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#47 大丈夫、宝くじより当たりやすい

 ……少し凹んだけど、今は気にしても仕方がない。


 気を取り直して、やろうとしていた作業――アイテム整理を始めていく。と言っても何を持っているか確認し、危なそうなのをメインに掲示板へスクショを上げていくぐらいであるのだけど。


 姫翠とトリアートはぐっすり眠っているので、なるべく音を立てないようにして机に並べていく。草に花に蔦に石に水晶に、食べられることだけは分かっている果実もいくつか。適当に拾ってきたからか片手で持てる物が大半だ。


 草や花は調合すれば何らかの薬になるのだろうから使い道はありそうだが、鉱石系は単なる石ころと同等という可能性もある。できれば売れさえすればいいのだけど――それよりもだ。


「高値で売れるアイテムでも嬉しいことは嬉しいけど……やっぱり今は薬草の類が欲しいよねー」


 なにせ、今の私には回復手段が非常に限られている。

 先の蛇との逃亡戦でも分かったが、高性能なポーションは持っているものの、その使いどころが微妙にない。あまり、いや全く戦闘方面のスキルを鍛えていない私ではMobの一撃で即死しかねないのが問題なのだ。

 薬草の中には噛んでいる間だけHPもしくはMPが持続回復とかするのもあるらしいので、そんなのが一つでもあれば心に余裕が持てるのだけど……そんな都合よくないとは思いつつ、期待してしまうのが悲しいところ。


 そんな訳で、今優先して整理しているのは特に加工せずに使えそうな薬草系である。毒かそうでないかが分かるだけでも御の字だから、多少手間でもやる意味は十分だ。


 確かに、レアっぽい鉱石を加工して超品質アクセサリ! だとか、よくわからない草花を調合してチートドーピングアイテム! とかは憧れる話ではある。

 ……あるのだけど、細工スキル用のキットも、調合・調薬キットも持ってないんだよねぇ。フレンド通信のバグ補償の時に貰っておけばよかったか? ま、今更ですか。


 パシャリと撮って、並べて、撮って、並べて、撮って、並べて……分かってはいたけど凄い地味な作業だなー。


「うーん、大体はただの葉っぱとか、ちょっと綺麗な花にしか見えないんだよね……」


 ヨモギのように見える葉とか、ちょっと大きめの鈴蘭に似た花とか。ただ見かけたからなんて理由で採っただけあって、その半分以上は見た感じ普通である。

 とは言え、普通っぽい物の中でもトリアートが持ってきてくれたのは何だか効果がありそうだから、それだけも何か分かると嬉しいのだけども。


「……で。問題はその残りか」


 おおよそは普通。


 が、逆に言えば少量でもアレなものは確かにある訳で。

 こう、なんだろうね? 普通の中になんともコメントに困る非常にキワモノというか妙なのが混じっていて、忘れたときにやってくるというか。精神的に襲い掛かってくるというか。ただの荷物整理が油断できないのはどういうことか。


 おのれ姫翠……! 可愛いから許すけど!


 姫翠の寝顔を撮りつつ気を取り直して作業を再開。

 そして整理自体はさほど時間がかからずに終わった。


 衣服やポーション、お守りなどの既に内容が解っており、今後も持ち歩くのが一グループ。これらはアイテムボックスに容れなおした。

 水晶などの鉱物や装備しないアクセサリ、使用しない又はする当てのないのが一グループ。これらはホーム用の保管スペースに容れなおした。

 この二グループは特にすることはないので終了である。


 で。

 まだ作業が残っているのが二グループ。


「や、見た目がヤバいかそうでないかの違いだけではあるのだけど」


 テーブルの上で一際異彩を放つ怪しげな物体シリーズを眺める。


 光の加減で毒々しく光る紫紺の葉とか、変に艶めかしく蠢く赤黒い蔦とか、甘い匂いを嗅ぐと何故か10分ほど時間が進むドピンクの花とか。これで一部。

 どれも姫翠が次から次へと持ってきたもので、ああ、うん、気分が良かったとは言え、それを適当に突っ込んだのはマズかったなー。本当に効果がさっぱりなんだけど、どれかは絶対毒あるでしょ、コレ。

 ……まあ、手に持っただけでダメージ判定とかはないだけ救いなのか、な?


