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山の
緑の
その空気を
体中に吸い込んで
しっかりと
その清浄を
充電した日
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大きな樹の
その幹に
ひたりと頬寄せて
静かに耳を澄ます
子供とともに
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なにがあるわけでも
なにかおこるわけでもないけれど
それでも
私にとって山は
とても大事な場所なのです
434
命の
風の中に感じる
その清涼なる輝きと
しんと染み渡る
鋭利なる響きを
何よりも愛しむ
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きっと
そこが私の
帰る場所
魂の
眠る場所
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だらりと
力の抜けたその体を
横たえたまま
見上げた天井の
模様を数える日々
遠い昔の思い出
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朝焼けの
空の色を
二人並んで
じっと見詰めた
初めての朝の記憶
438
遠い夢を
つかめないまま
今もなお
焦燥の中で
ただもがく人よ
439
揺らぎない思いを
瞳にのせて
じっと見詰める
その人の
弱さを知る時
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小さな掌を
握り締めて
静かに
祈る
幸せであれ、と