第3章 慈愛の女神の使徒のお仕事⑦
カンダラ村の村長の指図はエグいぐらいだった。
神官達にあっちの柵を直せだ、エルフさん達にも今夜食べる肉を狩ってこいだの、俺達には貧乏くさい料理は作るな、私が食べるに相応しいものを作れだの、うぜーよ!
しかも村人達は村人達で何もしなくてもフォレストウルフの燻製肉を貰える気になってる。
柵は木を切らないと出来ないので、それが戒律に引っ掛かるエルフと神官達に変わって穗高様が頑丈な土の壁で村を囲んだ。
村長はまた目をギラギラさせて自分の娘を穗高様の部屋に潜り込ませた。
穗高様は逃げて来たらしい。バスで寝てた。
「「「「「「「「もうこの村イヤだ!出発しよう!」」」」」」」」
ジジルー神官は、「もう少しでお仕置き出来ますから少し待って下さい」と言いニコニコしている。
そんなときに調理中にエルフさん達が貸してくれた魔法カバンが盗まれた!
ウカツだった!
ジジルー神官は村の中にある家を一斉に捜索したが、魔法カバンは出てこない。
村長の家を捜索しようとした時、村長の家からこそこそと出て行く使用人を見つけたティムがチェンバーに魔法で拘束させる。
「バインド!」
「わ、私じゃない!ヌガルがやったのだ!」
驚いたのは捕まった使用人のヌガルだ。
「わ、ワシは旦那様に言われて、こんな危ない橋を渡ったのに!旦那様はワシを見捨てるだか?!」
「な、何だと?!私のせいにするのか?!お前という男は!見損なった!神官様方、こういう訳と知らずこの男を今日まで雇ってました。私には非はありませんが、こういう男を雇っていたと言うことで、宿泊費はタダにします!」
これにはジジルー神官も心底呆れていた。
「聖痕を持つ方から何かを盗むという意味をこれから分かるでしょう。生涯罪を償って下さい。村長」
「私には関係ない!あの男が、勝手にやったのだ!」
風が吹き荒れた。一瞬目の前が見えないような暴風が。
風が収まった時、そこにいたのは村長であった者の服を着たブラックマウスだった。
額にお馴染みの美と慈愛の女神ベラスティアーナ様の神罰紋がある。
セトさんは村長であったブラックマウスを矢で村から追い払った。
魔法カバンを持っていたヌガルは大人しく捕まると自分の罪を認めた。
「ワシも羨ましいと思ってた。その気持ちを利用されて罪を犯してしもうた。許されんことじゃ。使徒様、ワシもブラックマウスに変えて下さい」
「ダメ!人として罪を償ってまた、村に帰ればいい!」
あんな事がポンポン起きてたまるか!
「盗みは重罪で鉱山奴隷として1年働かねばならぬのです。今の季節では死んでしまいます。どうか、ブラックマウスに変えて下さい」
俺はクルクルのコートを脱いで男に掛けた。
「それが貴方の罪だから。せめてこのコートで温まれよ」
ヌガルは俺を見て一礼するとクルクルのコートを着て衛兵の詰め所に自分から行った。
穗高様が俺の頭を撫でる。
「出頭するとき着ていた物は横暴な兵士達で無い限り盗られたりしないから、いい贈り物だったな!あれ着て頑張るだろうよ!」
俺は初めて人を裁いた怖さに震えていた。
「ブラックマウスになるよりは、数十倍マシだから、気に病むな?ま、今度から盗まれないように見張ってないとな?はい、悩むのお終い!」
「「「「「僕(私)達も悪かったから、今度から見張り立てようよ!」」」」」
俺は大人だから心配掛けちゃいけない。笑ってジョシュア達を安心させなければ。
「そうだな。そうしよう」
早く出発したかったが村長だけは決めてあげなければいけないらしくてそれで、出発が延びた。
相変わらずの村人達の態度の悪さは出発まで続き、挙げ句の果てには村長が死んだのはお前たちのせいだからたっぷり食糧を置いて行けとか言う始末。10人のベテラン神官様達に喝をいれられていた。
そしてカンダラ村には何の支援もしないことにした。
すると、バスに向けて泥団子や石を投げつけるので、また神官様達は唖然としていた。
主要街道に戻って1時間ほど走り、3番目の村に向かうとこの村は小さいが人が良い村で良い活動が出来た。
次の村もその次の村も何の問題も無かったのでカンダラ村がおかしかったんだなという結論に達した。
全部で8つの小さい村に2日づつ滞在し、食糧支援をして、王都に入った。元旦まであと5日のスケジュールぴったりに到着して神官様達を王都の銀月教の神殿に送り届けたらチェンバーの案内で服のお買い物へ。
エルフさん達もツアー客になっている。耳を帽子で隠しても超美形揃いだから目立つよね?
