第5章 ケプラン商業国⑤
「「「眠い…」」」
1:00に寝て4:00に起こされ俺達3人はテンションが低い。
コックコートに着替えて厨房に行き、賄いを作らせて貰う。ミートパイだ。1人に11ピースあったら良かろうと5ホール焼く。
飲み物は白ワインにした。
「「「「「「「「「「「「「「パイ美味い!」」」」」」」」」」」」」
「果物のパイも作れます。この後アップルパイを作ります」
「「「「「「「「「「「「「「「「オオー!」」」」」」」」」」」」」」」
ピオさんが俺に付きっきりで質問してくる。
カスタードクリームの作り方。一度作らせたら天才菓子職人は、何とか作ってみせた。
エルフの里から送って来たリンゴをコンポートにし、パイ生地の上にカスタードクリームを塗り、リンゴのコンポートをらせん状に並べる。パイ生地で蓋をし、周りに沿って帯状の生地を張る。オーブンで焼く。
出したらアプリコットのジャムを塗る。
熱々を早速食べてる菓子職人さん達、俺達3人もちょっとだけど食べさせて貰う。
「ロギのカスタードクリームなんでこんなにおいしいの!」
「俺がアップルパイ好きだから!」
「それは仕方ないよねぇー」
「先生!店出ししていいですか?」
「いいよ。値段気をつけてね。季節外れのリンゴだから」
「了解しました!」
半分以上の菓子職人さんが昨日教えた菓子を作っている。
生チョコと、アーモンドチョコレートとオランジェットとフォンダンショコラとチーズケーキの作り方を教えたら昼過ぎていた。
おいしい物を食べたい!
ちょっと暑いからガスパチョとタラモディップ、ピタパンにオークのしょうが焼きとサッと油に通したもやしを詰めて、いざ実食!
「「美味しいよ!ロギ」」
「モヤシたまんねえ!」
「ロギ、モヤシ好きなの?まあ、おいしいよ、コレは」
チェンバーは2個目のピタパンに手を伸ばしてる。早い者勝ちだもの!負けてなるものか!
「先生方、レモン水どうぞ」
「フガフガ!モガモガ」
「「ティム!行儀が悪い!」」
最後のピタパンがさらわれて行った。
賄いを食べるとお別れの時が来た。
ピオさんと握手を交わし、リチャードさんとハグする。
「また、おいで」
お土産にリボンのアメ細工をもらって、馬車に乗る。
クラスメイト達がいるホテルへ移動すれば、3人部屋に通されてとにかく皆よく寝た。
起きたのは夜中で厨房を貸してもらい夜食作り。魔法カバンの中にブロックベーコンを見つけて厚切りにして、ジャーマンポテトをメインにした野菜料理を作ってたべた。
レモンのドレッシングが細胞を目覚めさせてくれる。
「そういえば、白金貨1枚はもらったの?」
「俺達が貰うとマズいよ。チョコレート工場長と契約書を交わして下さいって言ってある」
「今回の分に関しては全部もらってもいいと思う」
「チェンバーまで…。その国の法律があるから面倒なことは大人にポイしようよ!」
その時の俺達はアールディルに戻ったら、あんな悪夢が待っていようとは欠片も思っていなかった。
予想は出来たはずなのに、想像力が足りなかった。
その朝1番のドラゴン便で昼前までにリチルの街に帰って来た俺達3人は学園でマーヤの貧困問題とそれに対する支援策をレポートにまとめて書いた。
レポートはその場でティンドル先生に読まれ【A判定】をいただいた。
「君たちチアーズクラブは、本当に尊い行いをしているね。誇りに思うよ。銀曜日、金曜日が休みだから、ゆっくり過ごして下さい」
「「「ありがとうございます!」」」
職員室から出るとアリアナ先輩が仁王立ちで待ち伏せしていた。
「ちょっと話があるのよ!結構ナーバスな話よ」
アリアナ先輩に連れて行かれたリチルの街中にあったのは厨房しかない建物だった。まるで調理学校みたいだ。
「ここは?」
「まず、説明を聞いてくれるかしら?」
「「「はい」」」
「貴方達が旅行に行った翌日の夕方チアーズクラブ本部に菓子職人の団体が押し寄せたの」
ま・さ・か?
「チョコレート菓子を教えろって、スゴイ剣幕で!預けられた子供達がギャン泣きしてカオスよ!とりあえず旅行中だから、金曜日の朝に来てちょうだいって、帰って貰ったけど菓子職人が次から次へとくるから、サンドイッチ屋チアーズのエルフさん達にセトさんに取り次ぎとお手紙を頼んだの。それで出来上がったのが、この料理教室!出来立てピカピカよ!面倒臭い菓子職人はまとめてここで教えてちょうだい!」
チェンバーが俺の左肩にポンと手を置いた。
「1ヵ月ぐらいで終わりますよ!」
ティムが俺の右肩にポンと手を置いた。
「イヤだけどロギが可哀想だから手伝うよ」
何がどうしてこうなった!
とりあえずチアーズクラブ本部に帰ると本当に菓子職人達が、本部前でうろついてる。
こちらを見る。走って来た。
「アーモンドチョコレートを教えろ!」
「大金貨1枚になります」
「フン!いいから教えろよ!ごちゃごちゃ言ってんじゃねえ!!」
「商業ギルドに行って契約書と代金を支払って契約書控えと領収書を持って明日の朝8:00に中央広場東口に集まって下さい!」
出したくて出した訳じゃない大声に、奴らが怯んでる内に本部に入った。
そこには泣きそうになってるチビたち。大人はなんだか複雑そうな顔をしてる。
「お土産買ってきたぞ!集まれ!」
ワラワラと子供達があちこちの部屋から出てくる。
まずは、皆に渡せるお土産から。リボンのアメ細工とミニサイズの何かの魔獣のぬいぐるみ。アメ細工を髪に付けようとしてる女の子たちに食べ物だというと男の子達が喜んだ。
後は、皆で遊ぶ部屋に行き、大きなぬいぐるみとパズルをたくさん出す。盛り上がった。
お土産を配り終えた俺の肩をつかむ人がいる。
「クレーム処理がたったのアメ細工一つだけなの?」
チェンバーに行け!と目力で伝えたら、チェンバーはニッコリ笑ってアリアナ先輩の頬に口づけした。
「アリアナ先輩。ご迷惑お掛けしました。対応して下さってありがとうございます」
アリアナ先輩は頬を押さえて真っ赤な顔で「いやぁあああん!ウソォオオー」と言いながら2階に駆け上がって行った。
チェンバーは、唇を袖口で拭って俺達2人を睨み付けた。
「覚えてろよ」
「ほら、これ。チェンバー買おうかどうしようか悩んでただろう?」
魔獣のぬいぐるみを渡すとポカンとしてたが、受け取ってくれた。
「気を使わせたね。ありがとうロギ。ちょっと実家に帰るから明日の午前中はいない」
「あ、そうか!お菓子が悪くなるか。ゆっくりしてきなよ。紅茶のお礼に何か買ったら良かった…あ、家に居る女の人何人?」
「母さんと姉さんと妹とばあちゃんで4人、だけど?」
魔法カバンから、姉達用にデンテの銀細工屋で買ったバレッタの木箱を4つチェンバーに渡す。
「紅茶のお礼。渡しといて」
「何のお土産です?ショコラ買ってたんですか?」
「そう!溶けない内に渡してね」
今夜の内にミシュル衣料品店を呼んでチビたちと本部の従業員達に2~3着づつ、買い物させて気鬱を吹き飛ばそう!
買い物会はお財布が涼しくなった。