八話 じいちゃん
「おはようございます〜」
俺たちの朝食が終わった頃、間の伸びた声で起きてきたのは相模にいだ。相模にいは朝に弱いので毎朝こんな感じだ。いつも通り夜遅くまで練習してたのかな?
「はい、おはよう。シャキッとせい。だらしない」
「相模にいおはよう」
「にい、おはようございます」
それぞれ挨拶をすませ相模にいは席についた。
「相模にいは今日何か予定あるの?」
食事中の相模にいにもし予定がなかったら一緒にじいちゃんのところへ行こうと思って聞いてみた。
「うん、昨晩弦が切れてしまったから町の楽器店に行くつもりだよ」
そっか、残念。
「了解。俺たちは前から言ってた通りじいちゃんのお見舞いに行って来るよ。町だったら同じ方向だから途中まで一緒にいかない?」
「ごめんね。ぼくは午後から出かけるから一緒にはいけないよ。今日はその方が空いてるしね」
「ん?わかった。お昼は外で取るつもりだから」
「はい、きをつけていってらっしゃい」
朝のしたくを終え、午後10時半。俺たちはじいちゃんの家をでて病院へ向かった。
『パチ、パチ』
俺たちがじいちゃんのいる病室の前まで来ると中から囲碁や将棋をしているような音が聞こえた。
「失礼します。じいちゃん元気かー」
「うーん、さすが斎藤さん。また負けっちまった」
「いやいや大河さんも日に日に差が縮まってきてすごいと思いますよ。本当に一週間前が始めてなんて信じられないぐらいに…おっ、お孫さんかな」
俺たちが病室入るとちょうど囲碁の対戦が終わったとこだった。
部屋の中はいかにも病室って感じの真っ白い壁紙に囲まれていた。ベットはじいちゃんのいる窓際に2つ。通路側にも2つの4人部屋だ。
今病室にいるのはじいちゃんとじいちゃんと囲碁をしていた斎藤さんだけだった。
「ん?おお、おお千歳か。よくきてくれたね」
斎藤さんが俺たちにきづくと遅れてじいちゃんも顔をあげた。
「じいちゃんこんにちは。お見舞いにきたよ」
俺がそういうと斎藤さんが腰をあげた。
「そういうことなら私はそろそろおいとましようかな」
「おお、そうかいまたきておくれ」
またきます。そう言って斎藤さんは出て行った。
「さて、千歳。よくきてくれた。ありがとよ」
「うん。じいちゃんは思ったより元気そうだね」
「それがわしの取り柄じゃからな」
「はいはい。自分の年を考えた範囲で元気でいてね」
「あー。そのことは千鶴に耳にタコができるほどいられとるわい」
そう言ってじいちゃんはかるく耳を塞いだ。ちなみに千鶴とはばあちゃんのことだ。俺や母さんと同じ"千"の持ち主だ。
「ところで千歳。ドアの前に立っている女の子は紹介してくれるのかい」
じいちゃんはそういうとドアの方を見た。
「うん。そのためにもついてきてもらった。紹介するよ。俺の彼女のユキだ」
「お初にお目にかかります。冬木 ゆきと申します」
ユキはぺこりと頭を下げた。
「おお。これはこれはご丁寧に。知っていると思うが磯辺大河と言います」
ばあちゃんの時はスルーしたけど落ち着いたユキはなんだか新鮮だな。大和撫子みたいで綺麗だ。
「で、千歳」
『ビリッ』
一瞬で空気が変わったのがわかった。
俺は覚悟を決める。
「まだ自分の力でかねを稼ぐこともできんお前がなぜ彼女など作った」
さあ、戦いの始まりだ。