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プロローグ

大筋と最終的な着地点は決まっていますが、そこまでうまくたどり着けるかどうか。

極力軽い文体で、毎回二千字以内を目標に。

 移動中のバスの車内、前方の席からオコノセさんが顔を覗かせる。

「緊張してるかい」

 口元に蓄えた髭が印象的な、四十過ぎの細面が柔和な笑みを作り出す。

「いえ、それほどは」

 時折がたんと激しく上下する。

 舌を噛まないよう気を付けながらの返事は、どこか余所余所しくなった。

「大したもんだ」スーツの内ポケットから取り出した煙草をくわえ、火を点けてから、「俺の甥っ子の頃はここまでのことはしなかったんだが、時代の流れってやつは早いね」

「そうなんですか?」

「うん。ちょっとまあ、この制度の如何は問われるべきとも思うがね。娘を持った身としちゃあね」


 これから僕はこのバスで、山間部にあるゲットー女学院の卒業認定試験場へ向かう。そこには十人のゲットー女学院生徒がおり、僕は彼女たちの卒業試験を手伝うという名目で運ばれている。

 そしてこれは、政府公認の、お見合いも兼ねている。

 つまるところどういうことなのか、というと、十人の女の子の内から僕が一人を選び、その子のみがゲットー女学院を卒業でき、卒業後僕の妻として安定した地位を得ることとなる。と、そういうことらしい。

 らしいと言うのも、これは全て担任からの受け売りで、都内唯一の男子校に通う僕としては、女の子と寝食を共にするというだけで、キャパオーバーなのだ。詳しい話を聞いている余裕もなかった。

 なぜこれが政府公認なのかも、十全には把握していない。要は目隠しをされたまま世間に放り出されたようなものである。

 がたん。

 バスの上下で、オコノセさんの煙草の灰が落ちた。

「ま、君は純粋な興味や下心で、誰かを選ぶだけだから、身構えることはないよ。約一週間、楽しんで」

「はい」

 視線を前方に投げる。

「さて、そろそろ着くよ。俺も引率として泊まり込みだから、ひとまずよろしくってことで」

 サイドに続いていた林が切れ、ついにゲットー女学院の卒業認定試験場が視界に入る。

 どんな女の子たちがいるのだろう。

 そのワクワクと、責任重大なこの任務を完遂できるのかという不安がないまぜになって、ようやく、僕は少し吐き気を覚えた。

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