40
391
いつだって泣かなかった
いつだって微笑んでた
だから強いんだって
そう思ってた
その裏側の涙に気づかぬままに
392
繰り返す 無限の夢
蘇える 白亜の幻想
行き先も 解らぬまま
ただすすむ 幻影の迷宮
夢か幻かもわからぬままに
393
知らないと呟く
解らないと呟く
考えたくないから
わかりたくないから
そっと目を閉じて耳を塞ぐ
――逃避も自衛の手段なのだ、と。
自分に言い訳をしながら。
394
信じられない
信じたくない
だからひっそりと心を閉ざして
けれど、本当は
誰よりも何よりも
信じたくて、信じていたくて
もがいているのかもしれません
395
まもりたいと
ささえたいと
思える人がいる
そのことが私に
生きる力を与えてくれる
――それはなによりも穏やかな情熱
396
行きずりの
他愛のないささやかな触れ合いが
暖かくて愛しくて
一期一会の言葉の意味の
その優しさを知った日
397
削られてゆくその山は
果たして何を思うのか
すでに平らな形して
山のように先のない
その場所の名を知るものは
見るたび驚くその山は
果たして何を思うだろう
398
哀しい、と
呟いた言葉は
小さくて
けれど隣の
私へとはっきり響いた
399
過ちのない人が
もし存在するならば
私は
その人を恐れるだろう
ただ、過ちを侵したことがない
ただその一点のみで。
400
まるくまあるく
両手を抱え両膝を抱え
顔を伏せ耳を閉じて
何も見ず何も聞かずに
ただ胎児のように眠る
――再び歩き出す日の為に