4
31
夜に想う。――貴方は今、どうしていますか? 穏やかに眠れているでしょうか。それともまだ起きているでしょうか。遠く離れて、ただ、貴方が安寧の中にあることを、心より祈るばかり
32
秋の夜の
通る風の音
涼やかに
眠りを誘う
穏やかな刻
33
愛とはうつろうものというけれど
そのうつろいをまのあたりにして
そのあまりの儚さと寂しさに
切なく思う心は
けれどどこか静かな諦めを抱えている
34
肌寒いこの夜に願うのはただひとつ
もしも適うならばどうか貴方
その両の腕に包みこんで
強く強くこの身を抱きしめて
そのぬくもりを分けてください
35
寂しいよ、と呟いた
寂しいよ、と囁いた
誰もいない部屋の中
薄暗い闇の中
音は静かに解けていった
36
たとえば、もし、今貴方がここにいてくれて
たとえば、もし、今も貴方が私のもので
たとえば、もし、今も私が貴方のもので
もしも、そうであったならば
この痛みはなかったのだと、一人涙する
37
哀しい夕闇は
ひたひたと
しんしんと
寒さと共に
この身を苛む
38
秋風を心地よく感じる中に
ふわりと混じる秋刀魚の香り
どこか遠くで焼き芋屋の声がして
空にはうろこ雲が漂う
これぞ秋としみじみ思う
39
美味しいねって笑うから
美味しいよって笑い返す
そんなささやかな幸せが
いつまでも続きますようにと
笑顔に隠して一人願う
40
たとえば、お昼の食事だとか
たとえば、午後のお茶のお供だとか
そのときどきに口にはいるそれらは
ささやかだけれど
ほんのりと心を満たしてくれる。