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貴族転生、チートなしで成り上がれ!  作者: 榛名のの
第2章 学園編
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ヨールの事情と新しい仲間たち

クロワッサン領に来て2日目の夜は賑やかな食卓だった。

 ワルトが近くの森からシルバーホーンディアを仕留めてきたので、ごちそうだ。

 ちゃんとした塩竃焼きを作って、ワルトには一番良い部位のお肉でシチューを寸胴2杯分作った。ワルトにあげて、残りを皆で食べる。


ヨールも常にないくらいがっついている。

塩竃焼きはハーブと塩の旨みが噛み締めるごとにあふれる究極の一品だった。


「これでバケットがあれば最高だったッス!」


「泣き言あるなら言えよ。酒飲むか?」


「いただくっす!」


ベロベロに酔うまで弱音を吐かなかったヨールは、寝落ちする前に一言だけ言った。


「あそこはもう、【ビストロ・ナナ】じゃないっす……」


寒いから丸まって寝てるワルトの上にブランケットを掛けて寝かせた。


「ガスパール、どういうこと?」


「5日前ショルツが辞めました」


「は?聞いてないよ!」


「はい、言ってませんから」


ガスパールを殴りつけたいと思ったのは初めてだ。

 いや、忙しさに紛れて本店を訪れなかった俺が悪い!


「済まない、ガスパールが悪い訳じゃないのに」


「いえ、獅子身中の虫を招き入れたのは私たちマズルカ商会です。真面目にふた月も働いてましたから、油断したのです。

 新規の料理人をフィリップが紹介してくれたんですが、全てミューシャ国王陛下の手の者でした。申し訳ごさいませんでした」


「あの人が、そんなことを?……何故?」


確かに前国王を亡き者にしてすぐに俺に理不尽な要求するくらいだから、俺を閉じ込めて置いてその間に乗っ取った?

 そして、領地を与えて王都から遠ざけた。


「嵌められたんだな。王家御用達を返上する!ビストロ・ナナを売却してマズルカ商会は手を引いてくれ。レオには俺から謝る」


ガスパールがひざまずく。


「よく、御決断していただきました!このままでは、各支店まで、呑み込まれる所でした!」


「ごめん、判断が遅くて。ヨールは俺が引き取る!ちび共も連れて来てくれ」


「ちびちゃん達はナナのハンバーグ屋さんで働いてますよ。住むところもちゃんとあります。『ナナ様会いに来てね!頑張ってるから』との伝言です。意外と戦力になってるとカイルからのお墨付きです」


「そっか、よかった!」


あの子達が対等に扱われて。

 その夜、「領地をいただき忙しくなったから、王都の店にもいけませんし、王室御用達の看板をお返しいたします」とミューシャ国王陛下に向けて手紙を綴った。

 ガスパールが使者になってくれた。


カレッドさんはイオレさん達とまず、居酒屋と宿が一緒になった店舗を建て始めた。

 朝一番で、商業ギルドに行き、街中の空き店舗を土地ごと買い、カレッドさんが魔法で更地にして基礎からあっという間に棟上げまで済ませて領主生活3日目が終わった。

 ちなみにヨールはガスパールについて行き辞めてくると晴れ晴れとした笑顔で言った。


 その日の夜遅く領主館に家財道具一切荷車に積んで来た家族連れが訪れた。


「片足が満足に動かないんだか、何をさせてくれるんだ?」


「クロワッサン領、領主ナナです。とりあえず中に入ってご飯でもいかがでしょう?今日から10日間はここに泊まって下さい」


「ご飯食べれるだか?!おっとう!」


「カレッドさん、荷物は、倉庫に入れて手を洗わせて下さい」


「了解した!」


◆○◆○◆


今日はポトフとおにぎりだ。……すごい勢いで無くなっている。ワルトは優しいから寸胴1杯分で食事を辞めた。

 あとで鮭のムニエルでも作ってあげよう。


「んだんだ!腹いっぺぇ、だ!おっとう」


可愛い娘なのに口を開くと台無しだ。

 給仕させたいのに、無理かな?

奥さんも細すぎるが美人でもうちょっと太らせたら給仕として雇える。

じいさん、ばあさんはシーツでも変えてもらおうか?ま、無理ならいいけど。


「俺はヒューイット。ヒューって呼んでくれ。娘のアリー、妻のエル、親父のニーチェとお袋のレイチェルだ。

 俺たちはこの領から出て行こうとしてたんだが、イゴールさんが領主館に行ったら仕事があるって言うから来た!」


「ヒューさんは料理したことあるかな?」


「ああ、狩りの間の食事は自分で用意してた」


「じゃ、料理を覚えましょう!アリーさんは言葉遣いを直してエルさんと給仕をしましょう。何をしたらいいのかはうちの家令が教えますから」


「言葉遣い?何だっぺや、それ」


先は長そうだ。

小柄ながらガッシリとした体付きのじいさん、ニーチェさんとどこか品のある白髪のばあさんレイチェルさんも身を乗り出してアピールする。


「薪を割るくらい出来るっぺ!」


アリーさんはニーチェさんの方言が移ったようだ。

レイチェルさんは上品に料理と裁縫が出来ることを申告した。


「洗濯は誰がやってましたか?」


「俺が」


なんと、ヒューさんがやってたらしい。


「じゃ、ヒューさん。午前中は洗濯で、午後から調理しましょう。レイチェルさんはニーチェさんと宿の部屋の掃除とベッドのシーツと枕カバーを毎日変えましょう」


「それ、おらがやりたい!」


アリーさん、君ねぇ。


「襲われたりしたら困るでしょう?やめてください」


「そうだ、アリー。男は獣だ!アリーは綺麗だから、狙われるっぺ!」


「おら、強いだよ!」


「君には酒場の掃除や配ぜん係をして欲しいんだ!強い君にはぴったりだ!」


「そごまで言われっと、やるしかねぇっぺな!配ぜん係するっペよ!」


レイチェルさんがアリーさんに釘を刺す。


「お金をいただくのだから、いつまでもニーチェの真似は止めなさい!」


「はーい。ばあちゃん」


標準語も話せるんじゃないか。呆れているとレイチェルさんがフォローする。


「この子ね、男の子がうるさいからってガサツにしてたけど、本当はきちんと出来る子よ」


「なんにしろ、よかったです。では明日から研修をこの領主館で始めます!よろしくお願いします」


「こっちこそ頼む!」


使用人用の2人1部屋の部屋で眠ってもらって明日からの教材を用意しているとカレッドさんが、俺を手招きする。


「もう少し領主の自覚を持たないと平民に敬われもしないままになるよ」


確かに。超タメ口きかれてたもんな!

 ガスパールがいるとそんな真似させないんだけどな。


「気を付けます。ご忠告ありがとうございます」


「準備も大概にして寝て下さい」


ワルトに鮭のムニエルを作ってから寝ようか。

部屋の前で待っていたワルトに木の平皿に乗せた鮭のムニエルを山盛り出すとワルトが体をすり寄せる。何度も何度も。可愛い…


「冷めるよ、お食べ」


『ごろな~ん♬』


やっぱりお腹が減ってたみたいで、上品に素早く食べていた。

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