第4章 春を歌え!④
台風シルフィが傷跡を残し去って行くと、スーシャとセリスがセトさんにパッチワークのクッションをプレゼントしたり、ソーニャとイライザとアリスがお祝いに歌のプレゼントをくれたりと、和やかな時間が過ごせたが厄介な仕事が残っている。
敵対するミューシャ国王陛下との対決だ。
ロクシターナさんとセトさんは国賓待遇で王宮に昨日から滞在している。
そこに俺が婚約者として乗り込むのだが、謁見の許可が降りない。
こっそり厨房に潜入したらラデック男爵が厄介な事を教えてくれた。
ミューシャ国王陛下の息子がセトさんに一目惚れして熱烈なアプローチをかけているらしい。セトさんは仕方なくお相手しているようだ。
「国王陛下はどう思っているのかな?」
「エルフは金持ちだろ?今、ナナ様との婚約を認めるのに幾らか出させる交渉中だ。息子が堕とせたらそれはそれでいいらしいが、エルフって、天罰付きだろう?あんまり、気乗りはしてないみたいだぜ」
「ありがとう教えてくれて」
「さあ、今度はこっちの番だ!チョコレート菓子を教えてくれ!」
情報料に幾つか教えた。
翌日ようやく謁見が叶った。
ミューシャ国王陛下はあいかわらず腹の読めない狸親父で、金を出させたのを友好費などとふざけた事を言っていたのでこめかみの血管がぶち切れそうだった。
ロクシターナさんがハンドサインで「黙れ」と指示しなければ食ってかかっていただろう。
「エルフの里を継がれた際の宴には是非とも呼んでくれ給えよ!ナナ殿」
「はい、光栄にございます。それでは、明日の予定が差し迫ってますので、失礼致します」
「ああ、下がってよい」
「私どもも、里を長く空けましたので今日でお暇させて頂きます」
「構わぬ!大義であった!」
何、自分の家臣みたいな扱い方してんだよ!厚顔野郎が!
◆○◆○◆タウンハウスにて
「人間というのは狡猾で度しがたい!腹の中が煮えくり返りそうだった!」
「セトさんすみません。イヤな思いをさせてしまいましたね。お金まで出させてどういうつもりだ!」
ロクシターナさんがポンと俺の肩を叩く。
「あれぐらい気にするな。セティーネの純潔を質にして幾ら盗るのかと思ったら、鼻クソ程だったが、大金だと言って出し渋っていたら、心配した誰かさんがチョコレート菓子のレシピと引き換えに探りに来たみたいだから茶番を終わらせたんだ」
「俺の一生をかけて返します!幾らですか?」
「いずれはナナの金だ。気にせずセティーネと仲良くな。では、エルフの里に行くぞ」
玄関を開けるとそこには見慣れた仲間達の顔が。
「弟子を連れて来た!連れて行けよ。ナナ様」
「いや、弟子には違いないけど、レン達3班全員連れて来たらレオが困るだろう!?」
「いや、レオからの依頼だからいいんだよ。アールディルの王都に2号店出店したかったらしいから、雇ってくれるって。行こうぜ」
ショルツはある意味自由人だな。
「ヨールは?」
「すぐ来る」
【ナナのハンバーグ屋さん】で見たことある一回り体の大きな青年とすっかり青年になったアレンを連れて来た。
アレンは俺の胸にダイブして来た。
「ナナ様会いたかった!俺頑張ってたよ!」
「知ってる。アレンはいつも一生懸命だ。そちらの方は、お見かけしたことはあるんですがお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
大きな体を丸めてご挨拶した。
「オラもスラム育ちだ。ライルって、言います!ナナ様よろしくお願いします!」
「集まったみたいだから、転移します」
転移陣が足元に出現したと思ったら、もうエルフの里だった。そしてすぐアールディル王国の王都サイヴァンのエルフのタウンハウスに転移させられた。
「「「「「「「「「寒い!!」」」」」」」」」」
「そりゃそうだよ。北の方で雪降るって、言っただろ?服買いに行くか?」
「ナナ様奢って下さいッス!」
「コート1枚づつな!」
「セーターかベストがいいっス!」
「ふーん。それならどっちも買えよ。コート1枚より断然安いからいいよ」
ショルツが赤さんをあやしながらいいのかと目で問う。
「行こうぜ!」
チェンバーが案内してくれた服屋さんを丸っと廻るとロクシターナさんはブーツが欲しいみたいで、マジマジと見ている。
決まった様なので買い物カゴの中に入れたら、ロクシターナさんは慌てて追いかけて来たが、もう支払ったもんね!
「すまない!」
「良いんですよ。いつもしてもらってばかりですから、お礼くらいさせて下さい義父さん」
「しかし、妻へのお土産なんだが…」
「黙ってりゃわかりませんよ、それか、銀細工の何かをお買い求めになればいいと思います」
「……それも良いな!細工物の工房はどこがいい?店主」
服を袋詰めしていたおじさんは、ちょっと考えてから、店を閉めるとなんと案内してくれた!親切!また、服を買いに来よう。
ショルツは赤さんをおんぶ紐で縛ったまま着られる半纏みたいな物と裏側が毛皮のズボンを買ってすぐに着ていた。
他の皆もコート1枚は自費で買い防水仕様のブーツやら、帽子やらを見つけては足していた。
俺も帽子は持って無いので4つ買った。ティムとチェンバーとセトさんの分だ。あ、サンドイッチ屋チアーズの出稼ぎエルフ夫婦達にも買って行こう!あそこは開けっ放しだから寒いはず!
銀細工物の店では安いのから高いのまでまんべんなく商品があったので、チアーズクラブ本部のコックさん達とシュー、エクレール専門店ホーリースターのメンバーに髪を留めるバレッタを人数分適当に買って、セトさんに普段使いのユニセックスなネックレスをちょっと高かったが買った!頑張ったぞ、俺!
しかし、渡すタイミングが難しい!セトさんはいつも誰かといるから気恥ずかしさも相まって渡せない!
木箱を取り出したり袖口に締まったりしてると、ヨールがその木箱を引っ手繰ってセトさんを大声で呼ぶ。
「姫さん!ナナ様が贈り物渡したいっス!」
全員がこちらを見た!……ヨールてめぇ覚えてろよ!木箱をヨールから取り返す。
俺の顔は赤くなってるに違いない。俯きつつセトさんの所まで行き、手を取りネックレスの入った木箱を渡す。
「開けていいですか?」
「どうぞ…」
セトさんのしっかりした手がネックレスを持つ。気に入っただろうか?
「つけてくれますか?」
「はい!ただいま!」
「「「「「「食事処じゃないんだから、ソレはない!」」」」」」
うるさい弟子ども!黙ってろ!
なんとか、震える手でネックレスを受け取ってその白すぎるうなじを見ながらネックレスをつける。今日はポニーテールにしてる銀髪がさっとうなじを隠す。
渡した!渡したぞ!!
するとロクシターナさんが来て、ペンダントトップ部分に口をつけて吹いた。
ピーーーッ!
鷹の鳴き声のような澄んだ音がした。
「こうやって使う。いい贈り物だ」
「ありがとうナナ殿」
「いや、綺麗だから似合うかなと思って、だから。役に立つみたいで良かった」
「「「「「「「何で指輪じゃないんだよ?!」」」」」」」
そ、ソレは…。
「サイズがわかんなかったんだよ?!俺だって考えたわ!!」
ショルツが椅子から立ち上がった。
「下調べが足りてない!俺はカレンの親友にカレンの指ぬきを銀貨2枚で買ったんだぞ!」
そ、ソレはやり過ぎでは?




