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貴族転生、チートなしで成り上がれ!  作者: 榛名のの
第2章 学園編
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アールディル王国⑤

翌朝、滞在してる屋敷の油を半分ほど借りてフライドチキンとフライドポテトを作ったら、大絶賛だった。

 ルベラ王太子殿下もフライドポテトは初めて食べたので、「塩か、問題は」と唸っていた。


「こちらのケチャップでもお召し上がり頂けます」


あと、ケチャップのレシピを渡す。


「これは子供向けだな、甘い」


「そうでもないですよ?ビンガでは大人気です」


「呪い粉が流通して無いからだろうな」


「こちらの街にも流通して無いようですが?」


屋敷の主人にして、この街サンダガンダを領都に持つ領主のピーゴッド伯爵は、怒りに身を震わせている。


「スンナメリ国が我が国の属国になる条件が、ピーゴッド伯爵領に呪い粉を流通させないことだったからだ!」


「ここら辺は魔獣も可食の物が居ないし唯一農業が根付いてる。内陸だから、塩が高い」


「では、出来た野菜を加工するのも大変ですね」


「玉ねぎなど作った月に使わないとすぐダメになってしまうし、ジャガイモは腹が下る。人参や大根は短いし、やっぱり保存が利かない。カボチャは保存が利くけど皮が硬くて実が美味しくないし、トマトも作る意味がないくらい味が無い!」


まだまだ続く不満のオンパレードに回答出来る分は答えてあげる。


「要するに、野菜の保存方法が確立出来てないご様子。トマトなどは水をあげすぎたら、味が限りなく無くなりますよ。あと、玉ねぎはネギの部分を束ねて、風通しの良い日陰で竿に掛けて干して下さい。長持ちしますよ。人参と大根の短いのは、深くまで土を耕して無いからです。酢、ってあります?」


ちょっとポカーンとしてたピーゴッド伯爵が頷く。


「酢だけはたくさんあるぞ!」


「野菜を酢に漬けてピクルスにしてはいかがですか?」


「後でコックに教えてくれ」


良いとも!任せておけ。


「ところで米と小麦粉は作って無いのですか?」


「作ってるとも!でも全部売ってる。我が領には他に商売出来るものが何もない」


「酢は?」


「酒造りで失敗したのだ!誰が欲しがる!」


なるほど。酢は酢でもワインビネガーか。


「料理に使えていいじゃないですか。ソースやドレッシング、マヨネーズなんか作るのにいいですよ!それも、教えますね」


「昼ご飯に出してくれないか?」


ルベラ王太子殿下のお願いに頷く。


「野菜中心になりますが、よろしいですか?」


「構わないよ。最近肉ばかりでサッパリした物が食べたかったんだ!」


あ、ここ、野菜しか無いんだった。殿下ナイスフォロー!


◆○◆○◆


「こちらがバルサミコ酢を使っているカブのカルパッチョです。アンチョビとニンニクが良い隠し味になってます」


取り分けるのはガスパールにお任せした。

 喰ってる、喰ってる!ガツガツ喰ってる。

無くなる前に2品目。


「カボチャのコロッケです」


肉があまり無いからせめて腹に溜まる料理にした。


「シュークルトです。本来ならワインが入ってますが、白ワインビネガーで調理させていただきました。ソーセージなどが入るとコクが出て更に美味しくなります」


「白菜のドレッシングがけです」


「赤大根のミネストローネです」


「鶏の南蛮風です」


「サツマイモのパンケーキです」


マヨネーズは茹でたブロッコリーにつけて召し上がっていただいた。


「まだ、間に合うのか?我が領の復興は」


俺にすがるような目を向けるピーゴッド伯爵に頷いて微笑む。


「大丈夫!お野菜で出来たくず野菜で、牧場を開いてお肉も卵も入手しましょうよ!」


「私も手伝うぞ?カスター」


「ルベラ王太子殿下……ありがとうございます」


大の大人が大号泣。ちょっともらい泣きしたのは俺だけじゃなかった。

 

 それからもあっちこっちの街に転移魔法陣で気軽に連れて行かれたが午前と午後で違う街だったりして夜まで滞在するときはお土産選びに街に繰り出した。

 クリュナという街にはブリキ缶のちょっとマニアックな黒猫の絵付けをした物があり、気に入って買い求めた。

 意外と高くて止めようとしたら、クリュナの街の代官セトフォルト男爵が買ってくれた。


「申し訳ないです!」


「いやいやいや!ウチの山がお茶の木ばかりだって、わかっただけでお手柄だよ!これはその報酬。この画家滅多に作品売らないんだよ。いい目してるね!」


お礼に緑茶の製法を教えてまた、次の街へ。


料理に試されているような日々は、俺の中の料理に対する思いにも、火を付けた。

 俺の料理を世界中に広めたい!料理に困っている人達を助けたい。


そしてあっという間に34日間が過ぎていた。外は猛吹雪。帰れるんだろうか?

