第4章 マイペースで行こう!②
◆○◆○◆sideナナ(ロギ)
6班、敗者復活戦組改めて7班は、1週間経った今、徐々に仕事を覚えている。
簡単な菓子なら任せていいくらいには仕上がってきた。
7班も人気商品のチョコチップマフィンとプリンの作り方を覚えたみたいで、6班と上手く采配して疲れが貯まらないように作業を進めている。
今のところ神罰を受けた者はいないようでレオも俺もホッとしている。
しかし、菓子屋ナビードとレシピを分かち合ったのに、チョコチップマフィンは以前の数倍の勢いで売れてる。
正直怖い。6班と7班のおかげでクッキーやマドレーヌなどの焼き菓子の在庫が久しぶりに増やせる。
それに16:00には、仕事を終業出来るのだ!
ショルツさんと万歳三唱した。
夜にセーブル先生の授業を1時間受けてティムとチェンバーは俺に追いつこうとしている。
セーブル先生はやる気の2人の鼻をもぐ事から始めた。俺はその間に夕飯をレン達3班と作る。
部屋に呼びに行ったら涙と鼻水でコーティングされた顔のティム達がいた。やっぱりね。ご飯の後、復習に付き合ってあげると、恐怖心がない分理解出来たようで小躍りしていた2人。風呂に入って、5時間寝たらまた、出勤時間だ。
2人を起こさないようにそっと身仕度して厨房に入るとショルツさんの機嫌が悪かった。
「おはようございます。ショルツさん」
「泥棒が入って氷室に入ってた商品をまるごと持って行った!俺が管理してたマジックバックの方は、問題ないが、今日は、売り場が荒れるぞ」
「一応警邏隊に届け出してみようか」
「一度盗みに入られたら、ずっと入られるから、警邏隊云々より、警備員を付けた方が良い」
「チョコレート菓子は全滅?!」
厨房に駆け込んで来たのはレオだった。こんな夜中に起こされても、きちんとした格好をしている。
「マフィンとクッキーはあるが、他は氷室に入れてたんで、全滅だな」
「ない分を急いで作って!警備員の配置はしておく」
「「「「「了解!」」」」」
7班にトリュフを6班にアーモンドチョコレートやオランジェットを作らせ、ガトーショコラを焼きまくる。5台のオーブン全部稼働しても1度に50台しか焼けない。……はずだが、出しても出しても出てくるガトーショコラ。
「これナナ様だろ?!体は大丈夫か?」
「大丈夫。よかったね」
「よかったのか、悪かったのか、他人を犠牲にしてまで在庫をふやそうとはおもわねぇよ!」
しかし、どの菓子の在庫も炊き出しの奇跡で順調に増え、普段の在庫よりも多いくらいになった。俺の体には異変が無く美と慈愛の女神ベラスティアーナ様に祭壇を作ってお供えをすると秒で無くなった。
女性だから御菓子がお好きなのかも。
その日は何を作っても増えるのでお供えをたっぷりと3回したら、供えたお皿に「もうよい。太るから」と書いてあった。
また、別の日にお供えをしよう。
ティムとチェンバーが俺を心配して離れない。人魚の若芽茶をマメに飲みながら一日を終えた。部屋に帰るとロギになった。
抗えない眠気に襲われて結局3日間寝たきりだったという。
やっぱりタダじゃ使えない奇跡にピンチを救ってくれたベラスティアーナ神様に感謝して朝食の賄いの焼き鮭定食をお供えした。
「ほうれん草のお白和えお替わりありますか?」
「あるよ!チェンバー。いっぱい食べる?」
「僕も!」
ティムまで挙手している。
まあ、いい。今朝は副菜をたっぷりと用意した。きんぴらゴボウが人気でもうない。
あと、お魚の食べ方下手な!この国の人達。骨の周りに身がいっぱい残ってるのにごちそうさまするので、小屋で飼ってる猫の親子が大喜びだろう。
そう、セーブル先生ときたら、こっそりと庭師の使ってた小屋で猫の親子を5匹も飼ってたことが俺が寝てる内にバレたらしく、皆に怒られたらしい。
早く言えと。
猫自体珍しいらしくて、多分金持ちの家で飼ってたのが逃げて来たのだろうといって、その日の内に小屋をカスタマイズして人間が住んでも良いくらい快適にした。
その日から猫当番という名のただの猫好きによる猫のお世話係が発足したという。
猫は逃げもせず乳飲み子達にお乳をあげてるらしい。見に行きたいが、厨房メンバーは出入り禁止になったので、お目こぼしのあるティムとチェンバーに皆が残した鮭の身をほぐして、ミルクと一緒に持って行かせる。
あまったほうれん草のお白和えは、昼のおかずに持ち越す。
今日の俺はフォレ・ノアールの係。
簡単なチョコレートケーキだが、グリオットチェリーを使ってる事でグッとシックで大人っぽいケーキになっていて……安いから売れてるのだ。複雑な気分で、作っていると誰かが俺の肩を叩く。
「あんまり考えんな。売れ筋商品だと思って作ってりゃいいんだよ!」
この日は午後にナビードが来た。
「儲かってるか?」
「はい!師匠にお願いがあって来ました!」
「おう!言って見ろ!」
「フォレ・ノワールの作り方が知りたいのです!」
そう言って白金貨1枚を俺の手のひらに載せたが返した。
「すまない。材料がエルフの里の物なんだ。教えても仕入れられないから意味が無い」
「師匠、エルフの里を紹介してもらうわけにはいけませんか?」
「いいけど、俺らより高い仕入れ値になるぞ?」
「そこを師匠の顔で何とか!」
ナビードに拝み倒されてロクシターナさん宛に一筆したためる。
「エルフのタウンハウスがここからちょっと坂を上った所にあるから、行って来い。多分仕入れは出来るけど、値段はなぁ~?ま、頑張って来い。あ、ちょっと待て!」
作りたてのフォレ・ノワールをワンホール持って行かせる。手土産がないとな。
ナビードは急いで店から出て行った。
そして1時間後にロクシターナさんからの手紙を持って帰って来た。
手紙には、やはり、同じ値段で卸す事は出来ないし、グリオットチェリー自体が在庫が無いから無理だと言うのが書いてあった。
そう伝えるとロクシターナさんから話を聞いた様子。
「また、お金を貯めて参ります!」
「ごめんね、力になってあげらなくて」
「いえ!果物を安く卸して下さるそうなので、それを使ったいろんなケーキのレシピを教えてもらうよう助言いただいたので、ちょっと貯めて参ります!」
「せいぜい2種類がいいとこだよ。今から教えてあげるから、おいで。白金貨1枚でいいよ」
ベーシックなショートケーキの作り方を教えて一度作らせてみる。
今までに教えた製菓より、難しくないので直ぐ出来たが考え込んでる。
「ちなみにココアを20グラムほど小麦粉の代わりに入れるとフォレ・ノワールの生地になる。挟み込むフルーツを変えるだけでいろんなフルーツのケーキになる。次はタルトだ」
「いけません!このパウンドケーキとやらはいろんなケーキに使えすぎて白金貨1枚程度では申し訳ありません!今日はこれにて、帰ります!ご指導ありがとうございます!師匠」
「そう?良いならいいけど…」
せっかく教えてあげるって言うのに、もったいないことをするなぁ。
ナビードは自分の作ったパウンドケーキを大事に持って帰った。




