レオナルド無双?【デザート・ナナ】開店
朝駆け夜討ちという言葉がぴったりなのが、ここ2~3日のレオの様子だ。
サロン・ド・テなんて初めてだろうから、解らない所は聞いて欲しい。
ただ場所が華美の上、広いので侍従給仕がいた方がいいと言うと「壁紙を変える」というので慌てて止めた。
余分な金は無い!
「そのままでいいから!焼き菓子の販売の場所を何とかしてくれ。会計と一緒でいい。それは改装しても仕方ない」
「わかった!ありがとうナナ様」
数日後、サロンロール別邸に行くと「これでもか」と豪奢なカウンター兼焼き菓子売り場と、氷室の機能付きの大型ショーケースが出来ていて大金貨9枚が飛んで行った。
確かにケーキのショーケースはあった方が良いと言った!俺のせいか?!
それから、レン達を奴隷から解放した。
何故なら、サロン・ド・テの厨房でサロンロール家のコックさんズが修行したいと押しかけたので、レオは強く出られなかったらしく困り顔でレン達を奴隷解放してないと余分な争い事が起きると言った。
奴隷に習うとか、あり得ないのだろう。
ムダなプライドなんか銅貨1枚にもならないのに。
これで菓子職人の募集はしなくていい。
侍従給仕はどうなったかと聞くと、侍従は捕まらなかったが、サロンロール家の使用人達が働きたいと手を上げたらしい。
まあ、レオの店だしね。問題ない。
店名で揉めた。【サロン・ド・テ ナナ】にするか、どうかで。
「デザート・クロワッサン、でいいだろ!」
「……それだとクロワッサンも作らないといけなくなるぞ?」
「食べたいって要望書が山と届いているんだよ!一店舗だけでも置いとけよ!!」
仕方なしにうなずく。
店の名前は従業員全員の投票で決めることにしたら、なんと、全員がレオの【デザート・クロワッサン】を推した。
レオがガレットブルトンヌ5枚で買収したせいらしい!クッ、俺の賄いじゃもう買収できないのか?!悔しい!
後はレン達3班とサロンロール別邸に入ってありとあらゆる焼き菓子を作ってはレオ達、給仕に包装させて、いろんなサイズの木の籠に入れさせた。
レオの独壇場だった。
パラフィンみたいな薄い紙に包んでいるのだが、包む文化が無いので、勿体なく思えるらしい。
しかし、ナナがたくさん使う小さな木箱の値段をつい最近吊り上げられたので、それなら紙の方が安い。
レオが5年契約で格安の紙の大量注文を取って来た。ちゃんとバターの油染みにも対応出来る紙を試して買っている。
レオ様々である。
しかもここは郊外だからと【デザート・クロワッサン】のチラシを各ギルドに貼り、更には披露宴の招待客にも宣伝してくれているらしい。
俺は働き屋さんのレオをギュッと抱きしめた。
レオがウゴウゴ言い、暴れているが、これでも俺は力持ち!離さないぜ!
「お前には男色の気でもあるのか!馬鹿たれ」
レン達3班がコッソリ悪い顔をしてる。
だから乗る事にした。
「レオだからかもしれない。この胸の高鳴り受け止めて欲しい」
ホントなら不整脈かもな。
「ああ、任せとけ!その方が父上も喜ぶ!」
「待て!!冗談だ!!俺はまだ使い物にならない!」
「大丈夫だ!私が使い物になるから。英才教育をしてやる!」
「助けてくれぇえええ!!揶揄って悪かった!すまない!」
レオはニンマリ笑ってどこかに行った。
「返事ィイイイ!!レオ、返事ィイイイ!!」
レン達が、肩を叩いて慰めてくれた。
「まあまあ、冗談ってわかって揶揄ってるだけですよ。泣かないで下さい」
ディクソンが無理ゲーを語る。
「もしそうなりゃ、体格差を活かしてボコボコにするとか、やりようがあるだろう?」
「友達にそんな事出来ない!」
「じゃ、掘られろ」
初めて大号泣した。大人怖い!!
性的な嫌がらせはしないと心に誓った!
翌朝、会うなり俺の髪をセットし始めたレオがこう言う。
「ナナ様も下の事情からかわれたくらいで本気で泣かないの!…見た目は大人なんだから」
「だってレオ返事しなかった!」
「はいはい、悪かったよ。ほら、この髪型の方があか抜けて見える」
「あ、ホントだ。ありがとうレオ」
編み込んで分け目を変えただけで、脳筋から職人へジョブチェンジ。一応伸ばしておいて良かった。髪の毛。
「明日10:00に開店だから、開店前のスピーチ考えておけよ」
「ウソだろ?」
「いや、本気だから。明日も髪型整えるから、逃げるなよ」
速攻で逃げる!いや、逃げずにいられようか?!
翌朝、捕まりました。
2階のゲストルームで着替えてたら、レオの家令が来て髪型を整えられました。
クソッ!!レオなら張り倒してでも逃げたのに!知能犯め!
それから仕方なくスピーチを考え、ヤケになってケーキを作りまくっていると家令さんが呼びに来た。
「開店のお時間になりました。参りましょう」
レオなら張り倒してでも(以下略)
外は小雨。なのに信じられないくらいの馬車の数!(郊外なので馬車で来ないとちょっとした鉄人です)
慌てて店内に入ってもらう。
結果、20トーンであれだけ広かったサロンが、お客様でいっぱいに。
紅茶の入れ方は知ってるのでしばらく接客を手伝った。
とにかく皆さま暖かくなりたいらしい。温かい紅茶をオーダーするお客様でいっぱいだ。
-500席あるのだが、レオの受け持つテーブルの多いこと!1人で25卓ぐらいをあちこちしてる。
他の給仕は10卓までが限界みたいだ。
俺?頑張って5卓。
それでも内心焦ってる。
レオは受け持ちのテーブルを全てオーダーを取り終わると次々他のテーブルでオーダーを取り銀のワゴンで一気に運ぶ。
「マジか」
100人全部のお客様のオーダーを覚えてんのか?!変だろ?!
サロンロール家から来た給仕もそんな真似はしてない。
あー、アイツが休憩時間ずっとイライラしてる理由の一端がわかった。そりゃ、ストレスにもなるわ!
お給金上げろって言うはずだよ。
レオはひと月金貨2枚にしとこう。
18:30の終業まで、レオの無双は続いた。
俺は昼も食べられなかった【デザート・ナナ】の従業員全員の為にキャベツ丸ごとシューファルシとバケットのガーリックトーストを作った。シューファルシが多めだから、そんなに食べられないだろうとの目算だったが、更にポテトサラダとカルボナーラも作るハメになった。
「無理して喰うなよ?」
「食べたいから、食べてるの!はぁ、今日はお腹減って死ぬかと思った!お昼休みバラバラに取るから、スープとパンでいいから用意してくれないか?レンさん」
「わかりました。レオ様。明日からそうします」
「ナナ様、給仕させて悪かった!……でも、慣れてたな?やったことあるのか?」
「ちょっとな。レオすごかったな!100人のお客様相手に一歩も引かない優雅なサーヴ。惚れちゃいそう!」
言って「しまった」と思ったがもう相手の術中だ。
レオは唇を舌で舐め嬉しそうにうなずく。
「ほう~。いやいや、やぶさかでも無い。さぁ、今夜ベッドにおいで」
「イヤーーーー!!!」
レン:「色ごとにうといのも、考えものですね」
レオ:「あー、疲れが吹っ飛んだ!嫌がらせするのって、楽しい!」