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貴族転生、チートなしで成り上がれ!  作者: 榛名のの
第2章 学園編
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披露宴

ビストロナナのコック皆が辺境伯邸の厨房に赴いたとき、泊まり客の昼食も終わって洗い物を片付けている時間帯だったので迷惑そうな顔はされなかったが、手伝うようにお願いすると「見返りは何だ」と聞かれた。

 

 はい、やな奴決定。


「マヨネーズとケチャップを無料でお教えします」


ニチャ~ッて笑う顔がキモい。

 だから、ソウルさんになすりつけた。

それに、俺はそんなにヒマじゃない。

 ショルツと一緒に冷たいデザート作り。他のコックさんズは皆が食パンとクロワッサン作り。クロワッサンはあらかじめ店で仕込んでいたものを全部持って来てある。焼く手前の最終工程まで仕込みを進めながら、食パンをこねこねして焼く。

 サンドイッチ用の食パンは前日に焼くのがベストなのだ。理由は切りにくいから。

 冗談じゃなくて本気でだ。柔らかいパンを薄く切るのは案外難しい。そこで1日前に焼くのにしたのだ。

 柔らか過ぎず硬すぎず、丁度よい。


プリンとアイスクリームを作っていると教えてくれくれくんが来た。

2つとも玉子を使うレシピとしると見返りくんに注進したらしい。


「おい!作るな!玉子を使うな!」


アホか?コイツら。


「こちらをお召し上がり下さいませ。正に披露宴の名脇役となるでしょう」


プリンとアイスクリームを一口食べてまたニチャ~ッて笑った。


「作り方をウチの菓子職人に教えておけ!」


「かしこまりました」


バカの相手をフィリップに押し付けて今度はアイスボックスクッキーを作る。抹茶があるので、緑色の生地を作って市松模様や縁取りを入れたりして、何種類か作って凍らせる。

 他の色もたくさん作る。紫芋の粉や食紅に似た物があるのでそれを利用した。

 

 奴らが招待客の夕食を作り始めたら、ソース類の追加と煮物を作る。

 材料は俺が計量してヨールとソウルさん達2班が鍋を火に掛けて、まぜまぜする。

 レン達3班の煮物班はデミグラスソースとシチュー、魔牛のワイン煮を目立つ位置でこそこそ作っている演技をしている。

フィリップ達4班は何も教えて無いのでミンチからだ。

ソース類の全部の材料の投入が終わった。

 奴らは何も気付いてない!

レン達3班に付き合いながら、ハンバーグに入れる玉ねぎのみじん切りをしてると、やっと奴らが来たが、今度こそ常識的な人達らしい。ミンチと玉ねぎのみじん切りを手伝ってくれたのでハンバーグの作り方を教えたら喜んでいた。 

 途中でパン粉が足りなくなったら、古いパンを持って来てくれた。いい人だ!

 ただ、そのパンが賄い用だったみたいで揉めてたから、賄いをこちらで作った。

麺が余ってるからと持って来たアレムさんは、スーシェフらしい。

 麺を茹でる間にミートソースを温めて、茹でた麺をソースに絡めて皿盛りしてどんどん使用人に渡す。

 食べた使用人達の美味しい笑顔、貰いました!

アレムさんはニコニコしてぶっちゃける。


「アレはうっとうしい上に図々しいでしょう?アレはもう終業していないので私達に全うに教えて構わない分だけ、教えて下さい!」


思わず皆が噴き出した。


「アレってシェフのことッスか?」


「ええ!実力も無い癖に地位と名声を求めている辺境伯の4男坊です」


「へぇ、よく料理人にさせたねぇ?」


「何にも出来ないから、何かしらやらかすのが出来ない場所に配置された結果です」


周知のことなのか、皆が笑っている。

 茹で鶏のシュープリームソースとこちらの結婚式なら定番のシャケの塩焼きをアレンジしてユニークお魚さんのお絵描きパイ包み焼きにした。

おかげでパイ生地が無くなったのでまた教えながら作ったり、トンカツの衣を纏うまでを皆で競争してやったりとハイテンションで夜中を越え焼き菓子とケーキとパイを焼きながら朝を迎えた。


「眠っ」


「黙れ!チェーン」


「でも、アイン眠くない?」


「ライズ、ナナ様を見ろ!」


3つ子よ。俺も無茶苦茶眠い!