チェンバーは幾つも服の店を知っていてお安い方の店を案内してくれた。
エルフさん達が買う買う!俺は普段着をチェンバーに指導されながら、大人服と子供服の両方を1週間着回し出来るようにかったら、銀貨1枚使っていた。
2軒目の布屋に行ったとき、エルフさん達がお金が足りないからどうしようかと相談してたので護衛費用代と思い買ってあげた。大金貨1枚分の布はエルフの里で服に生まれ変わるのだろう。
チェンバーとティムが何故か拳を握って「ヨシ!」とか言ってたけど、アレは何だったのだろう?
小腹が空いたので、エルフさん達のタウンハウスにお邪魔して麻婆豆腐とギョウザ、酸辣湯にチャーハンを作っておもてなし。
ティムとチェンバーは思ってた通り、チャーハンに麻婆豆腐を掛けて食べてた。
ソレを見たエルフさん達が真似して食べる。ハイハイ。お替わりね。
セトさんもよく食べるな。酸辣湯苦手なのかな?かき玉スープに変えるか。
さり気なくスープを変えて大盛りのチャーハンを皆に配ると麻婆豆腐待ちだった。
直ぐに作って配膳した。皆が食べた後で残ったおかずで食べているとセトさんが来た。
「暮れの謁見に一緒に出てくれないか?」
「俺で足りるならたしましょう」
「服を作るから採寸させて欲しい」
「はい」
ご飯の途中だったが急ぎのようで、サロンに連れて行かれた。
服を脱いで計る。この女のエルフさん達はどこから湧いて来たのだろう?
聞くとエルフの里から転移して来たらしい。
「稔司様の目が覚めたんですね?」
すると女性達がクスクスと一斉に笑う。セトさんは真っ赤になって女性達を睨んでいる。
こういう時は詳しく聞かない方が良い。
なんて思ってたから後日たまげるハメになるのだ。
採寸が終わり夕飯の続きを食べていると今度は王城からの使者が来た。
使者は俺を見つけると縋り付いて来た。
「陛下が何もお召し上がりにならないのです!何か作って下さいませ」
俺の夕飯……。
ひょっとして毒殺の危険を感じる何かがあったのだろうか?
調味料をエルフの里のバッグから半分ほどもらう。給仕してくれたエルフに王城に行くと告げて使者に連れられ王城の厨房へ。
怪しいものが無いか片っ端から鑑定すると差し戻されてきたルベラ国王陛下の夕飯が、有毒になっていた。
「呪い粉をパジャと一緒に使うようにしたのは誰?」
言い出す内から逃げて行く料理人を厨房の衛兵がとらえ、素早く口に詰め物をする。
「何でだ?!6年間一緒に働いた仲間じゃないか!チャールズ!!」
シェフのリロイズさん他、皆が呆然としている。俺はここ数日、ほとんど食べて無いらしい国王陛下にシチューと柔らかいロールパンを作る。
体調が治るように、と祈りを込めて。
お替わりを言いつかったので治ったのだろう。チャーハンと麻婆豆腐を作って持って行かせたら麻婆豆腐のお替わりをまだ食べるらしい。大丈夫か?胃袋。
その後、何度かのお替わりの後デザートを持って行かせた。いくらなんでも暴飲暴食過ぎだ。気持ちは届いた。もうお替わりを頼むことは無かった。




