五話 悲しみのメロデイ
今月3つ目ラスト!
「あー疲れたね〜」
海の家での仕事も終わった帰り道、夕焼けが沈む海辺の道をユキと俺は二人で歩いていた。
「あんまりはしゃいで落ちるなよ」
一応防波堤のうえを歩くユキに声をかけておく。橙色につつまれた彼女は夏の妖精のようだった。
そんな時俺の耳がとある音をとらえた。悲しい、助けを求めている。そんなメロディだ。
「なあユキ、なんか聞こえないか?」
ユキに聞くと彼女は不思議そうな顔をして何も聞こえないと答えた。嘘を言っているわけではないだろう。そもそも彼女は嘘をつけない性格だ。
まだその悲ししいメロディは耳につく。
気がついた時には俺はユキの制止を聞かず走り出していた。
「はぁっ、はぁっ」
息を切らして走り、たどり着いたのは岬だった。そこには一人の女性がただ海を見つめてバイオリンを奏でていた。その姿は堂々たるもので、ただ一つ違和感があるとすれば彼女の頬を流れる雫だけだ。奏でられるメロディーはさっきから聞こえていた悲しい音色だ。
どれくらいたったのだろうか、俺はただ彼女の顔をを見つめ耳をすませていた。
唐突にバイオリンをおろした彼女はしっかりとこちらを正面から見据えた。バイオリンを引いていた時と同じく堂々とした姿で。涙が幻のように感じられる。
「君、女性のこんな顔まじましと見るのは失礼じゃないかい」
突然彼女が発した言葉に俺はすぐに返すことができなかった。
「え、あっ、ごめんなさい。そんなつもりじゃ」
「じゃあどんなつもりなんだい。ナンパかな」
いきなり彼女の口から出たナンパという言葉に俺は面食らったが何とか顔に出さなかった…と、思う。
「…悲しい、助けを求めるような、そんな音色が聞こえたからここにきたんですよ」
正直に俺は答えた。そして続ける。
「何か悲しいことがあったんですか?もし良ければ聞きますよ。力になれるかもしれないし、心が軽くなるかもしれませんから」
彼女は少し笑った。
「君は優しいんだね。…じゃあおねーさんの愚痴を聞いてもらおうかな」
一泊おいて彼女がしゃべろうとした時。
「チー君!!」
ユキが追いついてきた。
「ひどいよチー君、私をおいて行くなんて」
「…おやおや彼女さんかな」
「えーっとはい彼女です」
「ふふ、君達は仲がいいんだね。でも君、彼女をおいて行くのは感心しないぞ」
ユキよ、間が悪い…俺がおいて行ってしまったのが悪いんだが。
「じゃあおねーさんはここら辺で退散させてもらうよ。君たちとはまた会える気がするね」
そう言って彼女は去って行った。
話、ききそびれちゃったな。
太陽はすでに水平線の向こう側に去っていた。
すいません来月は予定があって3話出せないかもしれません
謝罪
訂正
サブタイトルが算用数字と漢字が混ざっていたので訂正しました。