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貴族転生、チートなしで成り上がれ!  作者: 榛名のの
第2章 学園編
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第2章 やっぱりね

◆○◆○◆sideロギ


朝食会は予想を上回る高評価だった。

ルベル先輩が、自分が食べ終わると直ぐに中規模の米農家の6男高等科商業学科の3年生ベイ=ウルフを紹介してくれた。

 ベイ先輩もカレーを食べて唸ったあとこう言った。


「悪いようにはしないから、これで店を開かせてくれ!!頼む!」


「売り上げ金の0.5割ほど頂けたらいいですよ」


「え。たったそれだけでいいのか?!」


「もう一つ。レシピを漏らさないこと」


「それは当たり前だろう!店は後ろ盾が必要だから、ルベルの実家の伯爵家になってルベルと共同経営する!いいか?」


「ああ、っと、貴族が関わるならちょっと待った!俺にはアールディル王国で怒らせちゃいけない後ろ盾がいるんです!相談するんで1週間下さい!」


片付けはティムとチェンバーに頼んで、学園を飛び出し乗り合い馬車を乗り継いで昼前に領主館に辿り着いた。

 応接室で3時間まんじりともせず待っていたらいきなり乱暴に扉が開きズカズカとトビアス様が入ってきた。


「トビ「ロギ、俺は言ったよなあ?料理するなって!何で部活動でパン屋したり、慈善活動で毎日炊き出ししてる?!この大馬鹿タレ!!」」


「オマケに【神の舌】に目を付けられて、俺にどうしろっていうんだ!!」


イライラしてるのは、それが原因だったらしい。


「……ごめんなさい」


穏やかな人が怒ると怖いっていうけどホントだ。メッチャ怖い!俺のキャラじゃ無いけど謝っちゃったよ!


トビアス様は涙腺が決壊した俺を見て、せっかくセットしている髪をクシャッとして、いつもの爽やかなトビアス様に戻った。


「あ~、いきなり怒って悪かった!お前もな、やらかすとは思ってたけど、何日も保たなかったなあ。いやあ、見事と言おうか怒ろうか、褒めようか、迷ったけど、全部、だな!苦学生に食事を与えてくれてありがとう。実家には充分な支援を行ってるんだが、経営にまで口を出せる訳もなくて便秘になるくらい困ってたんだ。まあ、座れよ」


家令の緑茶の見事なサーヴにより、涙も引っ込む。

 俺が緑茶に口を付けたのを見てトビアス様は今回の騒動を紐解いてくれた。


「ルベル=スペンサーだが、珍しいスキルを持っていてな、誰がどんな味の料理を作るか食べたら解る【神の舌】というスキルを持っていて過去にさかのぼること10年前、高級食事処のシェフが名ばかりのニセモノだと見抜いたので顔を売るとあれよあれよと言う間に、美食家のパーティーや晩餐会で引っ張りだこになって民草が【乱痴気騒ぎの9日間】という例の晩餐会にも招かれててな、ロギの正体がばれたっぽい」


「だから、料理作るな、って言ってたんだ……ごめんなさい。

 今日訪ねたのはそのルベル先輩とベイ先輩が共同経営するカレー屋を開かないか、って言われてルベル先輩の実家が後ろ盾になるから、って言うから、まず相談に来ました」


丸めた書類で頭をポコンと叩かれた。


「相談はもっと前にするように!ロギの名前が表向き出ないなら、良かろう!ルベルとベイに良く言い含めておけ。俺は諸事情あって、誰かの後ろ盾にはなれないから、幸運だと思ってろ。ルベルに同一人物だと言う言質を取らせるなよ!ほれ、帰れ!忙しいんだよ」


「ありがとうございます!トビアス様」


外は夕焼けで街がオレンジ色に染まっていた。呑気にそれを見ながら乗り合い馬車を乗り継いで寮に帰ったのは随分遅くなってからだった。

 領主館から遠いんだよな。学園って。

監督室のベッドにはチェンバーとティムが窮屈そうに眠っていて思わず噴き出した。


ティムが目を覚ます。


「ロギ、貴族様の機嫌損ねなかった?」


ああ、心配してくれたんだ。


「大丈夫だったよ!ルベル先輩んちならいいだろうって。約束がなかったからその分待っただけだ」


「……なら、よかった。晩ご飯早く」


ナンが余ってるから、上にチーズとベーコンの端っこを切って載せてトーストしたものをチェンバーを起こして3人で食べた。


◆○◆○◆sideルベル=スペンサー


「で?どこの貴族だった?」


イアンにロギの尾行を任せたら、珍しい事に失敗したらしい。これでもイアンは黄級の冒険者なのに。


「桃の香りがしたと思ったら、ロギはもういなくなってたんだよ!絶対やばいって!貴族だけじゃない!何かに守護されてるって!俺はもう探るような真似はしないからな!」


そう宣言するとまるで強い魔獣から逃げるように私の部屋を全速力で出て行った。

 入れ替わるように桃の香りが部屋の中に漂い誰も居ないのに耳元で少年の声がした。


『これ以上余計な真似をするなら、その舌を取り上げるよ?』


 【神の舌】が無い私なんて、何の価値も無い!出来るかどうかは別として得体の知れない恐ろしさに微かにうなずく。


『約束だよ』


「痛っ!」


突然、ちぎれるように舌が痛くなり桃の香りが遠ざかる。


私はしばらくあの気配が無いかどうか、待ってから舌を鏡で確認した。舌の奥には奇妙な紋が描かれていて急いで実家に帰って銀月教の神官を呼び付けた。

 

「力の強い精霊と取り引きしたのですね。これに縦線を1本加えると主神ユーバリン神の神罰紋になります。これは、取り引きを守らなかったら、ご実家も巻き込まれますよ」


「何に手を出した!!主神の神罰紋など恥さらしめ!ウチから出て行け!」


「ち、父上、どうか、それはお許し下さい!」


神官は目を細めて笑うとユーバリン神に取りなしてくれるから喜捨をと、手を出した。

 私の全財産をその手に載せた。

聖水を私の口に含ませてそのまま朝まで祈祷して、ようやく神罰紋らしき物が消えた。

また、桃の香りがしたと思ったら耳元で少年の声がした。


『今回は見逃してやるよ。次は無い』


私は泣きながら「わかりました!」と何度も繰り返した。

 父上は神罰紋が無いなら許そうと言ってくださった。

 チアーズクラブから離れよう!あそこは危ない!


◆○◆○◆sideロギ


「え。店の話は無かったことに?」


ベイ先輩はルベル先輩をけなしていた。


「商売に失敗したとかで、伯爵様を頼れないんだってさ!何だよ!自分から言い出しといてさっ!無責任何だよ!親父にも話したのに!どうするんだよ!」


「あのう、お米を大量に売ってもらうのって、出来ますか?」


怒り狂ってたベイ先輩がピタッと静まった。


「カレー屋するのか!」


「俺がルベル先輩ともう1度お話してみます!」


「ヨシ!俺も一緒に行く!」


高等科の教室にルベル先輩を訪ねるとカレー屋の件は断ったはずだと一点張り。


「何故か、理由を聞かせて下さい。今、俺達はルベル先輩の(実家の)力が必要なんです!助けて下さい」


俺に続いてチェンバーがお願いする。


「ルベル先輩だけが頼りなんです!会計も教えて下さるって言ってましたよね?!お願いします!」


「君たちに関わったら、私の身の破滅何だよ!帰ってくれ!!」


意味不明なことを言われて思わず顔を見合わせる。

 後日、ルベル先輩がユーバリン神の神罰紋を付けられていたというウワサが校内で囁かれていた。

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