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移動した先の教室は、確かに衣装部屋と言って遜色の無いほどの多種多様な系統の服が揃えてあった。スーツから海賊服、なぜかナース服まで、多岐に渡る。
例えばワイシャツひとつとっても、ベーシックな白や黒、薄くピンクに染色されたもの、ストライプの入ったもの、などなど、豊富な取り揃え。
なるほど確かにセンスを問うものには違いなかろう。
教室の中央には円台があり、うわあなんだあれ、と思っていたら案の定立たされた。デッサンモデルにでもなった気分。会話をし、多少はお近づきになったとはいえ、この僕を着せ替え人形にするというお題である以上、彼女らが僕を知ろうと見つめてくるのは当然で、気持ちはすっかりヌードだった。
「こうやって見るとなかなかスタイルいいね」御子野瀬さんは笑う。「何着ても様になりそうといえばそうだな」
「ちょっと、やめてくださいよ」
「採寸は?」しきさんが問う。「ここの服は長嶺さんのサイズにあっていますか?」
「もちろん」と又野さん。「彼のために用意したものですからね。なにより」
「不用意な身体的接触は失格の対象になりかねない」御子野瀬さんが引き継ぐ。「そういうのは結婚してからね」
「わかっています」
「ナガミネー」
ナナが声を掛けてくる。
「なに?」
「うける」ぶっと笑った。「やばい」
いやなにがだよ!
と思ったが、箸が転がっても面白い世代だもんね。
「ほかに質問は?」御子野瀬さんの声に、反応はない。「じゃあ、あの時計で九時半から試験を開始する。その十分後には長嶺くんは退場。いいね」




