43
次に試験をパスしたのは、ナナだった。サングラス付きのセットで、このあたりは消去法的選択だった。彼女は合格の札を見るとこちらを指さし、
「ナガミネ〜」
と言って頬を緩めた。弛緩してだらしない表情だった。
残るはいちかちゃん、にぃなちゃん、ムミュール、くるみちゃんの四人で、内失格は一人。
続いてナナと同系統であるオラオラ系のセットを選んでいたいちかちゃんが通過する。はっきりいえば好みではない。彼女は、
「よかったぁ〜」と安堵してから、「選んでくれると思ってた!」
あまつさえハートマークでもつきそうな調子で、いっそ抱きついてきそうな勢いで、あわよくば写真に収めたい悩殺ものの笑顔をくれた。
マネキンの前には三人が残る。
後になればなるほど緊張は高まると言っていたとおり、場は膠着状態に陥りそうだった。誰もローブに手を伸ばさないし、言葉もなかった。このうち、一人はここで終わる。
一番露骨に、悪い想像をしているのだろうな、という様子なのは、にぃなちゃんだった。顔色も悪く、震えている。蛇に睨まれた蛙のごとし、狩られる前の獲物の様だった。
ムミュールは司令官と交信でもしているのか、もごもごと口元に動きがあるが、言葉は発せられていない。目を閉じ、逃避状態にある。彼女の言葉が正しければ、僕は彼女を選んでいるはずで、彼女が不安になる必要は全くなく、つまり当たり前だが、やはりただの設定に過ぎず、一人の女の子だった。
くるみちゃんはそんな二人のほうを見て、まるで自分は試験に関係がないような、そんな顔をしている。合格した面々の安堵した表情に近しく、どこか余裕に見える。あるいはそれは、諦めなのかもしれない。
などと考えていたからか、
「じゃあ私開ける」
彼女がそう言ったので、驚いた。
二人はくるみちゃんのほうを見て、硬い表情のまま、頷きや返事などの反応は示さない。
ゆっくりとため息が落とされ、一息にローブが剥がれる。
そこにあったのは、トレンチコートのセットだ。
彼女はそこに書かれた文字を見て、また、ため息を落とした。
「合格」である。
残り二人のうち、一人は喜び、一人は泣く。
そういうことになってしまった。




