恋は早い者勝ち
僕は人を大好きになったことがある
恋の落とし穴にまんまと落ちたのだ
そのときの僕の気持ちはすごかった
あの人を思う気持ちは世界中のだれにも負けないと思った、世界にどれだけ人がいるか知らなかったけど
あの人のためなら死ねると思った、実際に死ぬのは怖くて体が動かないから無理だけど
僕は何でもできると思った、実際には何もできなくて何度も涙を流したけれど
「行動が伴っていないじゃないか!」と笑う人がいるかもしれないけれど、恋をしていたときの僕の心は、どんなにエライ政治家よりも、勇敢な勇者よりも、科学を発展させている大天才よりも、強かった…………見せてあげられないのが残念だ
そんな僕が、初めて人に好きだと言われた
残念なことに、僕のことを好きだという人は、僕の好きな人ではなかった
僕は、とてもツラくなった
好きじゃない人に、好きと言われる
好きな人に、好きじゃないといわれる
僕が好きなあの人に断られたとき、僕は「どうしてこんなに好きなのに僕のことを好きになってくれないんだ」と思った
でも、好きじゃない人に好きと言われても、どうしようもないよね
だって、好きじゃないんだもの
僕のことを好きだと言ってくれている彼女の心も、僕があの人に恋していたときと同じように、世界中の誰にも負けないくらい強いものだと思う
もし仮に彼女の心が実際に目で見えるとしたら、その強大な姿に僕はしょんべんをちびるくらい、強い思いなんだと思う
恋ってそういうものでしょ?
でもさ、どんなに好きでも、意味ないんだよね
見えないんだよ”好き”は
目に見えないから、わかんないんだよ、その強さが、深さが、尊さが、わからないんだよ
”好き”は心の中にしかない
だから、本当の”好き”をしるためには、心と心を通わす必要がある
心の中でしか、”好き”は見えないんだ
だから、僕がどんなにあの人のことを好きでも、見えてなかったんだ、伝わってなかったんだ
それはつまり、僕はあの人と心を通わすことができなかったということ
僕はまだ、その方法を知らないけれど、心と心を通わす方法が、きっとあったんだ
僕はそれをできなかった
ただ好きというだけで、終わっていた
口先だけの気持ちを伝えて、すべてを伝えた気になっていたんだ
もっと、もっともっと! 時間をかけて、君の心に、僕の心を近づける努力をするべきだった
まだ、間に合うかな?
「ごめん、君とは付き合えない」
僕は僕のことを好きになってくれた彼女の告白を断った。一刻も早く、大好きなあの人のところへ行きたかったから
僕は振り返り、その場を直ぐに走り去ろうとした、しかし
「ちょっと待ってください!」
腕をものすごい力で掴まれた
「私、諦めませんから! 私の気持ちがちゃんとあなたに伝わるまで、あなたのこと離しませんから!」
忘れていた、”恋する気持ちは強大”だった
それは僕だけじゃなくて、みんな一緒だ、僕はけして、主人公ではないのだから
さて、僕の気持ちがあの人に伝わるのが先か、彼女の気持ちが僕に届くのが先か
恋は早い者勝ち
さぁ、今すぐ出かけよう
先を越される前に