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八束やえを落とすことは、先に決めた。彼女とは少し方向性が不一致に思えた。結婚したとして、その生活が難航するであろうことは想像に難くなく、また、同じベクトルに据え置くならばとおこさんの方が可愛げがあった。
三井みさとに関しては、悩みどころだった。陸上にひたむきで、きっと一緒に走れば楽しいのだろうと思えもしたし、生活において不自由させられることもないだろうとは考えたのだが、ほかの子に比べ、彼女は周囲に味方が多いのではないか、と思った。それは僕個人が選別を行う上では度外視したほうが良いことなのだろうが、どうしても、落とした子達のその後にも目がいってしまう。いずれは一人を残した全員が不合格となるわけだが、今回の選考基準はそこにおいてみた、と言う話である。
「次の試験は、一つ目の会話における第一印象とは違い、その人その人のセンスを問うものとなります。長嶺くんと近いセンスを持っているか、というのが、大事になると思います」
又野さんは説明を続ける。
彼女はひとつ抜きん出て座る僕をどう見ているのだろうか。
「ずばり試験内容は、ファッションショーです」
「ファッションショー?」
誰かが聞いた。
「そう。別室を衣装部屋として準備してあります。あなたたちはそこで、長嶺くんにどんな服を着せてあげるか、三十分でワンセット作り上げてください。長嶺くんは七通りの服を着て、どれが自分に適したものか、いや、逆に言えばどれが自分のセンスに合わないかを判断してもらいます」
「何人になるの?」
また、誰かが聞いた。
「この試験で、七人のうち二人が落選、つまり五人が次の試験に進めます」また、と目を閉じた。「この試験では、最初十分を除く残りの時間での長嶺くんとの接触は許可されません。初めのうちは彼に合わせてもらうことも可能ですが、残りは想像するしかありません。そして、審査においても同様で、長嶺くんは完成された七通りのセットが、それぞれ誰の手になるものかを知らない状態で審査してもらうこととなります」
「つまり」
「センスです」
目を開き、誰にともなく彼女は微笑んだ。




