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#14 人それを地雷と呼ぶ

■ステータス

 名前:ハルカカナタ

 種族:機人

 称号:優しき旅人


 ATK:D-

 VIT:D-

 INT:D-

 MND:D-

 DEX:D

 AGI:D

 LUK:-


■スキル

 ・ラビットジャンプK Lv.1

 ・ブースト[種族専用] Lv.1

 ・釣り Lv.1

 ・細工 Lv.1

 ・探索 Lv.1


■種族特性

 ・視覚拡張 Lv.1

 ・機能拡張"フレンド通信" Lv.MAX




「微妙……に変わっているなぁ。称号もちょっと恥ずかしいのに変わってるし」


 リンゴもどき二個目を齧りながら私自身のステータスを眺める。

 表示されたそれは、やはり森に入る前と比べて確かに変化していた。称号にステータス、後は取得スキルも。


 まずは称号。

 街で見た時は"初心者"だったが、今では全く別の物に変化している。"旅人"はそのままの意味だろうけど、"優しき"とはMobと戦闘を行わなかったからだろうか? いや、それなら生産職もそうなっている筈だから条件は別だろう。


「……くぅん?」

「……?」


 ふと、膝上で伸びている子犬と木の上でまだ食ってる妖精に目をやる。もしかしてMobと仲良くする事、かな? それともこの称号があったからオオカミ達とも仲良くなれたのか。

 ま、いっか。考えても答えは出ないので次行こう。


「まだリアル時間じゃあまり経っていないんだけど、ステータスが上がってるな。スキル補正か……って何この"ブースト"って」


 見た事ないスキルに首を傾げる。並び替えをしていないのでラビットジャンプKから釣りをするまでなんだろうが……素直にログ見よう。

 従来のMMOとは違うので会話ログは残らないが、システムメッセージや運営からの連絡などはテキストログとして残る。ステータスを一度閉じてからシステムログを閲覧して過去に遡っていく。


「……? んー? ……あ、これ、かな?」


 そう量は無いのだけど、それでもしばらく探してしまった。理由は簡単で表示が他と違っていたからだ。


 >>――install:New Function "Boost"......Complete


 タイミングはラビットジャンプKを取得した直後で、あの時は突然スキルを習得したことに戸惑っていたから見逃していた。このいかにもロボットっぽくした適当英語は開発の趣味か。


 スキルの詳細はと。

 なになに、一時的なステータスの超大幅アップ? スキルレベルの増加により上昇率が増加、か。

 ――ただしHP・MPを毎秒2%消費で最大100秒まで。しかもスキルを使った後は、使用した時間の倍の時間だけステータスがダウンする。クールタイムは使用時間の20倍。


「これはまた……まさに切り札って感じのスキルだなぁ」


 ただし使い勝手は"私にとって"微妙と言わざるを得ない。

 何故ならこのスキルはHP・MPが持続的に減っていくので、最大まで使おうと思うと途中で回復するに他はない。が、ソロである私が戦闘中にそんな回復を行う余裕があるかと言えば多分ないだろう。

 しかも使用後にクールタイム以外にもデメリットがある。パーティを組んでいるならメンバーが補助を行うところだけど、私の場合はスキルが終わった瞬間にアウトだ。ステータスが上昇した状態から一気に下降するので、感覚的な振れ幅が大きすぎて多分まともに動けない。

 それ以前の問題として、回復手段もほとんど持っていないことなんだけどねー。


「リンゴもどき食べても回復するけど、戦ってる最中にそんな暇はないしねえ」


 たまに戦闘中でも料理アイテムを食べられるゲームとかあるけど、あれは実際どうやってるんだろうなと思わなくもない。これもパーティ戦ならできなくもないんだろうけど……シュールだな。

 いやポット使うのも同じくショートカットしても面倒というのはあるけど、今はいいや。


 デメリットは大きいので通常ではあまり使うことがなさそうだけど、上手くいけば土壇場からの逆転を狙える有効なスキルだ。頭の片隅にでも置いておけばいいだろう。


「スキルは全部レベル1と。まだどれも覚えたばかりだし当然か」


 種族特性のフレンド通信は既にMAXとなっているので、これ以上成長の余地はない。ただ視覚拡張の方はレベルが上がるので、やはり暗視やフラッシュ無効以外にも色々出来そうだ。

 ……その内、目からビームとか出ないよね?


