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 和服少女は凛として、前で手を組むと軽く目を閉じた。御子野瀬さんが隣に腰を下ろしたので、

「どうぞ」

 言うと、頭を下げて、

「失礼致します」

 椅子に浅く腰掛けた。

 みさとちゃんとは別のベクトルに、汚い言葉で言うと馬鹿丁寧な人だなと思った。

 よいしょ、なんて呟きながら居住まいを正すと、

「それじゃあ始めるよ」

 御子野瀬さんが言う。

 ストップウォッチがスタートする。

「八束、やえと申します。どうぞお見知りおきを」

「はあ。長嶺です」

 開いているのかどうか、目は細くなったままだ。あれでいっぱいいっぱいなのかもしれない。

「えーと」まず疑問に思ったことを聞く。「制服はどうされたんですか?」

「ええ」裾を払う。「着替えさせていただきました。殿方にお会いするのですから、当然の礼儀です」

 率直な感想を言えば、そんなのありだったんだ、というところか。

「普段から着物を?」

「母が茶道を嗜んでおりまして、私もそれに倣って普段から身を引き締めております」

 ワンテンポ遅れて返事が来る。

 素朴に言えば、のんびりした人、というところか。

「そうなんですね。茶道ですか、和と言う感じがあっていいですね」

「心を落ち着け、目の前のことに集中する。雑念を排斥し、味を堪能する。日本人古来の精神の極みと言ってもよろしいかと」

 そんな大仰な。思ったが、もちろん言わない。

「やはり和食がお好みで?」

「もちろん。ご飯と味噌汁は欠かせません」そうだ、と付け加え懐を探る。「よろしかったらこれ」

 差し出されたのは「しるこサンド」だった。

 反応に困る。

「お好きではありませんでしたか?」

「いえいえそんな。早速いただきます」慌てて包装を開ける。「うん、美味しい」

「それはよかったです」

 ぱっと胸の前で手を合わせた。うん、まあ商品だし。思ったが、もちろんもちろん、言わない。

「いつも持っているんですか?」

 お菓子を飲み込むと、包装を掲げて聞いてみる。彼女は頷き、嗜みです、と答えた。まあ、おばちゃんが飴ちゃんを持ち歩いているような感覚か。

「長嶺様は和をなんと心得ておりますか?」

 不意な質問に、口内の残りかすを気にしていた僕は頭が追いつかなかった。

「和、ですか?」

「ええ、和、です」

「そうですね」そう言われると難しい。「奥ゆかしさ、でしょうか」

「いけません。理解が足りないわ」

 そう言ってカッと見開いた両眼で僕を見つめ、時間いっぱい使って和について講釈をくれたが、半分も理解できなかったのでここでは割愛する。

 過去を重んじることは悪いことでは全くないが、どこかムミュールと似たような雰囲気を感じ取ったのは僕だけではなかろう。

 御子野瀬さんは静かにため息をついていた。

 質問をするタイミングを逸したが、結婚したら、これが延々続くのだろうと予想することは、何も難しいことではなかった。

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