48
471
溢れ出る感情は
とても強く激しくて
息ができないほど苦しいけれど
引き結ばれた唇から
こぼれ落ちるのは ただ
静かな吐息ばかり
感情を言葉にするすべを
いつから私は
失ってしまったのだろうか
代わりにほろりと
ひとしずくの涙
472
言葉の裏と
態度の裏に
どんな思いがあるかなんて
そんなこと
言葉にされなくて
態度に出されなくて
わかることが出来るほど
私は優しくは、ないのです。
473
まいおちて
地を染める
うすべにの
ゆめのあと
はなびらの
はかなさよ
474
心の中から
じわりと湧き上がる激情は
ふいに
抑えがたい狂気とともに
体の中から吐き出されて
苦しいと
泣くことも出来ずに
ひとり
うずくまる
475
あなたにひとつ
わたしにひとつ
オレンジの味と
りんごの味と
それぞれに味わいながら
顔を見合わせて
そっと微笑む
ふたりだけの
ちいさなひみつ
476
夕暮れの光のなかで
物悲しくひとり
ひとり呟く言葉は
はたして
風に紛れる
その声のように
思いもいっそ
紛れてしまえれば
穏やかな夜が来る前の
揺らぐひとときの感傷
477
窓の外
激しい風の音を
ひとり聞く
その寒々しさに
春なのに、と
呟く声を聞く人もなく
478
春の嵐の
風の音に
震えてそっと忍びこむ
小さな我が子の温もりを
胸にいだいて眠る夜
479
願うのは
ただ
一欠片の幸せ
青空に太陽が輝くように
太陽に若葉が透けるように
ささやかな
小さな
そんな幸せ
480
疲れ果てて眠る貴方を
そっと抱きしめて
その温もりにただ
癒されたあの頃
疲れ果てて眠る私は
そっと我が身を抱きしめて
遠く離れた貴方を
ひとり
静かに思うばかり
命ある限り
思い続けるばかり