらいなのだろうか。

 否、全くないのだろう。

 それが「制度」というものだ。例外は認められない。

 こんなにそれぞれ、良い子達なのに、どうしてたった一人しか卒業できないのだろう。

「さて」ナナの声に思考を中断させる。「何やる?」

 その声は誰に向けられたものでもなく、ナナ自身も退屈そうにトランプを切っていた。

 まるでムミュールの残した言葉が呪詛となって彼女たちに作用しているように、思えた。あるいはそれを紛らわすためのトランプか。

 全く、自分で言うのも変な話を極めるが、ここに居る女の子たちはみんな僕に好かれようとあれやこれや考え行動している。基本的には「陽」の部分を見せてくれているわけだが、「陰」の部分も当然抱えている。誰しも生きていればそうだろう。僕だってそうだ。

 それを突いたのが誰かの涙で、誰かの言葉である。

 その「陰」に飲み込まれないよう常に他人と行動を取っているのかもしれない。僕が場に居れば「陰」を見せるのは極力控えなくてはならないと自制が効くのだろう、などと言ったら自惚れだろうか。

「ババ抜きにしようよ」カメレオンくるみちゃんがしきさんの手を取って言った。「単純だし簡単だし」

「そうだね」それを見咎め何かを感じたわけでもなかろうに、にぃなちゃんの表情が少し翳る。「私もそれがいいなあ」

「じゃあババ抜きにしよう」パッと明るい声を出したのはいちかちゃんだった。「じゃあ長嶺さんから席に着いて?」

 不意に名指しされ、

「僕?」

 間抜けな声を出してしまった。

「第一回戦は長嶺さんの隣席争奪戦ということで、長嶺さん抜きにしようよ」そう言って真っ先に、寄せ集めの机から少し離れた床にぺたんと座り込む。「一位の人と二位の人が隣、三位の人は正面かな?」

「いいよ」ナナは楽しそうに言って、その横に座る。「負ける気がしないけどぉ」

 そうして、女の子五人の輪が出来る。

 僕はそれを、一体どんな顔をして、高みから見ていれば良いのだろう。

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