20
191
手を伸ばせば
足を踏み出せば
きっと届くのだろうけれど
その勇気がなくて
祈るように組んだ手は
ただ静かに震えるばかり
192
ただ、そこにいてくれればよかった
ただ、それしか望んでいなかった
だから、言葉を伝えた
ひたすらに、好きだと伝えた
ただ、そこにいてくれればよかった
それしか、のぞんでいなかったのに
返された想いに戸惑い
私はただ
逃げるしかできない
193
すきだよと笑って
すきだよと繰り返して
だけど
アイシテル、なんて
それだけは、いえない
194
雨は嫌い
降り続く雨は、まるで
涙のようで
泣けない私は
だから
雨が、嫌い。
195
どれだけ想おうと
どれだけ願おうと
言葉にならない
伝えたい言葉があるはずなのに
けれど
私のうちの言葉ではたりなくて
ただ
想うことしか
願うことしか
できない苦しさ
196
じっと
涙を堪えて
見詰める瞳を
震える唇と
縋るようなその瞳が
言葉にできない思いで、ただ
揺らぐのを
――抱きしめたくても
できないもどかしさに
静かに、目を閉ざす
197
大声で
涙を振り絞りながら
泣き続けるその幼子の
魂の叫びを
両の腕で抱きしめる
眠りに落ちるそのときまで
198
こころが哀しく乱れるのは
きっと
そらがないている所為
199
哀しくて苦しくて悔しくて腹立たしくて
どうしようもなくて
助けて欲しいと願いながらも
誰もくるはずがないと
自分で自分を抱きしめて
そっと微笑んだ
200
怒るのも悲しむのも
笑うのも喜ぶのも
どれもこれも少しでいいと
揺れる心をもてあまして
ひとりため息を漏らす