第2章 資金調達と装備
ルベル先輩がチアーズクラブから抜けた余波はイアン先輩にも及んだ。一切寄り付かなくなったのだ。
「お肉が無~い!」
「狩りに出掛けないとな」
「ふむ、ちゃんとした装備が必要だな」
「「「お金が無い」」」
詰まるところソレである。
一応、ガスパールにナナ様の貯蓄を少しこちらに回して欲しいと頼んで半月が経つ。
【ナナの○○屋さん】でいただける利益はバカにならない。
そろそろお金がたまってるんじゃないかと探りを入れたのだが、まずかっただろうか?
「ウェルバー、面会者が来てる。職員室横の応接室まで来るように」
「はい」
誰だろう?ちょっと不安に思いながらチェンバーとティムに行って来ますをいい、応接室まで行くとカレッドさんとエルフの大工さん達がソファに座って待っていた。
「カレッドさん!わざわざ来てくれたの?!」
「ロードシュガーに乗って来たからわざわざって程でも無いよ。友達も炊き出しの後で連れて来て。肉が狩りたいなら、装備がいるだろう?お金を預かって来てるから、今日、装備を揃えてしまおう」
「ありがとう!カレッドさん、皆さん」
「ロギのお金何だが、渡したら最高の装備を揃えそうで怖いからな。身の丈に合った装備にしてやるよ」
その日の炊き出しは雑炊で素早く終えると、魔法カバン一つ持って校門へ。エルフの皆さんは道行く人達から注目の的になっていた。
「皆!連れて来たよ!栗色の髪がティム、赤毛がチェンバー。よろしくお願いします!」
「て、ティムです!活動資金の提供ありがとうございます!」
カレッドさんが、何かを言いかけて口を閉じた。そして俺を睨んでいる。
だって、どう説明すんの!俺のお金って言ったら不信を招くし、おかしいでしょ!
「チェンバーです。皆さんのご厚意無駄にしません!」
「「ところで何故そうまでしてくださるんですか?」」
あ、ヤバっ。考えてなかった!
「エルフの里では無償で困っている子供達の援助をするように躾けられているからね。知り合いの子供が困ってれば、助けて当然なんだ。里の規則みたいな物だね」
おおう!ルーシャルさん、初めて話すとこ見たよ!ナイスフォロー!
「でも、僕たちエルフじゃないし、やっぱり悪いです!」
「「「「「ん?助けてるのは、人間の子達だからね。大丈夫、そんなに高い物は買わないからついておいで」」」」」
「「「ありがとうございます!」」」
ルーシャルさんの案内で乗り合い馬車にのり、中心街からちょっと離れた武具の店・ヘルマンに着いた。
カレッドさんが店に入って行きながら声を張り上げる。
「おっさーん!今年もきたぞ!」
「誰がおっさんだ!お前だろうがよ!」
ツッコミが店の奥から聞こえる。
カウンターにいたのはアイパッチで左目を隠した顔の半分に凄絶な爪痕が残るゴリマッチョのおっさんだった。
やたらと明るい性格みたいで、カレッドさんと繰り広げる漫才は見応えがあった。
「今年の子達だ。安い装備でいい…待てよ、赤休みはどうするつもりだ?」
「はい!僕はロギについて行く!」
「私もだ!」
え。どんな無茶ぶり?!
そういえば赤休みまで10日も無い。クロワッサン領に帰るつもりだったけど、帰っても半月しかいられない。
ましてや、友達と遊ぶつもりなら、執務も出来ない!
