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貴族転生、チートなしで成り上がれ!  作者: 榛名のの
第2章 学園編
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第5章 覚悟

緑の月は去り銀の月になった。

 お勉強はマーヤ語を中心にいろんな言語を話せるように努力している。

赤休みまでにカタコトでいいから、マーヤ語をコンプリートしたいのに、チョコレート菓子を教えてくれと菓子職人達が遠方からわざわざやってくる。

 仕方なく3人で昼から教える。

たまに真面目な人もいるけど、貴族家のコックなんか最悪だ!

 皆、おしなべて態度が悪い。

たまーに、チョコチップマフィンのレシピを習いに来る人がいるけど、皆、アーモンドチョコレートのレシピを知ったらオーガの首を取ったかのような勢いで帰って行く。

 その後、発展したような話は聞いてない。

そうそう、そういえばケプラン商業国のヒューズ商会から、木箱いっぱいのアメ細工が届いた。リチャードさんから手紙が入っていてチョコレート菓子も普通のお菓子も信じられないくらい売れて菓子職人を増やして対応してるという。寝るヒマが無いくらい儲けてると書かれていた。この300個くらいあるアメ細工は応用編のレシピまで教えたお礼らしい。

 お礼のお返事を書くと、今度はピオさんからお手紙が届いた。

 レシピの白金貨1枚分は1週間経たない内に取り戻せたらしい。慌てて菓子職人を10人雇い入れ空いてるスペースでイートインを始めたが、ケーキを幾ら焼いても追い付かないくらいの人気でカフェをまず、関所の近くで始める為に宿屋を買って改装中だという。

 赤休みにケプランに来て新しいレシピを教えてくれと締めくくってあった。

 ピオさんに良いよとお返事を出した。


「マーヤに行く前に寄ってく?」


「そうだね、3泊くらいでゆっくり教えようね」


「しかし、アメ細工はトビアス様に持って行って迷惑ではなかったでしょうか?」


「ん?珍しいからお茶会を開いて商人達に分けたって言ってたよ。俺達の後ろ盾なんだからたまには、良い思いもさせないとね」


「あ~、青月の星が大量注文が入って大パニックだったアレかぁ。僕らに気を使ってくれたんだねぇ!」


いっそ、頼んでくれた方がよかった!


「赤休みはレッスン休止のお知らせを商業ギルドにしておこう!」


穗高様から日本語で手紙が来た。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

よう!毎日のレッスンにウンザリしてるって風の精霊から聞いてるぞ。お客様は金貨だと思って丁寧に扱えよ!

 マーヤに来てるんだけどコーヒー豆が出荷されてるよ。順調だ。

チョコレート工場も赤休みまでに出来るから支払いの覚悟を決めろよ!

 頑張って菓子職人達にレッスンしてお金を毟り取れ!

                穗高

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「マーヤのチョコレート工場、赤休みまでに出来るって」


ティムとチェンバーは緊張した。


「「いくら?」」


「ははは、そこまで書いてねぇ。ただ、菓子職人達から金を毟り取れって書いてあるからかなりのお値段なんだろうな」


あ、そうだ。


「ごめん、俺、明日ビンガ王国まで行って来るから、2人で菓子職人達に炎のレッスンをよろしくお願いいたします!」


「ビンガ王国でも菓子職人達から毟り取れるかなぁ?」


「ビンガ王国は菓子職人の育成からしなくちゃならないからやらない!」


「「ええーっ!そこまでヒドいの?」」


「ヒドいの!問・題・外!」


「そっか、でも、菓子職人の育成もやってみたいな」


ティムのひと言にGoサインを出す。


「やってごらん。俺達も協力するから」


チェンバーがノートをティムに渡す。


「菓子職人育成計画書をこれに書いて私に赤休みまでに渡しなさい」


ぎゃああああーーーーっ!!


ウカツな事言うからだよ。ティム。


翌日は授業が終わったらリチルのエルフの屋敷に行きエルフの里に転移。すぐにサイヴァンに転移。デンテに差し入れのケーキを買い、デンテの工房へ。

 珍しい。店が開いてる。


「ん?坊主何しに来た?」


更に珍しいことにまともな格好をしてる。


「ナナ様のお使いでバレッタ買いに来ました!これ、ナナ様からです」


「ありがとよ!バレッタ幾ついる?」


「4つ、銀細工のやつ。あと、妹の一人が誕生日が今日何だって。ネックレスかブレスレットを見繕ってくれって。値段は銀貨1枚までで」


「ほお、何才か知ってるか?」


「14才」


「成人前なら、水晶だな。ナナ様の妹ならさぞかし可愛かろ。こんな感じかな?バレッタはアゲハチョウ柄しかないけど、仕方ない。持ってけ!全部で銀貨5枚だ!箱はオマケで付けてやる!」


慣れた仕種で梱包を終えてお金を貰ったらサッサと俺を追い出す。黒光りする馬車が店の前に止まった。貴族だ!

