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貴族転生、チートなしで成り上がれ!  作者: 榛名のの
第2章 学園編
23/107

披露宴会場の人々

◆○◆○◆sideトビアス=グレンマイアー 


こんなに静かな披露宴があっただろうか?


急な紹介に悩んだが、ナナが「ごちそうだよ」といったので、ガスパールに仕立て屋を連れて来てもらい、3日でアールディル王族の服を仕立てさせた。あの者、寝なかったであろうな。

 しかも仕立て屋にもう支払ってくれたという。ガスパールの頑固者は料金を受け取らない。

 護衛のカレッドとビオラはそれを見て大爆笑している。


「「良いんじゃない?」」


カレッドが教えてくれたのだが、兄上から多額の援助があった見返りらしい。

兄上も水臭い。私もお金を持って無いわけではないから、ナナには同じようにしたかった!

 ナナがアールディルの王都サイヴァンに滞在した少しの間の朝昼晩の食事があんなに楽しいものだと思わなかった!

 だから、今日はがっつくつもりだ!!


会場は下手な貴族の屋敷より立派だった。女主人だったのが如実に解る造りだった。

 瀟洒な大きなテーブルには隙間が無いほどごちそうが並び、目を楽しませてくれている。

 本日の主役を探せば、幸せそうに新婦が新郎を見ている。腕にしがみ付いてしな垂れかかるように。……それは少し慎みが無いのでは?


「お客様、本日はご来場いただきありがとうございます。招待状をご確認させていただきます」


招待状を渡すと確認した途端、新郎の隣に連れて行かれたので新婦にハッキリ言う。


「旦那様が好きなのはいい事だけど、こんな公式の場でその態度は娼婦かと思われるよ?サロンロール家の面子に関わるから即座に止めなさい」


「何よ!偉そうに!レオナルド様がいいって言うんだから、いいでしょ!フン」


レオナルドが新婦の頰を打つ。


「馬鹿者!!先ほど説明しただろう!?私の隣に座るお客様がいたら、王族だと!!それに私はいいと言ったのではない!『もういい』と説得するのを諦めたのだ!」


なるほどね。大変だな。レオナルド。


そこに金髪の初老の威圧感満点の男性が現れる。身なりは最上級。恐らく新郎レオナルドの父。


「これはこれは、ご不快にさせて申し訳ございません。トビアス殿下。急な招待にもかかわらず起こし下さりありがとうございます。誰かあれ!シルフィが具合が悪いらしい!部屋に連れて行け!」


「え?ど、どうして?!」


この女、頭が悪かった。問答無用で使用人5人に連れて行かれた。

 やっと会場でおしゃべりが解禁された。

主にサロンロール家があんなはしたない男爵の娘如きを嫁入りさせたのは、ナナが欲しかったから。という噂話。

お祝いの言葉を皆に聞かせて欲しいと、言われたので祝砲の後、すぐに祝辞を述べた。


「今日は新郎新婦の二人を祝うような快晴です。新郎のレオナルド殿はこの度、昇進してデセールの店を任されるまでになりました。

このよき門出に祝福を!」 


ヨシ!!新婦が居ないことはごまかせた。会場も盛り上がったし、後は喰うぞ!

……なんて、力を入れてたら、ナナが現れて私とレオナルドをごちそう攻めにした。

 皆、私達以外もあいさつを聞きながらモグモグしてる。


「何でシルフィ様がいないのかな?ひょっとして何かやらかしたのか?」


ナナの質問にレオナルドが憮然として答えた。


「この方に無礼を、ね。具合が悪いせいだろうと父上が部屋に下がらせた」


「我が姉がご無礼を!申し訳ございません!トビアス様」


ああ、そう言えばナナはウェルバー男爵家の赤さんだったね。かわいそうに。要らぬ苦労を背負って。


「いい。ナナが悪い訳じゃない。謝るなよ!それにたまにはああいうのも刺激的だ」


「「たまにならね」」


レオナルドとナナはウンザリした顔で視線を交わしている。


「何というか、シルフィ様は自分の事しか考えられない女性なのです。俺も最近知りました」


そりゃまだ1才でほとんど姉たちとの接触が無かったんだから、仕方ない。


「ウェルバー男爵家では、礼儀作法を学ばなかったのか?」


「いいえ。貴族学園で学んだはずです。多分」


経済的事情でおかしな頭の女がいるのかと思ったが、違った。

 ナナの祝辞の番が来た。


「皆さま方にはお料理、楽しんでいただいてますでしょうか?初めましてナナ=ロウ=クロワッサンです。レオナルド様とシルフィ様の仲睦まじいこと、私は安心いたしました。

 だからと言ってマナーを守らないのはいけません。シルフィ様には、サロンロール家の一人として御自覚いただくよう再教育いたしますのでどうか、皆さま温かい目で見守っていて下さいませ。それでは、失礼致します」