カレッドさんは、それを聞いてニッコリ笑って誘いをかけた。
「エルフの里においでよ。里に帰るの待つから。狩りを教えてあげる」
「「行く!」ねえねえ、ロギ行こうよ~!」
「二人は連れて行ってもらえばいい」
「ガスパールから伝言。『もっとワガママを言って下さい。ロギ様』ってな!」
望んでもいいのだろうか?領主じゃない俺を。
「わ、どうして泣いてるのだ?……ほら、涙を拭き給え」
チェンバーから差し出された目の粗いハンカチで涙を拭う。
カレッドさんがそんな俺の頭を撫で俺に言い聞かせる。
「ロギ様、たまには遊んで下さい。白休みは領に帰ってもらいますから。好きにして良いんですよ」
「ティム達と一緒に行きたい」
「じゃあ、おいで下さい。では、ドガ、エルフの里のダンジョンで使うに相応しい物をこの子達に選んでくれ」
すると黒い胸当てと剣と弓が持ってこられた。胸当てを調節しながらドガさんは素材の説明を俺達にしてくれた。
「アーミーアントの胸当てだ。硬いし、軽いからなり立て冒険者のお前たちにはちょうどいいだろう!コイツはスラッシュボアの体当たりにも耐える。万が一に備えてみた。脇腹のベルトはブラックラインサーペントの端布を使ってるから、千切れないし、お前らにはもったいないくらいの素材だ。端布だからオマケしてやるよ!カレッド、カブトはどうする?」
「いらない」
「んじゃ、武器だな。一番小さいのは何使う?」
俺のことか?
「まだ、剣しか習ってません」
子供用のロングソードを渡されて「構えてみろ」と言われる。始め!の構えから次に!までやってみせるとドガさんに拍手をもらった。
「スゲェな。ほぼ、完成されてる。最初の師匠が良かったんだろ!努力を忘れるなよ。その剣持って行け」
この剣、すごく手になじむ!
剣帯と鞘を付けてもらい、俺の支度はできた。
チェンバーは魔法使いだからトネリコの弓をもらい、ヘイトを集めやすいティムは大きな盾と剣をもらっていた。
お支払いは金貨2枚とわりと安かった。
初めて行く【カフェ・ナナ】に3人で緊張しながらエルフ達と店内に入る。
店は大盛況でカレッドさんが予約してなければ、座れる席は無かった。
昼ごはんは食べたので、パフェを頼むことにしたら、チェンバーとティムも同じ物を頼んだ。
「後悔しない?」
「「だって、ロギの食べるのが一番おいしい!」」
それはどうかと思う。
カレッドさん達はちゃんとランチしてるのに、後悔するなよ?
運ばれてくるから揚げ定食やオムライスに、ツバを飲み込むチェンバーとティム。
そこにガラスの花瓶に盛り付けられたパフェが届き、周りの注目の的になる。
ソウルさん!やり過ぎだから!!
「溶けるから早く食べて!二人とも」
「わ、冷たいっ!甘っ?!おいひい!」
「入るかな?こんなに…ん、美味しい!」
お腹いっぱいになったが、何とか食べられた。ありとあらゆる種類のアイスクリームが盛られていて至福のひとときだった。
会計にソウルさんがいて、厨房は大丈夫かよと心配したけど、俺に相談があったらしい。手紙を渡された。
その場では読まず、魔法カバンに入れた。
「ごちそうさまでした!」
「また、おいで下さい!明日は休日ですのでお待ちしてます」
明日来いって?!急用なのかな。ま、いいや、帰って手紙を読んだら解る。
ついでに市場も回って肉を確保。
今夜の内に明日のお昼ご飯作っとこう!
カレッドさん達に学園前まで送られてお礼を言う。
「「「ありがとうございました!」」」
「赤休みまで【フェンリルのため息亭】に滞在してるから用があれば朝か、夕方に訪ねて来て」
「「「はい!」」」
監督室に3人で帰ってから揚げを作ってご飯とサラダも作った。
ジャンボパフェを食べた後だというのに皆よく食べた。
2人が寝ると魔法カバンから手紙を出して読む。
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ロギ様
出入りの商人にロギ様が頼んでいた食材が届きました。俺達じゃサッパリ使い方が解りません。一度店に来て下さい。
ソウル
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うん、今晩抜け出そう。
ティムとチェンバーには熱発でお休みだって証言してもらおう。