 一通り並べ、撮れたところでウィンドウを操作して掲示板を開く。今回目的のスレッドは、私と同じように詳細不明のアイテムについて質問を行うところだ。

 掲示板で聞いて解るものなのか――と最初は思ったのだけど、なんとこのゲームではスクショに映ったアイテムでも鑑定を行うことができるらしい。無論のこと難易度が上がり情報も限定的ではあるけれど、鑑定系のスキルの経験値も入るのだそうだ。そして質問をした方も少量ではあるけど経験値が入るので、常時賑わっている板である。


 通称『なんでも鑑定板』。

 おい誰だこの通称付けたの。


「とりあえず今は、と。うん、結構人がいるみたいだね――お?」


 鑑定板に入ろうとして、ふとそのすぐ直近のスレッドに目が留まる。

 それはあの【廃都クリアカラネラ】や【大光樹カルネージェア】の情報が集まっているスレッド。

 内容を見ずとも更新頻度と閲覧人数が表示されているので状況は把握できるが……流石は新マップ新ダンジョン、コメントの速度と閲覧人数が尋常じゃない。これはもう賑わっているどころか過密状態のようである。


「……う、ちょっと見てみたい、けど」


 なにせ自分が発見・出現させて、しかし実力だったり他のプレイヤーと会いたくないからとしてほぼ探索なしで通り抜けた場所だ。ダンジョンなんて総スルーである。当然、気にならないと言えばウソになった。

 いや、しかし――


「ここで読みだすと、確実に本来の目的を忘れちゃうよねぇ……」


 なにせ、攻略や考察系のスレッドではないのにご覧の有様である。一度見ればどんどんのめり込み、別のスレッドも見て、気が付けば朝になっていること間違いなしだ。

 だが内容としては有益な情報も多いだろうし、私が見逃した情報もあるかもしれない。先輩方もダンジョンを攻略しているというから、本人も書き込みをしていたり話題になっていそうなので見てみたいというのもある。

 そう考えるとここは見てもいいかも――って思うのだけど……。


 ぬぬぬ、駄目だ駄目だ。

 これだけ情報過多の掲示板を見ても、必要もしくは正しい情報かを精査することは難しいだろう。どのみち掲示板で集められた情報は整理されてwikiに書き込みされるので、今は見る必要もないことは確か。


「………が、我慢、ここは我慢だ私っ!」


 頭を振って、誘惑を振り払う。

 先輩の活躍は部室で聞くことにして、とりあえず今は当初の目的である鑑定を優先しよう。


 ええと使い方は、と。

 スレッドにスクショと合わせて場所と時間帯も記入して投稿すればいいのか。……あれ、でも複数個ある場合はどうするんだろう? まあ先に聞いてみればいいか。

 先に投稿して鑑定してもらうのは、


「まずは持ってるだけでも怖い、毒物候補からにしよう」


 さーて、良いものがあるかどうか。

 ネタにしかならない気がするけどね!



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▼なんでも鑑定板補足

 未開探索者や道に迷って切羽詰まっている人が良く使う板で、物体Xの詳細をすぐに知りたい場合に利用される。


 依頼する側は鑑定してもらいたい品の全体像を複数枚スクショに撮り、採取した場所や時間等を書いて情報を投稿。

 鑑定した側は結果をこれまたスクショで撮って貼り付けるのが基本ルールとなっている。


 対応する知識系のスキル(例:草花なら『薬学』や『サバイバル』)でも可能だが、どちらにしろレベルが高くなければ確実に失敗する。まあ写真越しですし。


 鑑定して成功すれば経験値が入り、それを返せば依頼した側も経験値が入る。が、勿論制限付き。

 入る経験値は実際に見て鑑定した場合の一割以下。依頼側はさらに低い。また、それが広く知られている品であったり、スクショを上げてから既に何度も鑑定されている場合はほぼ皆無。


 その為、主に経験値稼ぎよりも「何処でどの様な効果のアイテムが発見されたか」を確認するために利用されている。

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