01 始まってすらいなかった世界
銃の描写とかあるんですが、素人なので、間違ったりしてたらゴメンナサイ。
初投稿ですし、文章もかなり拙いと思いますが………。
楽しんでいただければ幸いです。
……静かだ。
まるで朝凪の時の海辺のような閑散とした空間で、少女は思った。
本当に静かだ。
静かすぎて、「本当に自分は生きているのか、存在しているのか?」などという滑稽極まりない妄想に至ってしまった。くだらない。心の底からそう思っているつもりなのだが、人とは不思議なものである。
右手を胸の前に出して、グーパー、グーパー、チョキ、と。
自分の存在を確かめようとするのは私の心が弱いからですか?
とかなんとか、詩人的にふけってしまう自分に心底うんざり。
そんなの仮に解がNOだとしても自分が知覚できるわけでもないだろうに。神学論のごとく、時間の無駄。だが時間つぶしには丁度いいのかもしれない。グーパー、グーパ、チョキ………。
……天気は快晴。まるで、光の庭で雲が遊んでいるようであった。
ところで、じゃんけんとはいったい何時代からある遊戯なのだろう?
日本古来のものなのか?いや、似たようなものはきっと世界各国にあるんだろうな。
子供の時には事あるごとにじゃんけんじゃんけん騒いでいたが………これも歴史あるものなのだと考えると感慨深い。長い年月の間に伝わってきたんだろう。
うん、じゃんけんか、素晴らしいじゃないか。
………私達は、どうなる?
ヒーロになんか、英雄になんかなるつもりはない。興味すら微塵もない。歴史に残りたいだなんて、思ったことすらない。
………だけど。
このままだと何も残らないのかもしれない。
不安になって、隣を見る。
彼が立っていた。
共にここを訪れたのだから、いてくれなければ困るのだが。
彼は私の視線に気づくと。
特別な、それこそとってつけたような言葉など並べず。
そのまっすぐな瞳を。
私に向けて、微笑んでくれた。
………大丈夫だ、確信できる。私達は、きっと誰かの記憶に残るはず。
そして。
そんな彼の手には、銃。しかも機関拳銃だ。
狭い場所、室内などでの制圧力が重視され、自動装填が可能、しかも連射だって出来るという優れものではあるが、反動が半端ではないためそれ相応の訓練を受けないと手が吹っ飛ぶ。
そんな危険な暴れ馬を、彼は持っているのだ。そしてなにより、
そんな危険な暴れ馬を、使うような事が起こりませんように、つい少女は祈ってしまった。
再び彼を見る。
彼も私の方を見て、少し考えてから、ほんの少しだけ自嘲するような笑みで、こんな時間がもっと続けばいいのに、と言った。
………あぁ、神様。こんな時間がもっと。もっと続きますように。
それは、神様に対する冒涜だったのかもしれない。
すぐ近くで響いた銃声が、私には神様の笑い声に聞こえた。
断末魔の悲鳴とともに、
「夢」は、幕をとじたのだった。