 ガスパールにもらった礼服に身を包みビンガ使節団のマントで自分をくるんで寒さに耐える。

 ゲストルームの扉が叩かれる。ガスパールが、俺のマントを広げる。寒っ!

だいたいこのマントも昨日届いたのだ。どうせなら内側は角ウサギの毛皮で作って欲しかった。


「クロワッサン準男爵、謁見の間にご案内いたします!」


「お願いします」


頼む。というより、俺は心を伝えたい。

 見下されるのは腹が立つけど、俺の態度で傷つく人達がいたら嫌だ。

 廊下はすきま風が入ってきて最悪だった。

 俺達は震えながら謁見に臨んだ。


作法通りにひざまずくとルベラ王太子殿下の声が壇上から聞こえた。


「顔を上げよ」


顔を上げると玉座が空いていてその右手の豪奢な椅子にルベラ王太子殿下が、座っておられる。


「様々な街への視察及び親善活動、暴動が起きたリチルの街での慈善活動、我が国の料理の発展に寄与した。これを大きな功績として白金貨10枚の報酬と名誉騎士爵の叙勲をする!」


聞いてないよ!後ろにいるガスパールを振り向きたくなったけど一応ありがとうと言わないと報酬が貰えない!


「身に余る光栄。感謝申し上げます」


ルベラ王太子殿下が壇上から降りて来て俺に立ち上がるように言った。

 立ち上がるとビンガの準男爵章よりキラキラな騎士爵の勲章とロザリオみたいなイケてるゴシック様式のネックレスを掛けられた。

そして両手に収まるくらいの宝石箱。あ、お金だ!ワーイヾ(^▽^)ノ


「黄の月には迎えに行く!ミレニア辺境伯爵邸で待つように」


「かしこまりました。よろしくお願い申し上げます」


「これからも極上の料理を作ってくれ。下がってよい」


謁見の間を出ると寒かったので急いでゲストルームに帰り宝石箱を開けたら白金貨が20枚入っていてその中の1枚を金貨に両替してもらった。近衛騎士達に一人金貨10枚づつ渡した。


「ラーク様達に感謝を申し上げます」


ラーク達は思いがけない報酬に驚き、受け入れた。


「「「「「ありがたい、また、いつでも声を掛けてくれ」」」」」


ガスパールには金貨20枚あげた。

ガスパールは巾着袋をのぞき見すると片眉を跳ね上げチラリと俺を見て深いため息をつき、「ありがとうございます」と言った。

また、再び部屋の扉がノックされてルベラ王太子殿下が雪まみれの一団と入って来た。


「近衛騎士達がお土産を買って無いであろう?商人を呼んだ。買うがいい。気前よい御仁から、たんまりともらったのだろう?」


「いや、そんなにあげてないから、ほどほどに商売して下さい」


ラーク達は、魔法カバンから取り出される見事な宝飾品や、日持ちする焼き菓子、おしゃれな雑貨、文房具、女性向けの香水やリボン、何と家具やアールディルではおなじみのスパイスまで俺もあれこれ買った。クリュナで買ってもらったブリキ缶の画家の絵が2枚手に入った!安くはなかったが、嬉しい買い物だった。

 そして殿下に白金貨5枚を渡した。


「リチルの店の改装に使って下さい」


多分、白金貨20枚の内の10枚分は殿下のお持ちになってた資産だろう。

 しばらくは親父が馬鹿やらなければ楽に暮らせるくらい、いただいた。余剰分は返すべきだ。店のリフォーム代だと言えば受け取るだろう。


「そなたは、本当にズルくないな。わかった。いろいろ取り揃えておくから、何一つ持たずに来い!」


 頼もしい方だ。

商人が帰るとルベラ王太子殿下が自ら転移魔法陣を使ってミレニア辺境伯領まで送ってくれた。

ミレニア辺境伯領では、トビアス様がピヨヨと待っていて驚いた。

 他国の転移魔法陣がビンガ王国にあるなんて!

ミレニア辺境伯とビンガ国王しか、知らない事実らしい。

 

「しばらく、トビーがこの国に滞在するから、よろしく頼む」


「俺に出来ることなら、何でもお伺い致します」


こうして、翌日には王都に帰り、ガスパールは偵察の結果報告をする為、王宮に。俺は謁見を済ませたら一度タウンハウスに帰った。


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