 略式礼してやり過ごす。店の中に入ったら、急いで離れる。

 貴族なんて百害あって一利なしだ。乗り合い馬車に乗りエルフ達のお屋敷に行き、また、エルフの里に転移、稔司様が待っていてお寿司とフルーツバスケットを持たせてくれた。


「ありがとうございます!」


「今日は全員揃っているみたいだから、気をつけて」


「ええーっ?!シルフィもいるのかよ!」


「何やら駄々をこねてるようです。穢らわしくて何を言ってるかわかりませんが、里の事をどうもいってるらしいので、ナナ様になってから行って下さい!」


人魚の涙を口に入れられた。慌てて服を脱ぐ。魔法カバンからナナ様の服を出して着る。真っ赤なチュニックはちょっと派手だけど、ベージュのズボンが控えめなので、よしとしよう!

と、思ってたらエルフの里の使者を表すマントを格好よく着付けられた。


「いってらっしゃい」


その言葉と同時にビンガ王国、王都のダウンハウスの前に転移した。


玄関のノッカーを鳴らすとデュバルが出て来た。


「ナナ様?!お久しぶりです!今日はセリス様のお誕生日会を開いております。さ、どうぞ!」


食堂にはサラ以外の家族が集まってケーキを食べていた。


「セリス様、お誕生日おめでとうございます。これは私からのほんの贈り物です」


ネックレスの入った赤いリボンがしてある木箱をセリスに手渡すと、セリスは喜んで頬を上気させている。


「見ていいですか?ナナ様」


「いいですとも、どうぞ」


見てる間に魔法カバンから寿司とフルーツバスケットをテーブルの上に出したら皆でつつき始めた。


セリスは星銀花のネックレスに夢中でテーブルの上の惨状に気付いてない。

つけたいらしいが留め金具が外せなくて苦心している。

 俺はセリスの背後に回り、ネックレスを付けてあげた。


「ありがとうございます。ナナ様大好き!」


いい子いい子。髪は香油がついてるから、背中をポンと叩いて今度は5女のソーニャの所に行く。

 初めてアールディルに行った時、お土産を皆に買って来たのだが、シルフィにバレッタを奪われたまま、本日を迎えた。


「ソーニャ様。約束していた髪飾りを持って参りました。どちらがいいか、選んで下さいませんか?」


ソーニャはお寿司を飲み込むと、鳥のバレッタと蝶のバレッタを見比べ蝶のバレッタを手にした。


「ナナ様、ありがとう」


「お付けしましょうか?」


「お願いします!」


擦り切れた組み紐で括られてるハーフアップの髪を解き改めてハーフアップにして蝶のバレッタで留める。


「よくお似合いですよ。ソーニャ様」


7女のアリス、6女のイライザ、3女のスーシャに次々蝶のバレッタを付けてやる。

そしてセリスには鳥のバレッタでいいか聞くとセリスはシルフィにあげてくれという。


「嫌です」


「お願い、ナナ様。そうしないと皆が八つ当たりされちゃうの」


あの女、ロクな事しねぇ!


「解りました。セリス様がそうおっしゃるならセリス様からの下賜として差し上げましょう」


仕方なくお誕生日席に座る親父とあの女の元へ行くと親父は早くも戦意喪失している。

 シルフィは俺の手からバレッタの入った木箱をひったくると中身を見て鼻で笑う。


「子供だましね!いらないわ。どうしても、って言うならもらってあげても良いけど」


「いえ。返して下さい。旦那様、奥様への贈り物にどうぞ。銀貨1枚した名工の品です」


「おぉ、ありがとう、ナナ。暮らしに不自由してないか?」


「毎日忙しいです。この女をウェルバー男爵領から出さないで下さいと、あれ程言いましたよね?!それとも、王都の誰かの所に嫁ぐ為に連れて来たんですか?」


「貴方、失礼だわ!「失礼ぃ?サッサとウチを出て行けババア!!失礼とか言って良いのは貴婦人だけだ!」ま、まぁ?!何ですって!私をエルフの里に連れて行きなさい!そうしたら暴言も許してあげるわ」


「はあ?何でお前のような毒女を聖域に連れて行けるか!よしんば行ったとして神罰喰らって死ぬのがオチだ!エルフの里の使者としては言う!シルフィ=ウェルバーはエルフの里に入る事を禁ずる!理由は、その心根が穢らしいからだ!覚えておけ、エルフ達はお前を歓迎しない!」


「まあ!まぁあ!まあ!よくも、私が穢らわしいなんて、言えたわね!顔も見たくないわ!貴方がロギ=ウェルバーとしても、ナナ=クロワッサンとしても、2度と我が家の敷居を踏むことを許さなくてよ!ウェルバーと名乗ることを許しません!!」


「シルフィ?!このバカ者が!」


シルフィは親父にビンタされて椅子から吹っ飛んだ。親父は俺に土下座して謝罪した。


「シルフィはどこかに嫁入りさせて片付けるから、許して欲しい!ロギをウェルバー家から放り出すなんて考えたことが無い!これからもウェルバー男爵家を支援して欲しい!」


そう、俺を追い出して困るのはウェルバー男爵領なのだ。

しかしながら、俺もさすがに頭に来た。

白金貨10枚を財布から取り出すと親父の手に握らせた。


「さよなら、皆さま。お世話になりました」


俺はロギ=クロワッサンとして生きる覚悟を決めた。

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