「ま、まあビームはいいとして。アイテムって今何持ってたっけ」


 ころんころんと膝の上で転がる子犬に、降りてきた妖精が抱き付いてじゃれ合っている。ちょっと落ちそうになるのを支えつつ、今度はメニューからアイテム欄を選択した。


「んー、さすがにアイテムは知らない間に増えてることはないよね」


 アイテムボックスにあるのは毛玉と釣竿と拾った水晶と、後は死に戻ったプレイヤーの遺品と言うかばら撒かれていた代物。前に確認した通り性能は良いけどデザイン的に付けようとは思わないアクセサリが3個に、回復率がどれも7割前後のポットが5個ほど。

 アクセサリはブレスレッドとネックレスとカフスなのだが、どれもちょっとゴツイようなデザインで今のアバターには似合いそうもない。ゲームとしては付けた方が良いのは確かなんだけどねぇ。


「それも一つのプレイスタイルという事で」


 実体化させていたアイテムをまたアイテムボックスに戻す。さて、あまりここにいても仕方がないので移動してみよう。

 子犬を地面に降ろし、妖精は勝手に頭の上へ。食べきれなかったリンゴもどきもアイテムボックスに突っ込み立ち上がる。


 ……ちなみに未だ湖からネス湖に帰れと言いたくなるUMAが首だけ出していたが、あえて触れずにいると悲しそうに湖へと沈んでいった。何だったんだアレ。



******



 少しまったりしていたものの、まだまだ日は高い。

 ゲーム内では昨日の様子から考えるとオオカミ達が帰って来るのは当分先。それまでは子犬を放っておく訳にもいかないので、どうせ連休だと思って森をのんびりと散策する。


 足下で元気に跳ね回る子犬を踏まぬように気を付けながら、湖をぐるっと回るように歩いていく。どうも釣りをした場所以外にも何本も川が流れているのか、網目のように森の中を張り巡っているようだ。

 そういえば掲示板には対空砲じみた鳥が生息しているとのことだけど――


「……ん? どうしたの?」


 ふと下を見ると子犬がおらず、少し戻った所で木を見上げていた。少し首を傾げていて、意訳するなら『なにあれ』という感じだろうか。

 私もつられて木の上に視線をやって……かなり納得した。


「なんぞあれ」


 手を伸ばせば何とか届きそうな高さの木の上、そこには"丸っとした"ではなく"丸い"鳥が鎮座していた。

 ……また変なのが出てきたよ。


 ぱっと見た感じ、無理に当てはめるなら一番近いのはニワトリだと思う。白い羽毛に黄色いくちばし、頭頂部の赤いのはトサカっぽい。

 だけど何処から見ても完全な球状なのでそもそも鳥なのかと疑うが、申し訳程度に羽があるので一応鳥類になる、のか? 飛んでる姿より毬のように跳ねている姿の方が想像できる鳥類ってどんなんだよ。アレか。

 少し太めの枝の上で器用に座っている鳥はサッカーボールより一回り大きいぐらいのサイズ。街で見かければぬいぐるみか何かと勘違いしそうな容姿だ。


「ビームぶっ放すらしいフクロウとかあの丸いのとか、このゲーム初めてまともな鳥を見たことがない気がするなー」


 何気に食用だったりするのか、なんて考えもよぎったけど、速攻でそれはないなと思い直す。いや、これだけアホらしいMobが湧いている森でこれだけ普通とかありえないでしょう。絶対何か油断したプレイヤーを確殺するような能力が備わっていると思われる。

 うーん、触ると爆発するとか? 違うのであれば掲示板にもあった、


「まさかとは思うけど対空砲ってアレのことか」


 それは川や湖を飛んで超えようとすると、どこからともなく音速で飛来して来るらしい。激突によるダメージは存外少ないものの、しかしそのまま着水してしまい魚とかUMAとかに食われてしまうそうだ。

 速過ぎて鳥であるらしいとしか詳細不明だったけど、アレ、なのかなぁ。


 一見ぬいぐるみの様な鳥。

 ぬいぐるみの様な。


「………」


 ……丸いけど、その分もこもこだよなぁ。


 …………よし。


「ちょっと触ってみようか」


 いや、うん、例えその対空砲としても、ダメージ自体は少ないらしいし。実は別Mobで盛大に爆発するとでない限りは大丈夫だと思いたい。

 頭の上で欠伸してる妖精とか珍獣を見る感じの子犬の様子を見ても害は無さそうなので。よいっしょっと。


 まだ見上げている子犬の横に立ち、そーっと木の上へ手を伸ばした。背とか踵を限界まで伸ばして届かせようと奮闘する。

 あと、少し、で――


「ぷぎゃっ!」


 ぽすん、と急に頭の上に重さが加わったと思ったのと同時、これまた上から可愛らしい悲鳴が聞こえた。何故かあまり首が曲がらないけど、見れば手を伸ばしていた枝にはもう何もいない。

 ……あ、これってもしかして。


 近くに生えていた水晶に自分の姿が映っているので確認してみると、やはりそこには予想通りの光景があった。


「~~~!」


 私の頭の上。

 でっぷりとした球体の鳥と、それに乗っかかられてジタバタしている妖精の姿が映っていた。


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