少なくない数の拍手が送られた。ナナも大役が終わってホッと一息ついている。

 心おきなく、料理を満喫する3人だった。


◆○◆○◆sideバール会長


やれやれ、馬鹿者の娘は馬鹿者なのだな。頭の出来が父親そっくりでびっくり仰天した。

 他国の王族に無礼を働いておいて自覚が無い。大丈夫か?ウェルバー男爵家。

 事によっては今回の件だけで、お取り潰しもあるのに、謝ってるのはナナ様だけか。

 借金も返してもらえたし、ここらが、手の切り処だね。ナナ様にはこのまま出世して貰えばいい事だしね。

 勝手に死滅すればいい。さよならウェルバー男爵家。


◆○◆○◆sideレオナルド=サロンロール


 ハァー。とんでもないバカと結婚させられた。

 

「明日、離婚していいか?」


「その気持ちもわからんでもないけどな。一応俺がシルフィ様とお話ししてみるから、それでもバカだったら、そうしていい」


「ありがとうナナ様。気が軽くなったよ」


ナナ様はそのままあの女の所に行った。

トビアス様が私をなだめる。


「ナナの苦労に免じて、しばらくはあの女と機嫌良く接してやってくれ」


「……そうですね。白金貨2枚使わせましたからその分、我慢します」


「すまないな」


「トビアス殿下にお許しいただいただけでお釣りが来ます。ご心配なさらぬよう」


そして私達は共犯者の笑みで会話を締めくくる。


◆○◆○◆sideシルフィ=サロンロール


何だか解らないけど、披露宴会場から部屋に戻されたわ!

 私はサロンロール家の使用人達に八つ当たりし、お姫様のような扱いを受けて気を取り直していた。

 披露宴会場のごちそうを持って来させて食べているとナナ様が来た。

 また、怒られるんだと思ってムッとしていると、思わぬことを言われた。


「レオが明日、離婚するそうだ」


食べていたプリンが喉に詰まった。胸をドンドン叩いて窒息死からまぬがれる。


「レオナルド様がそんな事言うわけないわ!私達、永遠の愛を精霊様に誓ったんですもの!」


「ウェルバー男爵家はお前のせいでお取り潰しはまぬがれないだろう。それなのにお前はブタみたいに食ってばかり。ちゃんと現実と向き合えよ!」


実家がお取り潰し?!たったあれだけの事で?


「あんまりですわ!わあああああん」


必殺、泣いたら何とかなる!

机に顔を伏せてるとナナ様がこちらに来た。

そして私の髪を乱暴に掴み、私を床に打ち据えた。


「お前が身分制度を理解してないから、こんな事になる!アールディル王国の王族が一言『不快だ』と言えばウェルバー男爵家はつぶれる。理解したか?」


ヒドいですわ!父上さえ、こんな扱いをしたことないのに!

 今度はどんな暴力を振るわれるかと怯えていると頰を摘まんでつねられた。


「話を聞け!自分のせいで実家が潰れたらレオも見放すぞって、言ってんだよ!このクソ女!」


「痛い!痛い!顔は止めて!」


「そら、聞いてない!呆れた女だ、お前は」


私は気を失ってしまいました。



翌朝目が覚めるとレオナルド様が隣りに寝ていて結婚したのは夢ではなかったと、幸せをかみしめていると、何やらさざめくように笑っている使用人達。


「アンタ達?!何がおかしいのよ!だいたい、レオナルド様が寝室に居るときに入ってくるなんて、おかしいんじゃない?!」


「その指示は私がした。君と二人きりになりたくないのでね」


「え。でも、こうやって添い寝して下さるではないですかあ。レオナルド様あ~」


しがみつくと突き飛ばされた。


「トビアス殿下から、しばらくはナナ様の為に離婚しないよう言われたからだ。私に触るな!女」


「レオナルド様あ~!どうしちゃったの?」


「どうかしてるのはお前だ!今日中にトビアス殿下に非礼を詫びなければ離婚する!」


ナナ様が言ってたの本当なんだ!!

 どうしよう?!話を聞いてないから何を謝るのか、全然わかんない!

 ナナ様が怒ってたわけがちょっとだけ解ったシルフィだった。

きっと、馬鹿正直に聞きに言ってナナ様に怒鳴られるんだろうね。おバカ娘シルフィ。

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