「まぁ、今日が終わったら、寝られるからちょっとだけ、我慢な?すまない」


俺が味付けした鶏の丸焼きを15個全てのオーブンで焼くバカの頭を叩いてやりたい。

仕方なくサンドイッチのバターを塗る。


「ナナ様、唐揚げしましょう。魔導コンロは空いてます!今の内に」


揚げたての唐揚げとフライドポテトは、な、ぜ、か、招待客の朝食になった。

チーム【ビストロナナ】はキレながらローストビーフを何とか湯煎して作った。


サンドイッチを量産して5時間。

もう披露宴が始まる!

辺境伯邸の使用人にオーブンを掃除してもらってミートパイを焼く。美味しく食べて欲しいからと今まで温存していたミートパイ。これでは間に合わないかもしれない。


しかし、奇跡は起きた!

到着が遅れた隣の国の王太子殿下が何か珍しいものが食べたいと言ったので焼きたてのミートパイが饗された。

 健啖家の王太子殿下は4ホール分のミートパイを食べられた後、美味しくデザートも食べ尽くす勢いだったという。

 ミレニア辺境伯の株も爆上がりして使用人達にお小遣いが渡されたらしい。




◆○◆○◆


「しかし、面白かったよな?!」

「バカだったなあ、あのシェフ」


王都への帰りのドラゴン便の上で会話中のソウルさんとレン達。


「美味であった!誰が作ったのだ?褒美を取らせる」


隣国アールディル王国はこの国と比べものにならない程の大国だ。

 何か粗相があれば、国が滅んでも仕方ないくらいに。

 その国の世継ぎが褒美を、というからにはすごい物に違いない。

ドーンカール=ミレニア(辺境伯4男)もそう思ったらしく、それは堂々と厨房を出て行き泣きながら帰って来た。

 辺境伯家の家令が今度は俺を呼びに来てパーティー会場に出て行くと一斉に俺を見つめる紳士淑女達。某海を割ったおじいさんの気持ちが今ならわかる。


こ、怖い!

家令がお誕生日席に俺を導き、キラッキラの超絶美形の銀髪で黒銀の瞳の25才くらいの青年にひざまずく。


「そなた……跡継ぎだからと言ってそうまではせずとも良いのでは無いか?」


バレて~ら?!何で?


「……、好きでしている事ゆえに、お気遣いなく殿下」


「白の月は何か用があるか?」


「お仕えしてる旦那様の2番目のお嬢様の結婚披露宴があります。それには必ず出席せねばなりません」


「ふふ、私がこう言えば、皆、何があっても予定を空けるものなのだがな。まあ、よい。では、その日の10日前まで半月アールディル王国王都王城にて、厨房に立つことを約束せよ」


うわ、マジか?!お断りする!

店もあるし稼がないと借金増えるばっかだしさ!

王太子殿下がつぶやく。


「借金くらい何とかしてやるから、来い」


「仰せつかります!」


「迎えをやるからそれで来い」


「ハイ!」


借金完済は近い!

やった~~~!!見込みが立った!

るんるんるん、らんらんらん♬


ハッ?!でも皆に何て言おう?


結局言い出せないまま、王都まで帰って来た。

ヨールには言わなきゃいけない。


「ヨール、こんな大事な時期にごめん!!」


「大丈夫ッス!帰って来るんでしょう?アールディル王国の王族に逆らったら大変なのは、俺でも分かるっす!」


「それはいいとして、借金完済出来そうなんだ!こんな機会ない!行かせてくれ!」


「そんなろくでもない理由なら行かせないッス!!何を見返りにそんなことになるンスか?!」


「でも、ウェルバー男爵領には、お金がかかる、ん、だ…ゼェゼェ」


息が出来ない?何故?


「話終わったぁ?ナナ様?!おい!ヨール!!ポーション!」


「ナナ様飲んで!アッ!息が出来ないなら、空気を送り込めば良いんじゃないっすか?!」


「ふ、袋」


過呼吸だとわかったら二酸化炭素を吸うだけ。紙袋に息を吹き込んでもらい口に当てひたすら吸う。

やっとのことで息を吐くことを体が思い出す。

ガスパールが階段を駆け上がって来た。


「ナナ様!息吸いにかかるほど心労をお掛けして申し訳ございません!ガスパールも付いて行きます!」


「ありがとうガスパール。嬉しいよ。ヨール、ショルツ、心配かけたね、ごめん」


「いいッス。俺が悪かったッス」


耳が垂れた子犬みたいなヨールの頭を撫でる。

話を俺から聞いたガスパールはやっぱり付いて行くと言う。果報者を友人に持って俺は嬉しくて微笑むのだった。


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