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恐怖は
じわりじわりと
あとから心を蝕み
そして
体を蝕むのだと知った夜
292
夕暮れのひとときを
縁側で
微笑みながら過ごす
夜闇せまる夏の涼風が
ちりんと風鈴を鳴らしていった
293
掌につかめるだけの
その願いを
しっかりと握り締めて
続く道を見据えながら
私は歩き続けるのです
294
夢路を渡る夜
闇夜のなかでひとり
涙を隠して
ほのかに香る
潮の音を聞く
295
手を伸ばして
救いを求めるように
もがきながら
求めるのはただ
暖かな温もりばかり
296
風ゆれるカーテンの
その揺らぎに
広がる色の深さは
どこまでも
海の底に揺蕩うように
297
果てのない関係など
どこにも存在しないのだと
笑う貴方の笑顔が
苦しくて
いつかの果てまで
どこまでも
ともにあれたらと
夢見て いた
298
笑って、笑って笑って
苦しくても哀しくても
笑って、笑って笑って
どこまでも笑顔でいる
――笑顔だけを、覚えて、いて。
299
流れ巡る血潮の
その脈々とした繋がりを
寿ぐか呪うのか
断てぬ縁は
幸いであればと願うばかり
300
約束しよう
ずっと愛していると
たとえ嫌われようとも
拒絶されようとも
小さき君達を愛し続ける、と。