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残るセットは二つ。シンプルか、原宿系か。大方、どちらを選んだのか、そしてそれが誰によるものなのかは、想像に難くないことであろう。
「せーので開けよう」
ムミュールが笑みを浮かべてにぃなちゃんに提案した。にぃなちゃんのほうがよっぽど泣きそうな顔で、緩慢に頷く。
不合格はムミュールだった。大きなポンチョの上に、その文字が浮かんでいる。
彼女は泣きも怒りもしなかった。
静寂が教室内に満ち満ちて、誰も、微動だにしなかった。
「ま、火星からの信号は何光年の移動を経て齟齬が生じてしまったのね」そんなことを誰にともなく言う。「仕方ないことだわ」
「ムミちゃん……」
もごもごとしている僕に代わって、勝利を得たにぃなちゃんが声を掛ける。
ムミュールは毅然として、それを鼻で笑う。
「勝者は勝者らしく笑うべきよ。にぃなちゃんだけじゃない、あなたたちは私や、ほかの四人の生贄の上に立っているんだから、哀れんで下を向かないで彼だけを見ていればいいのよ。ねえ長嶺さん」声を掛けられ、彼女のほうを見る。「次は火星で会いましょう。しゅたたたた……」
そんな捨て台詞を吐いて、彼女は最後まで彼女のまま、一人、自分の部屋へと帰っていく。
「これで二次試験は終了」
しばらくして、御子野瀬さんが言った。
時計を見上げる視線につられて、僕もそちらを見た。
「少し遅いが昼を食べたら、今日の残りは自由にしてくれて構わない。消灯まで、長嶺くんとの接触を許可する。昼食のみ、全員で食堂で行うことになっているから、移動してくれ」
残りはいちかちゃん、にぃなちゃん、しきさん、ナナ、くるみちゃんの五人。
おんにゃのこ、と浮かれてばかりいないで、ここからは些細な言動も審査の視野に入れて行うことと決める。
次は果たしてどのような試験になるのか。
そんなことを考えながら食堂へ移動する。




