7
61
鍋の音
ことことと
一人の部屋に響く
秋の昼下がり
ふうわり漂う幸せな香り
62
雲間にみえる日の光が
部屋へと差し込んできて
眠る子の髪を輝かせる
まるで光から逃れるように
眉を寄せ唸りながら子はごろりと逃げた
63
暖かいね
暖かいね
包まれて
抱きしめて
そっと囁く。
愛してるよ。
64
眠れ眠れ我が子よ眠れ
安らかに穏やかに幸せの中で
暖かな布団は貴方を包み
暖かな手は貴方を撫でる
眠れ眠れいとし子眠れ
目覚めの朝までまだ遠い
65
繰り返される毎日を
大事に楽しく生きることができる
そんな人でありたいと願いながら
今日も私は家事をする
66
たった一時間
布団の中にいたのは
その短い時間に過ぎないのに
穏やかで暖かい毛布の感触に
幸せな気持ちで気が付けば微笑む
67
抱きしめて笑って
好きだよって何度も告げて
それでもどこかで恐怖するのは
きっと
自分に自信が無いから。
ごめんなさい、なんて。
卑怯過ぎていえない。
68
寒いからって言い訳して
ぎゅっと抱きしめて
それでやっと安心する
いつかするりと
この腕の中からすり抜けてしまう人よ
69
大好きなものを一杯あつめて、それだけで回りをみたして、そうすればきっと毎日幸せ。現実にはそんなことありえなくって、嫌なものも目にはいっちゃうけど、だけど、それでもできるだけ好きなものに囲まれていれば、嫌なものもいやじゃなくなるかもしれない。なんて、ね。
70
夕暮れに
ひとりぽつんと立ちつくす
すすむ道すら
決められぬまま